表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/90

第9話-旅立ち。世界樹の下へ-

 「それじゃ行こうか。でも旅支度はちゃんとしないとね。ティーブくん、長旅の支度はできる?俺は自分で用意するけど」

 「はい。もちろん可能です」

 「じゃぁ頼もうかな。ファニーさんもそれでいい?」

 「大丈夫です」


 ルイスさんは早速部屋から出ていっちゃった。私達も早く旅の身支度をしないと。まずは自分の部屋にあるもので、服とか装備とか収納袋。たまに狩りに行っていたから、この辺は大丈夫。問題はお金。金庫に行けばいくらでもありそうだけど、やっぱり手を出すのは良くないよね。自分のお金を使わないと。


 あとは食べ物とか、できれば馬が欲しいかな。部屋に残っていたパンを食べてからドアノブを回そうとして、また回せない。部屋の外にあるのは、きっと見たくないものばかり。唾を大きく飲み込んで、胸を抑えながら一歩踏み出す。


 目の前に広がっていたのは城の惨状。至る所に血が飛び散って、物色されて物が散乱して、死臭が漂っている。喉元までなにかが上がってくるけど、なんとか飲み込んで廊下を進む廊下を進む。生き残った人はいないかなって淡い希望を持って、ゴブリンが残っているんじゃないかって恐怖をもって。


 生き残りどころか、物音ひとつしない。いつもなら人が行き交い、会話の絶えない城の廊下。今はまるで廃墟のよう。生き残りがいないことの寂しさと、ゴブリンがいないことの安心感でごちゃまぜの気持ち。


 「ティーブ。食料庫に行きましょ。残っているならそこしかないし」

 「かしこまりました」


 誰もいない城の中を歩いていく。


 食料庫があるのは、城の1階の一角。この様子だと、食べ尽くされちゃっているか持ち出されちゃっているか。何かが残っている気はしないけど、そこ以外にまともな食べ物はない。


 あんまり期待していなかったけど、本当になにもないとがっかりする。厩舎も見てみるけど、馬なんて残っているわけない。ルイスさんはどこでなにを探しているんだろう。


 しょうがないから城の外に行くけど、収納袋はほとんど空っぽのまま。誰もいない、静寂に包まれた街。城と同じことになっているんだって、理解しているけど実感できない。今でもまだ、受け入れきれていない。


 「ファニーさん。準備は終わった?」

 「あっ、はい。でも食べ物がなくて、それにこれは」


 ルイスさんは先に外に来ていたみたい。食べ物を持っているみたいだけど、どこから持って来たんだろう。もしかして城下町の家の中から持ってきたのかな。


 「これ?悪いとは思ったんだけど、家の中を勝手に漁らせてもらってね」

 「やっぱり、誰もいないんですか」

 「まぁ、その。あんまり気を落とさないで」


 いつもなら大勢の人で賑わっているはずなのに、今は誰もいない。私が生まれた国の、私が育った街。知っている人がたくさんいた街。あと3年だったかもしれないけど、その3年を過ごすはずだった街。


 「行きましょ。ゴブリンを止めないと」

 「ああ、もちろんだ」


 もう二度と、誰かが殺されることがないように。悲しい思いをする人がいなくなりますように。魔物が呪いによって生まれたのなら、呪いを解く方法もきっとあるはずだから。


 「ティーブ。これからもよろしくね」

 「はい。もちろんでございます」


 ずっと一緒にいてくれた、私を助けてくれたティーブ。呪われているって気付けなくてごめんなさい。てっきり従者としてふるまっているだけだと思っていた。周りにそうさせられているって思い込んじゃってた。でも私が、その呪いを解くから。その後はきっと、本当の友達になれるから。


 「ルイスさんも、よろしくお願いします。私、知らないことが多いけど、みんなの役に立ちたいんです。賢者の呪いも、私が解いてみせますから」

 「うん、そうだね。そうなったら嬉しいよ」

 城の外の、街道をルイスさんの背中を追いかけて進む。その親切に甘えている。なのに私は、ルイスさんのことを何も知らない。


 聞きたいけど、聞いちゃっていいのかな。ずっと封印されていたわけだから、まだなにもないかもしれない。でも知りたい。早歩きでルイスさんの隣に行って、思い来って聞いちゃおう。


 「あの」

 「ん?」

 「ルイスさんは、リーフ王国に着いた後どうするんですか?」


 目をパチクリさせている。やっぱり聞いちゃいけないことだったかな。


 「あっ、すみません。急に」

 「いや、別に。なんて言ったらいいのかな。世界樹の下に行きたいんだけど、今は無理なんだよね。ずっと封印されていたから、どうにも調子が出ない。だからしばらくは世界を旅しようと思っていた。だから隣国に行くというのは問題ない」

 「あ、ありがとうございます。えっと、世界樹の下に行けば、魔物を減らせるんですか?もしかして呪いも全部解くことができるとか?」


 勢いで呪いを解くとか言っちゃったけど、どうすればいいのかなんて全然わからない。でも私にできることなら、手伝えることならなんでもしたい。


 「どうだろう。きっとそうだと考えてはいるんだけど、確証はない」

 「そう、だったんですね。リーフ王国で用事を終わらせたら、私も一緒に行っていいですか?」


 あれ?私、何を言っているんだろう。でも私は、リーフ王国に助けを求めて、それからどうするんだろう。上手くいくかわからないけれど、どうなるのかわからないけれど、全部思い通りになったとして、リーフ王国でまた王族として暮らすのかな。


 「うーん。そこまで急いで決めなくてもいいんじゃないかな。隣国まで長いんだし、それに王都まで行きたいんでしょ?それが終わってからでいいんじゃない?」

 「そ、そうですよね」


 私って、本当にいきなりなにを聞いているんだろう。 


 賢者の呪いっていうのもよくわかんない。あんまり話したくないみたいだけど、一緒に旅を続ければ、きっといつか教えてくれるよね。


 私と、ガーダンと、賢者。魔物の呪い、ガーダンの呪い、賢者の呪い、そして人間の呪い。色んな呪いを解くために、そして世界がもっと良くなるように。


 私が生まれ育った街を出る一歩が、世界を救う一歩になりますように。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ