第29話-念願の新しい弓-
ダメだ。ほとんど眠れなかった。武器を作ってもらうのに、こんなんで大丈夫かなぁ。
「おはようファニー。どうかした?調子悪そうだけど」
「な、なんでもない。それより早くヴィンダーさんのところに行きましょ」
「え〜。あのハゲドワーフのところに行くの〜」
もうア~ちゃんが頭の上に乗ってるのが当たり前になっちゃってる。このままヴィンダーさんのところに連れて行って大丈夫なのかな。
「ア~ちゃん、ヴィンダーさんのことハゲとか言っちゃダメだからね。あと今日は私とティーブの武器を作ってもらうんだから、邪魔しないでね」
「は〜い」
わかっているのかな。なんだか連れて行くだけでヴィンダーさんが不機嫌になっちゃいそうな気もするし、本当はルイスと待っていてほしいんだけど、それはそれで心配。昨日の夜の話を勝手にしちゃいそうだし、だから置いてはいけない。
「ティーブ、また道案内してくれる?この街の道って迷路みたいで」
「かしこまりました。こちらです」
入り組んだ道を昨日とは逆に進み、ドワーフの工房を目指す。前を歩くルイスの背中が、いや、そんなの関係ない。武器が楽しみなんだ。だから足取りが軽くなっていく。
◇
「おう来たか。げっ」
「おはようございます。す、すみません」
「良いって良いって。ソイツが大人しく留守番するわけねぇからよ」
ア~ちゃんのことを見たヴィンダーさんは、ものすごく嫌そうな顔をしている。本当に何をしでかしてたんだろう。
「んでだ。武器って何を作りゃぁ良いんだ?大体のものはすぐ作れるがよ。あんまりデカいのだと時間がかかっちまう」
「なによ、ケチね」
「ちょっとア~ちゃんはおとなしくしててね。ご、ごめんなさい」
「嬢ちゃんが謝るこたぁねぇよ」
も~。早速怒らせるようなこと言うんだから。罰として両手でギュッとしないと。
「ファ、ファニーちゃん。これじゃ何も見えないよぉ」
「ダメです。大人しくしてって言ったのに」
「おいおい、仲良いんだな」
「そ、そうですか?」
やっぱりヴィンダーさんの時とは違うのかな。でもそうだよね。ア~ちゃんと一晩過ごしたけど、あれだけのことで怒るわけないし。
「ヴィンダーさんの時って、どんな感じだったんですか?」
「どんなって、そりゃもう。手当たり次第に置いてるものを壊すしよ。それだけならまだマシ、いやそれだけでも迷惑だってのに、無くなるんだよ」
「な、無くなる?」
「わけわかんねぇだろ?壊されるだけなら直すなりなんなりできるけどよ、きれいさっぱり無くなっちまうんだぜ?どうにもできねえだろ?」
それは、困るかも。一体どうやったんだろう。手の平の収まっている小さな体で運べるものなんて大したことないだろうし、実は力持ちなのかな?
「ふふ~ん。すごいでしょ~。転移魔法よ」
「んなもん使ってたんか!」
「へへ~ん」
妖精って、魔法を使えるんだ。でもそうだよね。魔法はルイスだけが使えるってわけじゃない。人間は魔法を使えないけれど、他種族なら当たり前のように使ったりする。そんなこと知っていたはずなのに、なんとなく悔しいのはなんでだろう。
「まぁ嬢ちゃんも気ぃ付けろよ。今んところ上手くいってるみてぇだがよ」
「べ~っだ」
またそんなことをする。早く話を進めた方が良さそうだな。ヴィンダーさんも腕組みしてイラついちゃってるみたいだし。
「あの、それで武器なんですけど」
「おお、そうだったそうだった。何が欲しいんだ?」
「えっと、それなんですけど、私の弓とティーブの剣を作って欲しくって」
「んあ?」
やっぱり勘違いしているよね。ティーブはガーダンだけど、私は人間だし。かといって人間用の装備をわざわざヴィンダーさんにお願いするのも変だろうし。
「どういうこった?」
「それが、私ってガーダン用の弓じゃないと満足できないみたいで」
「んあ?」
そんなになのかな。立ったまま動かなくなっちゃってるし、でも実際に使っていたんだから問題ないはずなんだよね。
「えっと、詳しくはティーブに聞いてください。前使っていた弓の性能とか知っているんで。お願いできるよね?」
「はい。お任せください」
「おっ、おう。正直信じられねぇが、言われた性能にすれば良いってことだな」
「よろしくお願いします」
そんなに疑わなくてもいいのにって思っちゃうけど、使っているところを見せれば良いんだよね。これでやっといつも通りに弓を使えるようになりそうだし、楽しみだなぁ。
工房にヴィンダーさんとティーブだけ入って行って武器を作ってくれている。私とルイスは残ってア~ちゃんの見張り。何もしなかったとしても気が散っちゃうみたいだから、絶対に近寄らないようにしないと。




