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第15話-とても高い崖を、2人に並んで登りたい-

挿絵(By みてみん)


 それから王都へ行く準備を始める。まず目指すのは山頂の村。関所の責任者さんは道案内すら用立てられなくて申し訳ないって言ってくれた。関所を守るのに手一杯なんだから、そんなに気にしなくていいことなのに。


 道案内の代わりに食料とか、山用の装備とか、色々入った袋を用意してくれていた。ゴブリンを倒してくれたお礼ってことにはなっている。それはいいんだけど、気になるのは袋が2つしかないこと。


 「あの、私は?」

 「あっ、いえ。重いですし、ファニー様が持っていくのは難しいかと」

 「そうなの?ティーブ」

 「はい。荷物まで持っていくのは難しいかと」


 なんか嫌だな。だって私は、2人と同じように歩きたいのに。私だけ楽をしたいわけじゃないのに。曇り空の下、山頂の村を目指して進んでいく。雨は降らないけど薄暗い。


 そして見えてきたのは、切り立った高い崖。生まれて初めてみるくらい高い。雲のせいで山頂が全然見えない。こんなに高い山を登りきれるのかな。この崖を進むんじゃなくて、岩山の横側にある道を進むことになっているけど、それでも高い。


 こんな高い崖。落ちちゃったら助からないだろうな。



 「やっと着いたぁ」

 「ファニーさん、お疲れ様。まさか本当に歩ききるとはね。男でも休憩なしで来るのは大変って聞いたんだけど」

 「へへ~ん」


 でももう歩けない。休憩なしでずっと歩いて山頂の村まで来れたけど、早く横になって休みたい。というより、ルイスさんとティーブはどんな体力をしているんだろう。平然としていて全然疲れていないみたいだし。


 「2人は、疲れてないの?」

 「ん~まぁ疲れてはいるかな」

 「私は特に問題ありません」


 2人ともあんまり疲れてないみたい。私はもっと鍛えなきゃダメだな。意地を張ってもしょうがないか。近くに転がっていた岩に座って休む。山頂の村には先に連絡が来ていたみたいで、関所の人は鳥で連絡できるとか言っていた。


 それでもまだ用意ができていないから少しだけ待っていて欲しいって、村長さんに言われている。すごい速さで走っていくし、わざわざ村長さんが出てきてくれているし、そんなに気を使わなくてもいいのにそういうわけにもいかないんだろうな。


 村の入口には何もない。門とか塀とか、日差しを避けるようなものも何もない。いつもよりちょっとだけ太陽が小さく見えるのは気のせいなんだろうな。


 村の周りには岩が転がっていて、石造の家が点在している。少し背の高い草が風に揺れていて、道行く人たちはみんな若い。そんな、のどかな風景。


 なんか良いなぁ。荷台の上で仰向けになる。暖かい夕日と静かな風、それに登りきった達成感が気持ちいい。


 「た、大変お待たせしました。こちらへどうぞ。何もないところですが」

 「はーい。何もないだなんて、とっても良い所ですよ」

 「ははは。世辞などは結構ですよ。さぁさ、こちらへ」


 お世辞なんかじゃないのに。村長さんに案内されて村の中に入っていく。途中で会う人たちが、みんな深々とお辞儀してくるのが居心地悪い。まだ何もしていないのに、そんなに期待されているのかな。


 案内されたのは、村の中でひと際大きな家。広い部屋がいくつかあるみたいだけど、でも何か変。家具が全然ないし、人が住んでいる気配もない。


 「こんな辺境の地にも、お国の方が来られることがあります。その際はこちらを使っていただいております。王族の方にお使いいただくのは心苦しいのですが、こちらしか無いものでして」

 「えっ、でも私こういうところ好きですよ。それに、もう王族じゃないです」

 「お気遣いいただきありがとうございます。お部屋は2つ、ご用意させていただいております」


 大きな部屋と小さな部屋。私だけ小さな部屋ってことかな。もうすぐ日暮れだし、今日はもう食べて寝るだけ。


 「お食事の準備をします。水浴び場はございますが、よろしければいかがですか?」

 「えっ、本当ですか?ルイスさん、行ってもいいですか」

 「良いんじゃない?」

 「手狭なところですが是非。お召し物も運ばせますので」


 こんなに歓迎されるなんて、思っていたのとちょっと違うな。でも水浴びをする暇もなかったから汗を薙がせるのは嬉しい。先を急ぎたいけれど、たまにはゆっくりしても良いよね。


 「じゃぁ、お言葉に甘えちゃおうかな」

 「では水浴び場までご案内します」


 村長さんに案内してもらった場所は、本当に小さな場所。水浴びっていっても大きな樽に水が貯められているだけで、桶で何回か体に水をかけられるだけ。でもそれでも嬉しい。ルイスさんが魔法で綺麗にしてくれているから服は汚くはないんだけど、これは気分の問題。それに今日はずっとここまで歩いていたから、もう汗びっしょり。


 なんか久しぶりだな、こういうの。頭から水をかぶる。ちょっと髪の毛が傷んじゃってるな。いっそ切っちゃった方が早いかも。


 「ファニー様。お召し物をお持ちしました」

 「う、うん。ありがとう。ん?えっ、えぇ。えぇぇぇぇ」


 な、なな、なんでティーブが入ってきてるの!?しかも平然としてるし。あぁ、うん。着替えを持ってきてくれたのね。いや、そういうことじゃなくて。


 「ちょ、ちょっと見ないで」

 「はい。かしこまりました」


 いや、そうじゃなくて。目を閉じれば良いってことじゃなくて。なんでティーブが着替えを持ってきてるのよ。そこからおかしいじゃん。


 「そうじゃなくて、一回出て。服は置いといてくれればいいから」

 「はい。失礼します」


 もう、なんでこんなことに。急いで水浴びを終わらせて顔だけ出して外を確認する。着替えだけ置いてあって、他には誰もいない。胸を撫で下ろしながら着替える。そして部屋に戻ろうとしたときに、廊下に立ったままのティーブがいた。


 「ティーブ、何してるの?」

 「はい。村長様からお召し物を届けるように依頼されました。完了しましたので、お待ちしていました」


 そんなに真顔で言われても困るよ。ちょっと素直すぎるっていうか。というか本当になんとも思ってないの?なんだか納得できないんだけど。


 村長さんもなにを考えているんだろう。部屋割りも私とティーブの2人部屋と、ルイスさんの1人部屋で用意したとか言っている。ガーダンだから当然そうだって思っていたみたい。


 村を散歩して帰ってきたルイスさんには、ガーダンはそういう種族だと思われてるって言われた。でも本当にそれで良いのかな。


 なんだか納得できないことばかりだったけど、夕食はとても美味しかった。でもお肉は食べたかったな。明日、余裕があったら何か狩っておこう。そんなことを考えながら、1人部屋で床につく。


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