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第39話-黒いゴブリン-

 「みんな、ちょっと」

 「な、なんだぁ?」


 テントに急いで入って、ロバート様に驚かれるけどそれどころじゃない。


 「来てください。ゴブリンが集まって来ちゃってて」


 すぐにテントから出てくれるルイス、出ようとはしてくれるリーダさん、だけど肝心のロバート様はなんでか知らないけど動こうとしてくれない。


 「おいおい、なんだって気付かなかったんだよ。おい、逃げるぞ」

 「えぇ?逃げるんですか?」

 「当たり前だろ?」


 ついさっきまで残ってゴブリンの巣を探そうとか言っていたのに、なんでそんなこと言い出すのかな。リーダさんも困った顔で私を見てくるし、そんなことより先に出て行ったルイスとゴブリンの様子の方を考えないといけないのにな。


 「逃げるなんて無理ですよ」

 「はぁ?ここで戦うのか?堀とか壁とか、そういうものが何もないのに」

 「逃げたところで追いつかれて後ろから襲われるだけです。それに、そう思うならなんで巣を探そうとか言ったんですか」

 「それとこれとは違うだろ」


 時間の無駄。ギクシャクしそうなことをしたくなかったけど、もう無理。ルイスとティーブだけなら逃げ切れると思う。でも私にはできないし、きっとリーダーさんとか他の手伝ってくれている人たちも、無事に逃げ切れるとは言い切れない。


 「戦いますよ。準備してください」

 「お、おい勝手に」

 「怪我人は黙っていて下さい」


 もう話すことはない。弓を手に取りながらテントを出ていくとリーダーさんもついてきてくれる。先に出ていたルイスは、もう鏡の盾を構えて森の前に立っている。


 「どう?」

 「かなり集まっているみたいだ」


 集中してよく見るとゴブリンはもう何10体も集まっているみたい。でもまだ少ないはず。森の中には何100体ものゴブリンがいるから、まだまだ来てしまうと思う。


 「防ぎきれそう?」

 「どうだろうね。来るよ、下がって」


 弓に矢を番えながら急いで戻る。いつもみたいに問題ないって言って欲しかったのに、今日ははっきりしない返事しかしてくれない。胸騒ぎがする。それにゴブリンの発する音がいつもと少しだけ違う気がする。声は相変わらず不気味だけど、足音が重い気がするし、かすかに聞こえるカタカタ音はなんだろう。


 ひときわ大きな雄叫び。森から野営地に飛び出してくるゴブリン。ルイスの鏡の盾が先頭を食い止めてくれるけど、左右をすり抜けるように何体もなだれ込んでくる。


 いつもと音が違うと思ったけど、あれは鎧?不格好だけど、全身を木の板で覆っている。完全に覆い切れていないから性能は悪そうだけど、でもあんなゴブリンは始めてみた。


 「ティーブ、左をお願い」

 「かしこまりました」


 鎧は気になるけど、まだ大した数じゃないから今のうちに数は減らしたい。あれくらいならティーブだけで倒しきってくれる。だから狙いを右のゴブリンに定める。


 そういえば、ヴェンダーさんに作ってもらった弓でちゃんと戦うのはこれが初めてかな。ロバート様を助けるときは運ぶ係だったから戦うことはなかった。


 射かけた矢はゴブリンへ真っすぐ飛んでいく。木製の兜のようなものを被っていたけれど、関係なしに貫通した。使い心地はとても良いし、これならいつも通り戦える。


 「ファニー様、援護します」

 「うん、お願い」


 リーダーさん達も声を上げながら次々に戦い参加してくれる。剣を抜いて叩きつけたり、私と一緒に矢を射かけてくれたり、みんな真正面からぶつかってくれて最初は勢いで押し返すことができた。


 だけど木製の鎧が邪魔しているみたいで勢いが無くなると押し返されてしまう。最初のゴブリン10体はなんとかなったけど、森からは次々にゴブリンが飛び出してくる。ルイスとティーブがどうなのか確認しながら途切れることの無いように矢を射つづける。


 ルイスは完全にゴブリンを防ぎきっているけれど、私のと違ってみんなの矢は木製の鎧に阻まれちゃっている。剣でなんとか倒しているみたいだけど


 ティーブは縦横無尽に駆け抜けながら剣で切り裂いていく。相変わらずの勢いだし心配はいらなさそう。みんながついていけていないのは気になるけど今のところは問題ないはず。


 そして私は、みんなが必死にゴブリンを食い止めてくれていて、私も矢を射つづけているんだけど支えきれないかもしれない。


 「ファニー様」

 「な、なに?」

 「全員で前に出ます。あの鎧、我々の弓は有効でありません。矢を預けますので、よろしくお願いします」


 大量の矢を置いてリーダーさんもみんなも前に出て行ってしまう。みんなの矢が鎧を貫通できないのは見ていたし、食い止めるために必要なことだとはわかる。だけどこの量の矢を打ち切れっていうの?


 ううん。弱音なんて吐いている場合じゃない。この矢を打ち切らないと、きっとゴブリンは止められない。ルイスとティーブは苦戦するかもしれないけど大丈夫だって信じられる。だからここは、前で食い止めてくれているリーダーさん達のためにも集中して打ち切らないと。そう、1本で確実に1体を討ち取れるように。


 1射で確実に。そのために前だけを向いて、目の前のゴブリンにだけ集中して矢を引き絞る。味方に当たらないように少し後ろを狙って放ち続ける。


 どれだけの時間が経ったのかわからない。でもとても長い時間戦っている気がする。矢を引き絞る腕が重くて痛い。多分もうほとんど放てない。でもゴブリンの数は減ってきているし、あと少しで終わらせられる、もうちょっと頑張れば勝てるって、そう思ったのに。


 ゴブリンの巣があるかもしれない。ゴブリンを統率している個体がいるかもしれない。そんなルイスの予想。外れていればと思っていた予想。その姿を見れば、すぐに理解させられてしまう。ゴブリンの巣の主だと、否定することが出来ない。


 黒いゴブリンが、神輿に担がれて悠々と現れた。

挿絵(By みてみん)

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