第11話-剣と魔法と、弓とドラゴン-
ゴブリンの一団がいるのは、国境の関所の前。通せんぼするように集まっていて、避けて通れそうにない。負けることはないと思うけど、今は戦いたくないかな。狩りで矢を使いすぎちゃったかも。本数が少なくなっちゃったし、矢じりもボロボロ。
「ティーブ。別の道はないかな?」
「申し訳ありません。存じ上げません」
やっぱりダメか。そんなに簡単に入国されちゃったら関所の意味がなくなっちゃう。奥に行けばなんとかなるって聞いたことはあるけど、そこにはもっとゴブリンがいるだろうし、それに密入国だし。
「ん?うーん」
「どうかしました?」
「いやね、関所の人達は何をしてるのかなって」
そう言われればそうかも。関所に来るのなんて初めてだから、いつもどうなのかは知らないけど、自分の国の目の前にゴブリンが集まっているのに何もしないだなんてどういうことだろう。
「私にもわからないですけど、でも放っておけないですよね」
「そうだな。始めよう」
今まではティーブに前に出てもらって、私が後ろから矢を放っていた。でもこれからはルイスさんもいる。狩りをしながら色々と試して決めたことを振り返る。
決まった戦い方は、ルイスさんが最前線に出て攻撃を全て受け止めて、後ろから私とティーブで敵を倒すというシンプルなもの。最初にルイスさんがタンク、ティーブがファイター、私がハンターって言われたときはどういう意味か全然わからなかったけれど、何度か試して形にはなった。
戦い始めるタイミングを決めるのはルイスさん。見計らっている後ろで、いつでも合わせられるように準備しないといけない。
ルイスさんが大きく跳躍しながら飛び出して、敵の目の前に躍り出る。それを見たゴブリンは短剣を持って襲いかかる。その全てを片手で弾き返していた。鏡の魔法が宿った片手は、あらゆる攻撃を反射する。
淡く光るルイスさんの手に、思わず見とれて綺麗だなって心の中でつぶやいてしまう。目が覚めたのは、ティーブも飛び出してゴブリンを攻撃し始めたから。短剣を反射されて困惑しているゴブリンに、容赦なく剣を叩き込んでいる。
あんなに打ち合わせたのに出遅れるなんて。急いで後を追い弓を引き絞る。ルイスさんに群がるゴブリンと、ティーブが追いかけるゴブリン。少し迷ったあとに群がっている中の1体に射掛ける。
続けざまに矢を放ち、全て命中させる。狩りのときにルイスさんからよく当たるって褒められた。半分くらいはそれだけで倒し切ることはできたけど、残りは動きを止めれただけ。でもあとはティーブが順番にトドメを刺してくれる。
ゴブリンの攻撃をルイスさんが全て受け持ってくれるから信じられないくらい楽。結構な数がいるのに、攻撃しているだけでドンドン数が減っていく。
地面が血で染まる頃、残ったゴブリンが喚き散らしながら四方へ逃げ出していく。そんな様子を見ながら、ホッと胸を撫でおろす。
3人とも血だらけになっているけど、怪我をしているってほどじゃない。王都のときとは違って全員無傷。ルイスさんのおかげというのはよくわかっているけれど、思わず飛び上がりそうになっちゃった。
「やりましたね、ルイスさん。ティーブも、ありがとう」
「いやぁ。2人とも強くて助かるよ」
「そうですか?じゃぁ早速行きましょ」
「ちょ、ちょっと待って。服を綺麗にするから」
血だらけになってしまった服を魔法で綺麗にしてもらう。本当に便利だな。他にどんなことができるんだろう。そして関所へと向かう。なんだか様子がおかしいな。門が閉め切られていて、それだけなら良いんだけど人の気配が全然ない。
「すいませーん。誰かいませんか?」
返事はない。それどころか物音一つしないから、やっぱり人はいないみたい。
「ねぇティーブ。関所って誰もいないものだっけ?」
「いいえ。そのようなことはありません」
「そうだよね」
もしかしてゴブリンに襲われたのかな。でも戦った跡が全然ないんだよね。中がどうなっているのか見えないかな。何度も跳び上がって確認しようとしてみるけど何も見えない。
「ルイスさん、どうしよう?」
「まぁ、勝手に入るわけにもいかないからね。近くに休憩所があるみたいだから、使えそうだったら休もうか」
「えぇ?私はまだ大丈夫ですよ。それより、関所の人達がどうなったのか心配です」
たくさん人がいるはずの関所に誰もいない。じゃぁどこに行っちゃったんだろう。勝手に通るのは良くないけど、関所の向こうで倒れているのかもしれない。それなら早く言ったほうが良いよね。
「まぁ、この程度なら強引に通れなくはないけど」
ルイスさんが魔法を使おうとした瞬間、大きな影が差した。振り返ると、空を飛んでいたのは黄金に光り輝く巨大な姿。陽光を反射し強烈な光を放つ。その一挙一動に、周囲の空気が張り詰めていく。
「それには及びませんよ」
見た目と違って優しい声。さっき倒したゴブリンをブレスで灼き払い、地響きとともに着地した。




