第38話-夜襲再び-
私達の姿を見たリーダーさんが駆け足で来てくれる。ティーブに担がれたままのロバート様は何故か格好つけようとしているみたいだけど、なんの意味があるんだろう。
「ルイス、それでゴブリンはどうしちゃったの」
「う~ん。確信はないんだけどね、多分近くに巣があるはずだ」
「え?」
なんでそんなことがわかるんだろう。でもゴブリンの巣って聞くと、なんだか嫌な感じがする。
この森は街からそんなに離れていない。だからロバート様を助け出せたんだけど、逆に言えばゴブリンもすぐに街まで来れることになる。もし本当に巣があるんだとしたら、早めにどうにかしないといけない。
ツイグ王国が襲われた時、どこかに巣みたいなものがあるはずだって散々探したんだけど結局見つけられなかった。あれだけの数が押し寄せてくるんだから、時間さえあれば発見できたはずなのに、その前に次々に街を落とされてそれどころじゃなくなっちゃった。
この森に巣があるんだとしたら、あの街が最初に襲われちゃう。
「ツイグでも探したんだけど、巣なんて見つけられなかった」
「まぁ、ゴブリンは地上に街を作ったりしないからね。基本的に地下だから闇雲に探しても見つからないだろうね」
「ねぇ、ルイスはどうして巣があるって思うの?」
疑うわけじゃないけれど、ルイスも確信はないって言ってるし、なんでなのか気になっちゃう。全然追いかけて来なかったゴブリンが理由だとは思うんだけど、どうしてそうなるんだろう。
「ゴブリンについてはよくわかってないことが多いから、そういう意味で確信はない。追いかけられなかったのは、多分なにかしらの指示をされていたからだと思う」
「指示?」
「まぁどんな指示かはわからないけど、それを優先してたんじゃないかな。だから俺らが目の前に来るまで何もしなかった」
なんだか怖い話。山頂の村でも他のゴブリンを統率しているのがいたけれど、それよりもっと強い指示があるってこと。今の話が正解だったら、きっとこの森全体に影響している。
「そんなに強い指示ができるってこと?」
「俺も信じたくないんだけど、ただ増えているだけじゃないかもしれないね。そもそも、数が多くなればそれだけ意思統一が必要になるから。例えゴブリンだとしてもね」
私も信じたくない。だけど山頂の村で似たようなゴブリンはいたし、この森でのこともそうじゃないと説明できない。もしかしたら、ルイスをもっと早く解放していればツイグ王国は滅びないですんだのかな。考えても意味ないことかもしれないけど、どうしてもそんな風に考えちゃう。
「その話は本当なのか?」
近くで話を聞いていたみたいだけれど、ロバート様が興味を持つのは意外。放っておいて早く帰りたいとか言うと思っちゃったけど、あんまり決めつけるのは良くなかったかな。
「よ~し。君達、今すぐ森を探索してゴブリンの巣を見つけてきたまえ」
なんだろう。目的は間違ってはいないんだけど、やり方が間違っている気がする。巣を見つけた方がいいっていうのは賛成なんだけど、この人数でやることじゃない。そんなことより先に拠点に戻った方が良いと思うし、もっと言えば街まで戻ったっていい。
「ロバート様。皆さん疲れていると思うので、無理はさせない方が」
「なんで?たかがゴブリンだろ?」
「それは1対1の時であって、森にはゴブリンがたくさんいるんですよ?どこにあるのかもわからない巣を見つけられたとして、帰れなかったら意味ないじゃないですか」
リーダーさん達の不安そうな顔が視界に入ってくる。こんな無謀なことは止めなきゃ。ゴブリンは1体だけなら大したことないから弱いって思われがちだし、私もそう思っていた。でもツイグの城下町でゴブリンと戦ったとき、たくさんのゴブリンを相手にして肩を怪我してしまった。その肩を思わずさすってしまう。
「ファニー、これは我がリーフ王国の問題だ。こういう時こそ王子としてリーダーシップを発揮しないといけないからね。任せてくれ」
なにを言っているの?そんなフラフラな足でなにも出来ないはずなのに、自分のことしか考えていないのかな。
「王子。申し訳ないが巣があるというのは予想でしかない。確信がないのに危険なことをさせたくない」
「でもなぁ。だって賢者の言うことだしなぁ」
「拠点を作ってるので、一度そこに戻るのはどうでしょうか?王子も疲れているようなので」
「う〜ん。まぁそこまで言うなら。おい、一旦その拠点まで戻るぞ」
なんだか私のときと全然態度が違う気がする。言い方の問題もあるかもしれないけど、それだけだとは思えない。
納得して拠点に戻ることにしてくれた。テントに入ってくれたまでは良かったんだけど、戻ったあとも早く探しに戻るべきだってずっと言っている。巣があるとしたら早く見つけた方が良いっていうのはわかるんだけど、横になりながら言われても困る。
疲れてしまったので先にテントから出させてもらって、森の方を眺める。ルイスとリーダーさんが説得してくれているけど、聞き分けてくれるのかな。
なんとなく気になってしまい森の中のゴブリンの様子を見てみる。
急いでテントに戻る。
私って、何度同じ失敗をするんだろう。ううん、そうじゃない。今回は手遅れになる前に気づけた。この拠点に向かって、ゴブリンが集まってきていることに気づいた。




