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役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 59

 机に倒れるように眠り、水面を漂うような浅い眠りを繰り返す。ここしばらくウルエは満足に眠れていない。仮想戦闘の回数も四桁に到達していた。結果はいつもおなじで、エストックを突き立てるところまではいけても、突き刺すところまでいかない。倒すまでに至らない。

 一歩、あと一歩なのに、その一歩がどうしても見つからない。

 ウルエは欠伸を噛み殺しながら、伸びをするように天井へ向けて両手を突き出した。

 肩に掛けられていたブランケットが床に落ちていく。

「……ん?」

 誰が掛けてくれたのだろう、と首を捻り、部屋のなかを見回して、すぐに犯人を見つけた。サイドテールの茶髪、濃紺のローブで身を包んだ女魔導士。

「ありがとう、パメラ」

 パメラはベッドに腰掛けたまま眠りについたようで、上半身はベッドに横たえているのに足だけ外にはみ出していた。ウルエは起こさないように、パメラの足をベッドのうえに乗せていく。このまま寝ていたら寝違えるかもしれないから。

 パメラのあどけない寝顔を見ているうちに、出会いから一緒に暮らすようになるまでの出来事を思い出して、ウルエは思わず苦笑した。アイギスの訓練に現れてゴーレムを操りながらルーデシアを応援していた、エーテルコントロールの天才。メンブチハラハで面識もないのに『邪魔!』と怒鳴られたり、かと思えば純白のローブに染みついたルーデシアのにおいを頼りに追いかけられたり。

「あげく、空からゴーレムで襲われたり」

 くすくす、とウルエは笑う。

 空からゴーレムで襲うなんて、今でも信じられない。メアリの言うように、国中探してもパメラほどエーテルコントロールに優れた者はいないだろう。優雅にゴーレムを動かして大道芸でもやれば、国王お抱えの大道芸人になるのも夢ではない。ゴーレムを空に飛ばすのは、そのくらい常識外れのことだ。

 ふいにウルエは表情を引き締めた。

「空から、ゴーレムで……。もしかしたら、この作戦なら」

 どうしても見つからない、あと一歩を見つけたかもしれない。

 ウルエは机に向き直り、瞼を閉じた。漆黒の世界にすぐに風景がうきあがり、いつもの位置から漆黒のドラゴンへ戦いを挑んでいく。いつもと違うのは、アイギスにウルエとパメラを入れた五人組パーティーで挑んだこと。全滅しては調整を繰り返して、三度目の仮想戦闘でフリッサの突き立てたエストックが漆黒のドラゴンの眉間を貫いた。

「……勝て、た」

 信じられないと声が震えた。

「勝てた、勝てた、勝てたんだ」

 ウルエは噛み締めるように繰り返した。

 もちろん仮想戦闘の結果で、本当に討伐した訳ではないけれど、はじめて漆黒のドラゴンに勝機が見えた。喜びに全身が打ち震えていく。あどけないパメラの寝顔が勝利の女神のように思えた。

 ウルエは机の端によけていた漆黒のドラゴンの資料を掻き集めて、羊皮紙の束を抱えて部屋から出ていく。勝つための作戦はうかんだ。でも、準備するものが多く、悠長にしている時間はない。まずはギルドマスターのサムルクに相談して、手を貸してもらいたい。ウルエは起きたばかりの気怠い体に鞭打つように、ギルドを目指して走り出した。

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