第14話-忘れかけてた婚約のこと-
関所の前でしばらく待っていると、音をたてて扉が開く。出てくる人全員が完全武装していて物々しい雰囲気。よく見ると怪我している人が多い。
ルイスさんが賢者ってことが広まっているけど、ラウレリン様が話したからだろうな。そのラウレリン様がわざわざ人払いまでして話をした人達って注目されちゃう。その前のゴブリンとの戦いも遠くから見られていて、みんな口々に褒めてくれる。
話を聞くと隣国でもゴブリンが増えているみたい。特に滅ぼされてしまったツイグ王国からのゴブリンが増えていて、関所では戦いが絶えなかったそう。私たちだけでたくさんのゴブリンを倒したから、みんなすごく喜んでいる。
関所の責任者に立派な部屋を用意してもらって、見たこともない食べ物がたくさん並んでいる。ルイスさんと一緒に座っているけど、なんだか怖くて食べられない。放っておくとずっと立ったままになっちゃうティーブも座らせると、責任者の男性が入ってくる。おもむろに話を切り出してきた。
「みなさま。ようこそいらっしゃいました。お時間をいただきまして、誠にありがとうございます」
責任者さんはすごく真剣な顔で挨拶している。その目はルイスさんと私を交互に見ている。どっちに話せばいいのかわからなくなっているよう。私もルイスさんを見ると首を横に振ったので、きっと話を聞いて欲しいって意味なんだと思う。
「あの、話なら私が聞きます」
「左様でございますか。よろしくお願いします。なんと申し上げるべきでしょうか。心よりお悔やみ申し上げます」
「い、いえ。そんな」
私は別に、頭を下げられるようなことはしていない。生き残ってしまっただけで、誰も助けられなかった。
「それで、お越しいただいたのはやはりリーフ王国でお暮らしになりたいということでしょうか?」
「え、えっと。ちょっと違います。ツイグ王国はもう国として機能していないんです。でもまだたくさんの人が暮らしているので助けてもらえないかなと」
「これは失礼しました。まさかそのようなご立派なお考えとは。我が国の王族にも見習ってもらいたいものです。皇太子であられるロバート様と婚約されておりますので、てっきり。それであれば先程の戦いぶりも納得です」
婚約。すっかり忘れちゃってた。寿命が短いんだから早い方が良いって、勝手に決められたのはいつだったかな。お義姉ちゃんにちゃんと好きな人と結婚しなきゃダメだって止められてた。
どうせ短い命なんだから、誰でもよかったのに。寿命が短い私とわざわざ結婚しようなんて考える人なんていないし、というよりなんで私と婚約しようだなんて考えたんだろう。会ったことも無い人だから、どんな人なのか何も知らない。
それにしても責任者さんって、王族と何かあったのかな?なんだか言葉にトゲを感じる気がする。あと婚約の話ってどうなるんだろう。責任者さんが知らないだけでもう婚約の話は無くなっちゃってるかもしれないし、残っていたとしても今は旅を続けたい。
「ルイスさんは、これからゴブリンと戦って、そして魔物が増え続けるのを止めるために世界を旅しようとしてくれているんです。それを私は、手伝いたいと思っています。なのでリーフ王国に助けをお願いして、その後のツイグ王国のことはお任せできればと考えています。それにツイグ王国はもう滅んでしまったから、婚約の話もどうなっているかわからないです」
「なるほど、そうでしたか。確かに魔物は、ゴブリンは年々増え続けています。現場で戦うものは皆そう言っています。なのに王族ときたら。いえ、失礼しました。私個人としては、その旅を応援したいところです」
深いため息と諦めたように下を見る視線。さっき門から出てきた人達を思い出した。怪我人まで武器を持っていて、そんなに余裕がないんだ。手伝ってあげたいんだけど、私だけで全ての人を助けられるわけじゃない。助けなきゃいけないのはツイグ王国で暮らしている人達で、だからこうやって隣国に助けを求めようとしている。
「力になれなくてすみません」
「あぁいえいえ。ご心配には及びません。我が国の問題ですので。さて、王都へお急ぎなのですよね。少々お待ち下さい」
責任者さんは一度席を立つと、大きな紙を持ってきて机に広げてくれる。それはリーフ王国の地図で、王都までの道のりを教えてくれた。
街道沿いを進むことを提案してくれたけれど、なんだか遠回りにしか見えない。真っ直ぐ直進すれば早そうなんだけど、どうしてわざわざこんな道にしたんだろう。
「あの、ここは通れないんですか?」
「あぁ、直進をお考えなのですね。実のところ、その方が早いのですがオススメは出来ません」
「なぜ?」
「途中に岩山があり、山越えをしなければならないからです。よほど体力があれば良いのですが、途中でバテますと逆に時間がかかってしまいます。であれば街道沿いを確実に進んだ方がよろしいかと」
山かぁ。体力には自信があるんだけど、どうなんだろう。なんとかなりそうな気もするんだよね。
「ここで休憩できるんですか?」
「え、ええ。山頂に村がありますので、いえしかし、山を行くおつもりなんですか?」
「ティーブ、私、山の道で行けると思う?」
「少々お待ち下さい」
私の体力のことは、ティーブが一番わかっている。自分で決めちゃうと間違っちゃうかもしれないけど、他人の判断なら間違いない。
「岩山というのは道になっているのでしょうか?」
「先ほども言いましたが山頂に村がありますので、最低限の道ならございます」
「であれば問題ないかと」
「さ、左様ですか?」
じゃぁ決まりね。あっ、でもルイスさんはどうなんだろう。
「俺も問題ないよ。いい運動になりそうだ」




