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第13話-ラウレリンの鱗-

 「ガーダンの呪い。ルイスさん、どういうことですか?」

 「別に嘘を教えたわけじゃないんだけどね。全部説明しようとすると大変だから。ガーダンの従順さは、人間から見ると理解できないし、呪いと思ってもらって一旦は問題ないはずだ」

 「なるほど。そういうことですか」


 私、何か変なこと言ったのかな。口調は変わらないはずなのに、ラウレリン様の声を聞いていると胸の高まりが止まらない。胸元の黄金の輝きが増していて、鼓動が風となって押し寄せてくる。


 「ラウレリン。当面は俺もファニーさんと魔物を倒して回ろうと思っているだけだ。世界を旅しながらね」

 「その旅の果てに、ルイスさんの望むものはありませんよ」

 「かもしれない。でもそういう問題じゃない」


 鼓動は更に強まり、ラウレリン様は喉を鳴らし始めた。まるで怒りを抑えているようで、後ろを振り向いて全力で逃げ出したくなる。


 どうして?ただゴブリンを倒してみんなを助けたいって、それだけなのに。ルイスさんの望みってなんだろう。もしかして、世界樹の下に行こうとしていることなのかな。他の賢者は反対していて封印までされちゃったことだから、もしかしたらドラゴンのラウレリン様も反対なのかも。


 「あの、良いですか?」

 「もちろんですよ。どうかしましたか、ファニーさん」

 「ラウレリン様は、世界樹の下にルイスさんが行くことに反対なんですか?」


 鼓動が収まった。その代わり黄金の輝きが胸元から口元へと移っていく。気に障ることを言ってしまったのか、思った通り世界樹の下が問題だったのか。1つ言えることがあるとしたら、逃れることなど出来ないということ。


 「ファニーさんの知っていることを、教えて下さいませんか?」

 「あ、あの、その。アキシギルには魔物が増え続けていて、それを止めるために世界樹の下に行こうってルイスさんが言って、でも他の賢者は反対みたいで、それでずっと封印されていたって聞いてます。ぁあっ」


 話し終えた瞬間に、目の前の全てが黄金に染まって、まるで黄金の光に包まれたかのよう。目の前を焦がす黄金に、思わず両手を顔にかざしながら目を閉じてしまう。熱気は押し寄せてくるけど痛くはない。全部終わったみたいだったからゆっくり目を開けると、広がっていたのは私達を避けるように灼け焦げた地面。


 「腹立たしい。このまま灼き尽くしてやりたい気分です。出来ることならそうしたい。ですが、他種族の問題に関与しすぎるのはよくありません」


 膝に力が入らない。私って、まだ生きてるの?


 「俺はともかく、ファニーさんやティーブくんまで巻き込むのか?」

 「巻き込んでいるのはどなたでしょう?」


 突風が吹き荒れ、うずくまって耐える。吹き飛ばされそう。何とか耐えきって見上げる。翼を大きく広げた黄金のドラゴンが空へと飛び立っていた。


 「そろそろ失礼させていただきましょうか。ファニーさん、1つ忠告を。ルイスさんと共に旅をするのであれば覚悟しておくことです。そして、もし耐え難い苦痛を感じたときは私を呼びなさい。こちらを」


 黄金の鱗が一枚。私の目の前に降ってくる。さっきあんな攻撃をされた後で、素直に手を出せるわけない。でも受け取らなかったら、もっと大変なことになる気がする。


 しょ、しょうがないよね。大丈夫だよね。震える手をゆっくりと、鱗の下へと差し上げる。手の平に収まった黄金の鱗は、心地の良い温かみを放っている。


 「あ、あの」

 「そちらを天に掲げて念じなさい。また会えることを祈っています。ルイスさん、次は戦いになることでしょう。それも互角で苛烈な戦いに。では」


 翼が1回大きく羽ばたかれる。再び発生した突風に耐えると、黄金の体は天高く登っていく。小さくなっていくその影を最後まで見届ける。


 「ルイスさん、コレ」


 黄金の鱗を見せる。とっても温かくて、危ない感じはしない。でもドラゴン様にいきなり攻撃されるなんて思わなかったし、この鱗が安全なのかもわからない。


 「持っておいたほうが良い」

 「で、でも」

 「ラウレリンも、世界樹の下に行くことには反対なんだよ。昔からね。まぁでも理不尽に人間を傷つけたりはしないし、さっきのブレスもちゃんと外してしてくれていた」


 そ、そうだけど。周りを見ると灼け焦げた地面が広がっている。もし当てられていたらどうなっちゃうんだろう。


 「気に入られたみたいだし、何かあったら使った方が良いよ」

 「そ、そうかなぁ」


 黄金の鱗の輝きは陰ることがない。いつまでもいつまでも続く輝きを見ていると溜息がこぼれる。だってこんなに綺麗なのに、あんな攻撃されちゃった後だと素直に喜べない。荷物袋の一番奥にしまってしまう。


 「ファニーさん。ラウレリンの言うことは間違ってはいない。俺と一緒に旅をするというのは、それだけ危険なことだ。隣国はともかく、世界樹の下に行くには考え直したほうが良い」

 「いや。そんなこと、最初からわかってました。それでも私は、役に立ちたくて。ダメですか?」


 ラウレリン様の言う通り、私は自分の望みもよくわかっていない。世界樹の下へ行くことは、ルイスさんの本当の望みかもしれないけれど、私の望みではないかもしれない。


 それでも、世界樹の下で魔物が増え続けることを止めるのは、きっと意味のあることだから。私も一緒に旅をしたい。


 「ああ、いや。とても助かってるよ。前にも言ったけど、襲いかかってくるなら防いで倒せるけど、追いかけるのは苦手だからね。よし、進もう。関所の人もそのうち帰ってくるだろうしね」

 「はい。そうですね」


 励まされて関所を目指す。私は、ゴブリンを倒したい。そしてガーダンの呪いを解いて、そして賢者の呪いも解いてあげたい。でも、ルイスさんの本当の望みって何なんだろう。世界樹の下に行くことであっているのかな。


 もっとルイスさんのこと知りたいな。ティーブを呼びながら、頼りになる背中を追いかけていく。

挿絵(By みてみん)

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