第19話-怪我人は寝てなさい-
「ティーブ、あっち」
「かしこまりました」
ルイスの怪我が治るまで、村の周りのゴブリンを探し回った。指示を出していたゴブリンを倒せたのが良かったみたいで、私とティーブだけでも問題なく狩って回れる。
崖から落ちたときに弓を落として失くしてしまったから、村の弓を借りてなんとか戦っている。剣が壊れてしまったティーブは農具を持って戦ってくれている。
そして、今から倒すのが最後の1体。村の周囲を隅々まで調べ終わっていて、少なくとも村の周りにはもういない。追いかけるティーブの後ろから矢を放つ。肩に命中はするが、威力が全然足りない。
村の人って、こんな弓で狩りをしてたんだ。張りが弱すぎて全然飛ばないじゃん。やっぱり自分のじゃなきゃダメだな。それでも足止めには十分で、動きが鈍ったところをティーブがトドメを差してくれる。
「終わった?」
「はい。仕留めております」
「うん、ありがとう。帰ろっか」
「かしこまりました」
本当に気にしてないみたい。まぁ私が悪いんだし、気にされても逆に困っちゃうかもね。いつも通りにしてくれるなら、それはそれでやりやすいから。
2人で村へと戻る。ルイスの大怪我を見た村長さんは本当に心配していて、それでもゴブリンと戦おうとするのを必死に止めてくれていた。だけど治療のために泊まらせてもらわないといけないし、その間に何もしないってわけにはいかない。
ゴブリンが危ないことに変わりはないし、ルイスを守らなきゃいけない。どれくらいいるのか調べてティーブに倒しきれるか聞いてみたら、問題ないって言ってくれた。だから一緒に戦うことにした。このまま引き下がりたくなかった、っていうのも大きい。
最後の1体を倒して、なんだか風が気持ちいい。ルイスも順調に回復しているし、今夜はゆっくりできそうだな。村長さんに頼んで水浴びをたくさんやらせてもらおうかな。
「お〜い。終わったみたいだね」
「あっ、は〜い。今日でおしまいですよ〜」
出迎えのルイスが手を振ってくれている。終わったんだなって実感が湧いてくるな。ん?あれ?何かが違うような。あっ、左腕が治ってる。え?いやそうじゃなくて。
「な、なな、なんで起きてるんですか!」
「いやなんでって、もう大丈夫かなって」
「そんなわけないじゃん」
全力で走って近づいて、全身を見てみるけど、左腕は本当に治っているみたい。他の怪我も大丈夫みたい、なんだけどだからって起き上がって出歩くなんて。
「戻りなさい」
「あのねファニー、そんなに心配しなくったって」
「いいから、ほら行くよ」
右腕を持って泊まっている家まで引っ張っていく。正面から村長さんが血相を変えて駆けてくる。
「ル、ルイス様。こちらにいらっしゃいましたか。申し訳ありません。いつの間にか姿が見えなくなってしまいまして」
「ルイスゥ?まさか勝手に出てきたの?」
「い、いや〜。みんな心配しすぎなんだって、イテテ」
そんなに元気なら右手をツネられるくらいなんでもないよね。心配するに決まってるじゃん。あんな怪我、普通の人だったら死んじゃってたかもしれないんだから。賢者だから平気だってずっと言ってるけど、そんなのわからないし。
「早く戻って寝てなさい」
「わかったって、それよりファニー。そろそろガーダンのこと話したいんだけど良いかな?」
「そ、それは。ん〜、部屋に戻ってからね」
振り返るとティーブがいつも通り立っている。なんでも言うことを聞いてしまうガーダン。その主人として気をつけないといけないことを、私はわかっていなかった。
「あっ、あの赤い実。美味しそうじゃない?」
「もう、そういうのはいいから。早く帰るよ」
「ルイス様。後でお持ちしますので、どうかお部屋に」
「わ、わかったってば」
なんにもわかってないのはルイスだって同じじゃん。とにかく早く寝かせないと。ティーブに見ておいてもらいたいくらい。でもなぁ、どうやってお願いすればいいかまだわかってないから。
いいや。せっかくだから気づかれないように教えてもらっちゃおっと。そうすれば、ティーブなら怪我人を出歩かせたりしないからね。
「な、なんか悪いこと考えてない?」
「んん?これ以上勝手なことするなら、縛り付けなきゃいけないかなって」
「いや、それは勘弁して欲しい」
素直になってくれたルイスと部屋に戻る。部屋に戻っても寝ないで座ろうとするから、本当に縄を持ってきちゃった。それを見たら流石に観念してくれて横になってくれた。でもガーダンについてはどうしても話したいみたいで、私も早く聞いたほうが良いんだろうなって思っていた。だから寝ているルイスの横でガーダンの、ティーブの話が始まる。




