第43話-ご褒美-
「ごっほうび~。ごっほうび~」
「ア~ちゃん待って」
代表さんが用意してくれたのは街で一番の宿泊施設を貸切にしてくれたってこと。いつもは王侯貴族でしか使えないってくらいの値段がするもので、お城の中みたいに豪華な調度品が並んでいる。
「1人で行っちゃダメだよ。ルイスとティーブも早く来て」
誰もいない施設の中を、ア~ちゃんはどんどん先に行ってしまう。このままじゃ見失いそう。
「急がなくったって、時間はいくらでもあるんだから」
「そうだけど」
ア~ちゃんへのお礼なんだから、私達がちゃんとしないと。それにここに来てからなんだかわくわくするというか。早く助けを求めに行かないといけないっていうのは理解してるんだけど、今日だけは遊んでも怒られないんじゃないかな。
代表さんのおかげで、リーフ国王にはもうすぐお会いできそう。隣国の王都までの道筋は整ってる。あとは私がちゃんと話せれば、きっと力を貸してくれるはず。だから今だけは、少しくらい楽しみたい。
「ファニーちゃ~ん。こっちこっち」
「待って~。すぐ行くから。ほら、ティーブ」
「はい」
なにか見つけたのかな?宿泊施設というか、いろんなものがたくさんあるから目移りしちゃう。お店がたくさん並んでいて、ちょっとしたお祭りみたいになってる。
「ア~ちゃん?どこいったの?」
「こっちだよ~」
気になるものがたくさんあるのに、ア~ちゃんはどんどん先に行っちゃう。でも今日はア~ちゃんへのご褒美なんだから、あとで時間があったらに寄ってみようかな。
「気になるの?」
「う~ん。でも追いかけないと」
「まぁな。こういうところ久しぶりだから、俺も気になるんだけどなぁ」
へ~、ルイスってこういうの好きなんだ。こういう娯楽には興味なさそうってイメージだったんだけど、意外にそうでもないみたい。というより、振り返って見てみたら子供みたいに辺りを見渡してる。
「ルイス?行くよ」
「あっ、あぁ。わかってるよ。あれはなに?」
「どれ?あぁ、セセムっていうお菓子。美味しいよ?歩きながら食べるものなんだけど、街ごとに味が違うんだ」
「へ~。そんなものが」
封印される前には無かったのかな?ってそんなこと話してたらア~ちゃんのこと見失っちゃった。
「ねぇ。それより行かないと」
「おっと。どこ行った?」
「こちらです」
ティーブだけはちゃんと確認してくれていて、案内してもらいながら追いかける。どこまで行っちゃったんだろう?一本道の廊下だから間違えるはずはないんだけど、本当に大丈夫かな。それに、この先にはなにがあるんだろう。
「おそらく、あちらへ入られたのかと」
「そうだね。なにがあるんだろう?」
「申し訳ありません。そこまでは」
まぁそうだよね。あっ、全くもう。ア~ちゃんたら扉を開けっ放しじゃない。全開のまま放置されてて、逆に言えばこっちで合ってたってことだね。
廊下を進んでいって、ルイスとティーブは後ろを歩いてくれる。開け放たれた扉の先に何があるのか見えてくる。
「わぁぁ」
目の前に広がっているのは、大きな庭園。ここは宿泊施設の建物の中のはずなのに、一面に花が広がっている。
「おっそいよ~。ファニーちゃん、はいこれ」
「えっ、うん。ありがとう」
ア~ちゃんは花の冠を作ってくれていて、そのまま私の頭に置いてくる。ちょっと子供みたいで恥ずかしい気もするけど、それ以上にとても綺麗な花の庭園に見惚れてしまう。
「おぉ~。似合ってるよ」
「えぇ?そうかなぁ。ルイスはどう思う?」
「おっと?まぁ似合ってるよ」
ならいっか。それにしても広い場所だな。建物のなかにこんなにたくさん花がある。代表さんが気合いを入れて作ったとかいってたから、もしかしたらここのことなのかも。
「ねぇねぇ、あそぼうよ~」
「うん、そうだね」
他に誰もいない花園の中。ア~ちゃんと一緒に歩いたり、座っておしゃべりしたり、ちょっと追いかけっこしちゃったり。時々ルイスとティーブも加わりながらずっと遊んだ。
部屋に戻ると食事が全部用意されていて、ベッドの準備とかも全部やってくれるから楽ちんだった。ずっとア~ちゃんと遊びつくして、遊び疲れたア~ちゃんが眠ってしまった後に、ルイスとティーブと3人で気になっていたお店に向かう。
「これは、どうやって食べるんだ?」
「そのままかぶりつくだけだよ。こうやって」
セセムを食べるのが初めてのルイスに食べ方を見せながら、部屋へと戻る。気に入ったみたいで、あっと言う間に食べ尽くしてしまう。
「たまにはこういうのも良いもんだな」
「たまにはね。まだやることがあるから」
「ファニーはもっと肩の力を抜いた方が良いよ」
「は~い」
今は、今だけは難しいことは考えないで、少しの間だけの楽しい時間。またこんな時間が来れば良いなと思いながら、次やることが終わったらもっと長い時間ゆっくりしたいなと思いながら、世界を旅しながら何度でもこんな時間を過ごしたいと思いながら。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。
お読みいただきありがとうございます。
本作は私が自由に書いている作品となりますが、
お付き合いいただき、心より感謝しております。
新キャラのおかげで雰囲気を変えることができたのかなと考えています。
今後の活躍を、引き続きお楽しみいただければ幸いです。
励みになりますので、
ご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せ下さい。
もし少しでも続きが気になるようであれば、
ブックマークなどしていただき、
新たな投稿もぜひご覧いただけると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。




