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第28話-別に好きってわけじゃ-

挿絵(By みてみん)


 「ファニーちゃん、ファニーちゃんってばぁ」

 「ん〜。もうちょっと寝かせて」

 「いいから起きてよぉ」


 もう朝なのかな?って窓の外はまだ真っ暗じゃん。なんでこんな時間に起こすのかなぁ。


 「どうしたの?ア~ちゃん」

 「お話ししよっ」

 「え〜?こんな時間に」


 色々あって眠いし、明日も色々あるし、もう寝たいんだけどなぁ。ベッドの上で目をこすりながら起き上がる。部屋の机の上にア~ちゃんが座っている。


 「いいじゃんいいじゃん。お話ししたいの」

 「も〜、ちょっとだけだよ」


 部屋割りは結局ア~ちゃんと一緒になったんだけど、ふぁ〜ぁ、起こされるとは思わなかったな。ん〜、でも話したいことってなんだろう。


 「話ってなぁに?」

 「ねぇねぇねぇ。ファニーちゃんってさ、黒の賢者のこと好きなの?」

 「へっ?ちょ、ちょっといきなりどうしたの?」


 そ、そ、そんなこといきなり聞かれるなんて思わなかった。完全に目が覚めちゃったじゃない。ベッドから足をおろすと、ちょうど正面にア~ちゃんが座っている。だけど暗くて表情まではよく見えない。


 「やっぱりそうなんだぁ」

 「ち、違うって。いきなりだったから驚いただけ」

 「ふ〜ん」


 なんなのよ、その言い方は。それに妖精には関係ないことだし、今日出会ったばかりでなんでそんなことがわかるのかわからないし。というより、誰かに変なこと言わないようにしなきゃ。明かりを近くに寄せてもっとお互いの顔が見えるようにする。


 「そんな変なこと、他の人には言っちゃダメだよ」

 「変なこと?」

 「それは、だから、私がルイスのこと好きとかどうとか」

 「でも好きなんでしょ?」


 だ、だから違うって言ってるのに。明かりのおかげで表情まで見えるようになったけど、すっごく目を輝かせている。ちゃんとしておかないと、本当に誰かに言っちゃいそう。特にルイスには言わせないようにしないと。


 「あのね。私とルイスは出会ったばかりなのよ?それに目的が同じっていうか、魔物と戦うために一緒に旅しているだけだから。好きとかそういうんじゃないの」

 「一目惚れってこと?」

 「な、ん、で、そうなるの!」


 もうどうしたらいいかわからないよ。それに好きとかそんなの知らない。もう婚約者は決まっちゃってたし、それに友達はティーブだけだったから、私には関係ないことだった。そういえば、婚約の話ってどうなっちゃうんだろう。


 「あのね、ア~ちゃん。そういうことを他の人には言わないでね。お願い」

 「どうして?」

 「んっとね。え〜っと、と、とにかくダメなの。誰かに言ったら嫌いになっちゃうからね」


 勢いで言ってみたんだけど、思っていたのと反応が違う。最初キョトンとしていて、だんだん泣きそうな顔になっちゃって、最後は全身をバタつかせながら机の上で暴れちゃっている。


 「や〜だ〜。やだやだやだやだやだ。嫌いにならないの〜」

 「あ〜ごめんごめん。そんなにすぐ嫌いになったりしないから」

 「ホントォ?」

 「う、うん。だからさっきのことは誰にも言わないでね」


 なんだろう。妖精って本当にみんなが言っているようなものなのかな。明日ヴィンダーさんに聞いてみようかな。


 「ファニーちゃ〜ん」

 「どうかした?」

 「怒らない?」

 「ん?怒ってないよ」


 目をウルウルさせながら手の平に飛び込んで来る。やっぱりカワイイんだよなぁ。ちゃんと言えば悪いことはしなさそうだし、大丈夫なんじゃないかな。


 「えっとね。黒の賢者を好きになるのはやめたほうが良いよ」

 「いや、でも、なんで?悪い人って、世界樹の下に行こうとしているからだよね。そんなに悪いことなのかなぁ」

 「ん〜?」

 「違うの?」


 昼間も悪い人とか言っていたし、そういうことじゃないのかな。手の平の中でほっぺたを膨らませているけれど、それはどういう意味なんだろう。


 「違うよぉ。そうじゃないのぉ。世界樹の下の悪い人って、聞いただけでよく知らないもん」

 「じゃぁ、なんで?」

 「ファニーちゃんって、何年生きているの?」

 「んっと、17年だけど?」


 もうすぐ17歳の誕生日。20歳までしか生きられない私にとって、喜んで良いのかよくわからない誕生日。


 ほっぺたを膨らませたままのア~ちゃんが、どうしていきなり年齢のことを聞いてきたのか。理由はなんとなくわかる。


 「もしかして、ルイスの年齢のことを気にしているの?」

 「気にならないの?」

 「それは」

 「見た目に惑わされちゃダメなんだからね。黒の賢者はおじいちゃんのおじいちゃんの、も〜〜〜〜っとおじいちゃんなんだから」


 地下の扉の向こうで、長い間封印されていたルイス。正確にどれくらいなのかは知らないけれど、少なくとも私のおじいちゃんよりは長く生きている。


 「でも、ずっと封印されていたんだから、あんまり気にしなくてもいいんじゃない?」

 「やっぱり好き何だ」

 「えっ、いや、だから、違うって。もう寝るから。今の話、他の人には絶対言っちゃダメだからね。わかった?」

 「むぅぅ。は〜い」


 そんなに口を尖らせないでって、尖らせたいのは私の方なんだから。ベッドに横になって必死に寝ようとするけれど寝つけない。もう、ア~ちゃんが変なこと言うからだ。明日が楽しみだったのに、ちゃんと寝ないと。


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