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第26話-妖精アスチルベ。ア~ちゃんって呼びなさい-

挿絵(By みてみん)

 「おい、妖精。おめぇなんで出てきやがった。ずっと工房に閉じこもってたじゃねぇか」

 「知らな~い。ファニーちゃ~ん、あっそぼ~」

 「えっ?あっ、ちょっと」


 周りを飛び回ったり、肩に乗ったり、頬っぺた引っ張られたり、最後は頭の上に寝そべっているみたい。


 「よ、妖精さん?」

 「ちっが~う。アスチルベよ。ア、ス、チ、ル、ベ。ア~ちゃんって呼んでね」

 「ご、ごめんね。アスチルベ、ちゃん?」

 「ちっが~う。ア~ちゃんだってば」


 な、なんで、そんなに喜んでるの?それに頭の上からだとしゃべりにくいよ。どうしよっかな。上で暴れているみたいでくすぐったいし、それに落っことしちゃいそう。


 「んだこいつ?名前あるじゃねぇか」

 「ヴィンダーさん?」

 「ああ、それがよ。この妖精野郎、名乗りすらしなかったのによぉ。いきなり何だってんだ?」


 そ、そうだったんだ。だけど、そんなことより降りてくれないかな。捕まえちゃってもいいのかな、いいよね勝手に乗ってるんだし。


 「アンタなんか知らないもん」

 「あぁ?」

 「面白そうだったから来ただけだもん。ハゲドワーフなんて興味ないもん」


 ハ、ハゲって。言っちゃダメだって。見ないようにしてたのに。早く黙らせないと、なのに、ずっと捕まえようとしているのに掴めない。なんで?頭の上に居るはずなのに捕まえられない。


 「ざんね~ん。そんなんじゃぁ捕まんないよ~ん。まだまだね」

 「え~」

 「んなこと、どうでもいい。興味ねぇならなんで俺の工房に来やがった。仕事の邪魔しやがって」


 ど、どうでもいいかもしれないけど、私はどうでもよくないんだよね。あるはずなのに掴めない。それに、頭の上のア~ちゃんに怒っているのはわかるんだけど、ヴェンダーさんがドンドンこっちに来てるし。


 「あの、ヴィンダーさん?」

 「あぁん?」

 「えっと、その、近いというか」

 「おぉ、すまんすまん」


 ちょ、ちょっと怖かったかも。というかルイスなんて笑いそうになってるし、どういうこと?


 「へへ~ん。ファニーちゃんをイジめちゃダメなんだからね~」

 「てめぇのせいだろうが」

 「こわ~い。助けてぇ~」


 助けて欲しいのは私の方だよ。全部ア~ちゃんが悪いんじゃん。ルイスなんて完全に笑い出しちゃってる。


 「ルイスぅ?笑ってないで何とかしてよ」

 「あっ、うん。ごめんごめん」

 「ん~?へぇ~。あなただったのね」


 あっ、掴めた。いきなりどうしたんだろう。両手にすっぽりと収まった妖精の姿。近くで見るとカワイイかも。綺麗なピンク色の髪と透き通った羽。いやでも、見た目に惑わされちゃダメだよね。


 「あれれ?」

 「俺がどうしたって?」

 「むぅ~。ズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルい。黒の賢者のクセに~」


 やめて、手の中で暴れないで。ちょっとくらい強めに握っても大丈夫かな。おとなしくしてくれないと話が進まないし。ギュッとね


 「んぐ」

 「はーはっはっはー。ざまぁねぇな、妖精」

 「うっさいハゲ。ち、違うもんねぇ。ここが気に入ったんだもんねぇ」


 よ、よくわからないけど、やっとおとなしくなってくれた。言いたいこといくらでもあるけど、まずは。


 「ルイス、助けるならもっと早くしてよ」

 「悪かったって、ついね」

 「てかよ。あんちゃんが話題の黒の賢者だったんか?」

 「まぁ、そうね」


 帰り支度をして、全員立ち上がっていたのに私以外ちゃっかり座っちゃってる。話が長引きそうだし、私もそうしよう。


 「な~んか面白そうだと思ったら、黒の賢者だったのね」

 「ん?ア~ちゃんってそれで出て来たの?」

 「そうよ。ハゲには飽きちゃったし」

 「じゃぁとっとと出てってくれ」


 この会話の流れって、あんまり良くないような。嫌な予感がする。


 「べ~っだ。ファニーちゃん、もう行こうよ」


 や、やっぱり。どうしよう。思いきり目を輝かせているんだけど、でも妖精なんだよね。何をするかわからないし、連れて行きたくはないんだけど残していくのもヴィンダーさんが困るだろうし。


 「あのね、ア~ちゃん。連れていけないの、ごめんね。お仲間とかいないの?」

 「ん~?ぶー。やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ」

 「ちょ、ちょっと暴れちゃダメって」

 「ぐげ」


 あっ、強く握りすぎちゃったかな。う~ん、でもまだまだ元気みたいだし大丈夫そうかな。なんかすごい音だったけど。


 「ファニー、残念だけどこうなったら連れて行かないと」

 「えぇ、でもぉ」

 「下手に置いていったりすると逆に何するかわからないからね」

 「う~ん」


 しょうがないのかな。それに思ったよりカワイイし、今のところ悪い子には見えないし、妖精なんて滅多に会うことがないから悪い噂ばっかり広まっているのかも。色んな人間がいるように、色んな妖精もいるだろうし。


 「ん~。ア~ちゃん、変なことしちゃダメだよ。これから危ないところに行くんだからね」

 「きゃーきゃー。やったー。アハハ、アハハハハ。黒の賢者、変なことしちゃダメだってさ」

 「ア~ちゃんに言ったの」

 「ふ~ん」


 大丈夫かなぁ。でもルイスも連れて行った方が良いって言ってるし、楽しそうにしているし、なんとかなるかな。


 「本当に連れてくのか?まぁ止めはしねぇけどよ。そんなら明日また来い。武器を作ってやるよ」

 「あっ、いいんですか?」

 「おうよ。悪いがよ、準備するから帰ってくれていいか。ソイツがいると気が散って仕方ねぇ」

 「わ、わかりました。じゃぁまた明日よろしくお願いします」


 そんなにア~ちゃんのこと嫌いなんだ。なにがあったんだろう。でも本当に嫌がっているみたいだし、早く帰った方がよさそう。


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