第42話-バカにしているんですか?-
それから急いで野営地を片付けて、街へ帰る準備を進めていく。でも被害は思った以上に大きくて、馬車をひいていた馬は殺されちゃったし、テントとかもズタズタに引き裂かれて使い物にならなさそう。
それに助けられなかった人の死体とか、怪我が酷くて歩けない人もいるから、全員で歩いて帰るのも難しそう。だからって残していくわけにはいかないから、近くの野営地まで移動して休んでもらおうってことになった。
馬車自体はまだ動かせるから、まだ元気な人達で協力して近くの野営地まで運んで怪我している人達はそこで休んでもらった。死体は、申し訳ないけどしばらく残したまま。意外だったのはロバート様も馬車を動かすのに手を貸してくれたってこと。
その後も元気な人達で二手に分かれて、リーダーさん達は怪我人の世話をして私達は急いで街まで帰る。誰か一人が走って帰った方が良いかもしれないって話もあったけど、あんなことがあったのに単独行動するのは危ないってことで集まって帰ることになる。
ロバート様も一緒だったけど、結構早く歩いているのにちゃんとついてきてくれている。どうかしたのかなって思っていたら横まで近付いてくる。
「なぁ、ファニー」
「は、はい。なんですか?」
どうしたんだろう。あとはなるべく早く街に帰るだけだし、話さなきゃいけないことなんてないと思うんだけどな。
「俺は決めたぞ。君を是非、嫁として迎えたい」
「はぁ?」
なんの話かと思ったら、今更なにを言い出すの?まだ婚約者だって、少なくともロバート様は考えているはず。話している途中でア~ちゃんが転移魔法を使っちゃったから有耶無耶になっちゃったけど、改まって言うことなの?
「ファニーが戦っている姿を見て感動したよ。そう、とても綺麗だった」
「バカにしているんですか?」
「な、なに!?」
本当に、この人がなにを考えているのか全然わからない。どういう意味で、なにが言いたいの?
「今が、どういう時かわかっているんですか?何人も死んでしまって、大怪我している人が待っている。ゴブリンに襲われるかもって、そう思いながら待っているのに、話すようなことじゃないでしょ!?」
「す、すまん」
謝らないでよ。私にだって負い目があるんだから。そもそもこうなったのはア~ちゃんのことをちゃんと止められなかった私のせいでもある。だけど、それでも、今のはない。
「もういいです」
これ以上話したくない。ア~ちゃんが起きてくれれば良いのに、疲れ切っちゃっているみたいでずっと眠っている。だからなるべく近付かないように、目を合わせないように街を目指す。すごく失礼な態度だとは思うんだけど、でもどうしてもやめられない。
街の門が見えてきたときは、色んな意味で胸が軽くなった。代表さんが真っ先に来てくれて、事情を話すと残してきたリーダーさん達のこととか全部やってくれる。
私達は勧められるがままに宿に戻って、そしてベッドに横になる。なんだか、とっても久しぶりに安心して眠れる気分だな。
◇
次の日の朝、というより昼過ぎ。まだ体のあちこちが痛むし、特にずっと弓を引き絞った肩がヒドい。なのに起きるとルイスとティーブが元気に待っていて、寝坊しちゃったのは私だけみたい。
「おはよう」
「おはようございます」
「うん。おはよう。2人とも早いね」
テーブルに座って昼食を食べていたみたいだけど、なんだかすごく重めの食事をしているような。私はまだあんまり食欲がないのに、よくこんなに食べれるよね。
「なんか食べる?」
「う~ん。軽めのものが欲しいな」
「それでしたら私にお任せください」
振り返るとそこには代表さんが立っている。わざわざ来たってことは、なにか話したいことでもあるのかな。
「じゃぁ、お願いします。話は食べながらで良いですか?」
「話が早くて助かります」
代表さんに案内されて別室に移動する。歩くだけで体が痛むけど、でも動けないわけじゃない。
「お疲れのところ申し訳ありません。急ぎお伝えしたいことがありまして」
「良いですよ。気にしないで下さい」
用意してくれたのはパンとスープと少しの野菜。今はこれくらいのものが一番嬉しい。なんやかんやで代表さんは気が利くから悪い気はしない。
「よろしいでしょうか?」
「んぁ。うぃいですよ」
「では失礼して。まず国王との謁見についてですが、私から手配できそうです」
「うぇえ?ほんろうれすか?」
食べながら喋るのは行儀が悪かったかな。まぁでも代表さんの前だし別にいいかな。それより謁見できるっていうのはすごく嬉しい。王都に行ってからどうなるのかなって思っていたから、心配が1つ減った。
「えぇ。ファニー様があの数のゴブリンを討伐して下さいましたので、なんとか話を通せました。木製の鎧というのも興味を引いたようです」
「ふへぇ~、ん、あ。ごめんなさい。ありがとうございます」
「結構ですよ」
数と鎧なんだ。話題になるとしたら巣のことかなって思ってんだけど、やっぱり証拠みたいなものがないと難しいのかな。ここまで話した代表さんはゆっくりとお茶を飲みながらゆっくりしている。しょうがないことだとはわかっているんだけど、こういうところは正直言って苦手。
「なんでも言って下さい」
「では失礼させていただきます。あのバカ王子となにかあったのでしょうか?」
ああ、その話ね。最後に話したことと、その後意図的に避けていたことを説明する。やり過ぎだって言われたらそうかもしれないけど、多分同じことを言われたら同じことをすると思う。それにしても私達しかいないからって自分の国の王子をバカ呼ばわりするのは、やっぱりどうなんだろう。
「なるほど。そういうことでしたか」
「良くなかったですか?」
「いえ。ファニー様はそもそも謁見のためにロバート様との婚約関係を継続していただけのはずです。そういう意味ですと問題はありません。私にお任せ下さい」
「そ、そうですか?」
言われてみれば代表さんの言う通りだし、まぁ任せて大丈夫かな。でも気になるのは、そういう意味なんていう含みのある言い方。
「別の問題があるんですか?」
「問題と申しますか。ロバート様ご本人はいかようにもできます。しかし、どうも国王のお考えがわからないと申しますか。私にはどうにもできないものでして」
なんだか嫌な予感がする。まぁでもお茶を飲む手も止まっちゃっている代表さんを見ると、本当にわからないしどうにもできないんだろうな。
「気を付けます」
「申し訳ありません」
「しょうがないですよ。色々とありがとうございます。あっ、そうだ」
「はい。なんでしょう?」
このタイミングでお願いするのって、ちょっとズルい。と思ったけど、代表さんだし問題ないかな。
「ゴブリンを倒すのにア~ちゃんに手伝ってもらったんです」
「あぁはい。炎の魔法を使ったとか、大変な威力だったそうで」
「そうなんですよ。それでそのお願いをするときに、ご褒美をあげるってやくそくしちゃってて、なにを言われるのかわからないんです」
「はぁ、なるほど」
つい言っちゃったことだけど、約束は守らないといけない。ちょっと図々しい気もするけど、これくらい良いよね。
「わかりました。出来る限りのことはさせていただきます」
「ありがとう。ア~ちゃんはまだ寝ているんで、起きたら伺いますね」
「承知しました」
これでなにをお願いされても、大抵のことは大丈夫かな。それから代表さんは形通りの挨拶をして仕事に戻っていく。私は食べ終わってそれで、また眠くなってきちゃった。食べてすぐ寝るのはあんまりよくないけど、耐えられそうにないしたまには大丈夫かな。部屋に戻って二度寝しよう。




