第23話-なんで引き受けちゃうかなぁ-
「話はそれだけ?」
「あっ、いえ。実はもう一点ございまして、その魔法の力を我々にお貸しいただけないかと」
「どういうこと?」
「はい。ご存知の通り我が国もゴブリンの脅威と戦っております。魔法の力で共に戦っていただけると大変助かるのですが」
なんとなくだけど、態度が低姿勢になっている気がする。ツイグ王国を滅ぼしたゴブリンの大群。戦うためにルイスの助けが欲しいっていうのはわかる。わかるけど、でもルイスにはもっとやらないといけないことがある。
ゴブリンだけじゃなくて、世界中の魔物が増え続けているのだから。世界樹の下にいって全てを止めないといけない。私だけ残って戦うのは良いかもしれないけれど、ルイスまでずっとゴブリンとだけ戦うのは良くないと思う。
「あの、横からすみません。ルイスはこれから世界樹の下にいかなきゃ行けないんで、ずっとこの国にいるわけにはいかないんです」
「おや、左様でしたか。残念です。しかしそうなりますと、ツイグ王国の援助は難しくなるかもしれませんね。ロバート様の援助もなく、ゴブリン討伐の功労もないとなりますと。あぁいえ、もちろん私は協力いたしますよ?」
ああ、そういうこと。嫌な人。こういうやり取り、お城でもよくあったっけ。回りくどいというか、ハッキリ言わないというか。要するに、私が婚約者のロバート様に会うことと、ルイスがゴブリンとの戦いに助力することを天秤にかけさせようとしているんだ。
なんでそこまでロバート様に会わせたがってるんだろう。それに、天秤としては微妙な気もする。ルイスがそこまでして私に手を貸す必要はないわけだし、きっと断っちゃうよね。それは仕方がないこと。多分、代表さんはわかってなくて言っているんだろうな。
「ルイス様はいかがお考えでしょうか?」
「うーん。つまり、ゴブリンに魔法を使えばツイグ王国を援助してもらえるってこと?」
「その可能性が高くなると、お考えいただければと思います」
「ふ〜ん」
ルイスがチラチラこっちを見てくる。断っちゃって良いからね。こんな口約束あんまり意味ないし、他にやりようはいくらでもあるから。
「それなら、少しくらいなら手伝いましょうか」
「左様でございますか!大変助か、」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
そっちじゃないでしょ。ダメだってば。でもちょっと嬉しいような。じゃなくて、あ〜もう。いいや、ロバート様に会おう。そうしないとずっと言われ続ける気がするし、それに助けてもらえるかもしれない。どんな人か知らないけれど、良い人かもしれない。
「ルイスは、世界樹の下に行くんでしょ?道草食ってる場合じゃないんだから。あ、それと、お返事が遅くなってすみません。ロバート様にお会いできるようにしてもらえるでしょうか?」
「あぁ、これは失礼しました。ルイス様にとって、それほど大事な用事なのですね。えぇえぇ、そうでしょうとも。大変失礼いたしました。ロバート様との件についてはお任せください」
ふう。これでいい、よね。どっちにしても武器を揃えるのに時間がかかっちゃうかもしれないし、せっかくだから良い武器屋を教えてもらおうかな。こういう人だけど、ううん、こういう人だからこそ良いお店を紹介してくれるはず。
「よろしくお願いします。それと、もう1つお願いがあるんですが、良いでしょうか」
「もちろんでございます。私の力になれることでしたら、なんでも仰って下さい」
◇
なんか疲れちゃったな。久しぶりにお城の中みたいなことをした気がする。いつもはお義姉ちゃんがこういうことを全部引き受けてくれていたから楽だった。大変そうだなって後ろから見ていたけど、自分がやることになるなんて。
ゴブリンと戦うより疲れる。でもまぁ悪くはないな。代表の人も、本気じゃなかったっていうか、あんまり私達に不利益になるようには考えていなかったみたい。様子見していただけかもしれないけど。
「ファニー、良かったのか?」
「ん〜?大丈夫だよ。それより、ルイスはどうして引き受けようとしちゃったのかな」
「どうしてって」
「あんな口約束、ほとんど意味ないんだからね。勝手なことしないように」
「お、おう」
指差すのは良くなかったかな。気をつかってくれたみたいだから。いや、でもそうじゃないかもしれないし、ん〜。こういう時なんて言えばいいんだろう。
「ま、まぁ婚約者と会えるみたいで良かったじゃん」
「全然良くない」
「えっえぇ?」
「もう知らない。ティーブ、武器屋まで案内して」
「かしこまりました」
ルイスはなんでそういうこと言うのかな。人の気も知らないで。いいや、新しい武器を買って気晴らししよっと。せっかくもらった弓だけど、やっぱり弱すぎて使いにくかったから。もっと強いのがあれば良いんだけど。
それから宿のことでも一悶着。自分たちで探すつもりだったんだけど、そういうわけにはいかないとかなんとか。お金が無いし、あんまりお世話になりたくなかったけれど、全く引き下がろうとしない。何かあったらマズイとか言われる。私、そんなに弱くないんだけどな。
結局諦めて宿についても手配してもらうことにしたけど、お金だけは用意するから予算内に収めて欲しいとお願いした。あんまり多くないけれど、とりあえず王都まで行かなきゃいけないし、武器も欲しいからあまり多くは出せない。
なんとか全部終わったけれど、なんだか疲れちゃったな。ティーブに先導してもらいながら真っ直ぐに武器屋へと向かう。後ろをルイスが着いてくるのを見ながら、少しずつ足取りが軽くなっていく。




