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役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 56

 次の日、資料の書き出しを終えたウルエは、ペンをスタンドに置いてから瞼を閉じた。

 闇に閉ざされた視界に、朝日が昇るように風景が色づいていく。しばらくして現れたのは広々とした草原と漆黒のドラゴン。全長一五メートルは平均的なドラゴンの大きさで、爬虫類の身体に目をひく大きな翼。翼はあるものの空を飛ぶことは少なく、動きも鈍足。そういう欠点はあるけれど、ドラゴンは魔獣の王と呼称されていた。理由は単純で、桁外れのエーテル保有量、つまりは魔導攻撃の強さによるもの。

 漆黒のドラゴンから正面一〇メートルほどの位置に武器を構えたフリッサとシャルクスを配置して、ルーデシアはさらに五メートル離れた後衛という布陣から仮想戦闘を始めた。

 勝てないと一度は諦めた敵。

 弱点は眉間。いくら漆黒のドラゴンといえど眉間に剣を突き刺せば絶命するだろう。資料は眉間に剣を突き立てたものの、オリハルコンと同等の硬さがあり、武器のほうが破壊された、と記されていた。

 はじめに考えたのは、漆黒のドラゴンを倒すために武器をどうするかだ。

 合金を含めてオリハルコンより強度に優れた金属はない。金属が駄目なら、次に考えるのは魔獣素材。一番に候補になるのは、ドラゴンを素材に使うこと。ドラゴン素材で最も強度があるのは逆鱗だ。逆鱗はエーテル変色が起きやすく、黒に近いものを選んで武器にすれば、漆黒のドラゴンを討伐可能な唯一の武器になるだろう。

 数度の魔導攻撃であれば、ルーデシアの魔導壁で止められると考えていた。本気を出せば一撃でたやすく貫くだろうけれど、蟻を殺すのに本気を出す人なんていないように、いくらか手を抜くはずだから。

 仮想戦闘では、ルーデシアの展開した魔導壁を五発目で貫通した。

「駄目だ、勝てない」

 一度目の仮想戦闘の結果は、近づくことも許されずに全滅。

 一度瞼をあけてから一息吐いて、二度目の仮想戦闘を始めた。結果は全滅、全滅、全滅――。一〇〇回ほど繰り返して、弱点の眉間にフリッサが到達した回数は三度。一度はエストックを突き立てたものの、硬化した皮膚と眉骨のせいで絶命までは至らない。

「ここから、どうすればいい」

 資料でも眉間に剣を突き立てるところまでは達していた。

 問題はここからだ。漆黒のドラゴンを討伐不可能とウルエが諦めていたのは、どう考えても剣を突き刺すことが出来ないから。人のちからで突き刺せるような柔な硬さではない。二〇メートルの巨大なベヒーモスが全速で突進して、エストックの一点に突撃すれば突き刺さるかもしれない。そういう次元の話。

 あと少しで勝てるのに、どれだけ探しても少しを見つけられない。

 ウルエは答えの出ない問題を延々と考えながら、仮想戦闘の中で全滅を繰り返した。

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