第34話-追跡準備-
「じゃぁ話はこれで終わりで、準備をはじめましょ」
「かしこまりました。移動しながらでもよろしいでしょうか?」
「良いですよ。行きましょ」
そして代表さんの仕事場まで移動する道すがら、これからどうするのか相談した。手の中のア~ちゃんはまだ起きない。見つからないように今まで以上に気を付けながら街の中を歩いていく。
「大変申し訳ないのですが、協力できるのは荷運びと捜索までとなります。仮にゴブリンと遭遇するようなことがあれば、対応はお願いします」
「わかった。街の守りもあるだろうし、それはしょうがないと思う」
「ああ、いえ。そういうことではないのですが」
じゃぁどういうことなの?早歩きしながら話しているけれど、こんなことで話がかみ合わなくなるとは思わなかった。
「魔法を使える賢者に、本物のガーダン、ガーダンの弓を使えるファニー様。それに何故か協力的な妖精。この街どころか我がリーフ王国でも最強クラスです。共に戦える者などおりません」
「そ、そんなになんですか?」
後ろについてきてくれているティーブを振り返る。戦える方だとは思っていたけれど、そこまで言われるとは思わなかった。
「リーフ王国にはガーダンはいないんですか?」
「いません。そもそもガーダンというのは、優秀な王族を守るためにエルフからいただくものです。この国の王族に与えられるわけがないのです。あのバカ王子の家族だから、と言えばご理解いただけると思います」
「あっ、はい」
そんなすごい種族を、なんであと3年しか生きられない私の従者にしてくれたんだろう。もっとふさわしい人がたくさんいたはずなのに。いや、今考えることじゃないかな。
それより代表さんって王族が嫌いなのかな?ものすごい棘のある言い方に聞こえる。
「お察しの通り、王族に良い印象は持ち合わせていません」
「え?いいえ、別に」
「これは独り言ですので、お気になさらずに。そもそも、隣国であるツイグ王国が滅びたというのに悠長すぎるのです。私としてはファニー様のような方に統治していただきたいと考えています」
こんな独り言あるわけないじゃない。というより、そんなに褒めるようなことなの?別に特別なことはしていないっていうか、全部終わったら世界樹の下に行きたいなんて思っているんだから、むしろ無責任な方なんじゃないかな。
「言葉にするのは難しいのですが、ファニー様がお持ちのまともな感覚というものはなかなか手に入らないものなんですよ。幼少期の教育が大事などと聞いたことはありますが、きっと素晴らしい親だったのですね」
「そ、そうですかね」
代表さんはなにも知らずに言っているんだろうけれど、それでも母親を褒められた気がして嬉しい。でも3年でできることなんて限られてるし、統治なんて絶対無理。
「どうでしょうか?予定通りロバート様と結婚するというのは。あのバカは飾りにして、ファニー様が実権を握ればいい。一国は無理でも、一領地であればいただけるはずです。お手伝いしますよ?」
「いえ、そんなの無理ですよ」
「左様ですか?向いていると思いますがね。面倒なことは私のような者に任せてしまえばいい」
「無理です」
今でも頭が痛くなりそうだから、余命3年のことを考えなかったとしても無理に決まっている。余命のことを言えば諦めるんだろうけど、言わない方がいいかな。結局、代表さんは打算的に考えているだけだし信じすぎない方がよさそう。
「それは残念です。さて、そろそろ着きますね。ルイス様には連絡してありますので」
「ありがとう」
やっと到着した。ルイスにはロバート様が飛ばされた直後から連絡し始めていたみたいで、手回しがいいというかなんというか。でも早く相談したい。代表さんの後ろを歩きながら廊下を進んで、突き当りの扉の先には頼りになる人がいる。
「ルイス、あのね」
「あ、ああ。話は聞いたよ。まぁ妖精だし、なんかしでかすとは思ったけどね。この程度ですんで良かったんじゃない?」
だから、みんなの妖精の印象ってどうなっているの?いきなり転移させられて大したことがないだなんて。
「というより、思ったより幼い妖精なのかもしれないね。この程度のことで疲れて眠るわけがないんだけど」
「幼い?」
「まぁ妖精の年齢なんてわかりにくいしね。ほら、悪いけど起きてくれないか?」
ルイスは私の手の中で眠っているア~ちゃんをつっついている。なんで起こそうとするんだろうと思っているうちに、眠そうに大きく伸びをしながら起き上がる。
「なにょ。誰かと思えば黒の賢者じゃない」
「悪かったね。もうちょっと転移場所を特定したいから、終わったら寝てていいよ」
「そんなことできるの?」
わざわざ起こす理由はよくわかった。探さなきゃいけない森と大体の範囲は教えてくれたけど、それでも広い範囲を探さなきゃいけなかったから、もっと絞れるなら助かる。代表さんも感心しているみたい。
ルイスは魔法の呪文を唱えている。多分、エルフの詠唱魔法。ア~ちゃんは怖がっちゃってるけど、ちょっと我慢してもらわなきゃ。
そして机の上に事前に用意されていた地図の上に影ができた。特に説明されなくても、そこが目的地だってすぐわかる。




