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役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 50

 欠伸を噛み殺しながら、パメラと並んで凱旋通りを歩いてく。

 ウルエは相変わらずの出不精で、外出は食事のときくらいだ。そのくせ顔見知りはやたらと多く、数メートルおきに「おはよう」「今日も眠そうね」「あまり無理すんなよ」と一言二言、声を掛けられて、ウルエは欠伸まじりに「ふあい」と気の抜けるような返事をしていた。

 ギルド推奨作戦の大半を作り替えたとはいえ、ウルエの知識の一握りでしかない。ウルエの知識は祖先が半生をかけて遺した魔獣書籍、一年程度では書き足りない。はやく仕上げれば、それだけ魔獣の犠牲者も減るため、無理しすぎない程度に無理していた。

 パメラに腕を引かれるまま、食事処、クプンマに入店。

 クプンマはハルジオンの食事処でも指折りの高級店。壁の大きな絵画を照らすようにフロアライトのランタンが配置されて、イスは背ボタン締めの黒革、六人掛けのテーブルは高級木材の一枚板。テーブルの中央には料理の待ち時間に摘まむように、ブドウやベリーなど一口サイズの果物を入れた籠とナッツ類を入れた籠が置かれていた。

 煌びやかな内装を珍しそうに見回していたウルエに、パメラは耳打ちした。

「あんたと一緒に食事を摂りたい人がいるの。食事代はもちろん、向こう持ちよ。クプンマで奢りなんて、羽振りがいいにも程があるわ」

 約束を取りつけての食事も稀にあり、ウルエのおまけでパメラもいい思いをしていた。今回は大当たりだ。上機嫌なパメラに、ウルエも賛同するように頷く。

「支払いが怖くて、奢りじゃないと絶対に入れないよ。感謝しないと」

「ああ、あの人たちよ」

 ウルエのローブをちょんちょんと引っ張りながら、パメラは一番奥のテーブルを指差した。どんな人だろう、と確認した瞬間にウルエの笑顔は凍りついて、こそこそと目立たないようにパメラの背中へ移動していく。

 テーブルに着いていたのは、戦士の青年、厳つい髭もじゃの戦士、りゅうとしたローブを纏う妖艶な女魔導士。フリッサと出会うまえに、仲間に入れてください、と頼んで、手ひどく断られた三人組パーティーだ。

 役立たずには冷たく、役に立つとわかれば手のひらを反す。

 そう理解していても、嫌な記憶ほど鮮明に残り、思い出したくないのに消えてくれない。自然と芽生えた苦手意識。一緒に食事をしても、お互いに楽しい時間にはならない。

「僕は、遠慮します」

「え、でも、ウルエがいないと奢りが」

 高級料理にありつけると喜び勇んでいたパメラは慌てふためく。

 くるりと踵を返したところで、りゅうとした女魔導士が気づいて勢いよく立ち上がり、イスが重たい音を立てて倒れた。店内の注目が一斉に集まる。女魔導士は構うことなくウルエへ駆け寄り、少年の背中に深々と頭をさげた。

「ごめんなさい。あなたのことをなにも知らないで、ひどい言葉で罵った。許せないと思う。でも、どうしても謝りたくて」

 許されること前提の謝罪なんてパフォーマンスでしかない。彼女の謝罪からは、許されて当然という傲慢さは感じられず、許されなくても謝りたいという気持ちが表れていた。

 青年戦士と髭もじゃの戦士も女魔導士を追いかけて、並んで頭をさげた。

「おれたちも、知識を軽視して、ウルエの話を聞こうともしなかった。すまない」

 しばらくして顔を上げた女魔導士はパメラの手をとり「わたしたちと一緒に食事だと、美味しいものも美味しくなくなるから、好きなものを食べて」と金貨五枚を握らせた。

 ウルエは大きく息を吐いて振り返り、パメラの手から金貨を奪い、女魔導士に押しつけた。受け取ってもくれない、と女魔導士は悲しそうに目を細めて眉尻をさげた。

「奢らせたうえに、金貨まで頂けませんから」

 女魔導士の目が驚いたように丸くなり、ウルエの手を握り「……本当に、いいの」と呟くように尋ねた。

「いくら頼んでもいいなら」

 こくこく、と女魔導士は頷いて、青年戦士は「大食漢には、見えねえけどな」と笑う。

「パメラもありがとう。わたしは、ショルテ、魔導士でパーティーの指示役も兼任してるんだ。後衛だと戦況も広く見れるのと、前衛には戦いに専念してほしくて。数日かけて魔獣の知識を詰め込んでから、討伐依頼を受けるんだけど、数日のうちに他のパーティーに先を越されることも多いのよ。ウルエの作戦のおかげで、みんな我先にと依頼を受けるから」

 弾むような声で捲し立てた女魔導士のショルテに、ウルエは苦笑いした。

「あの、そういう話は、食べながら落ち着いて」

「あ、うん、そうだよね。ごめんなさい」

 ショルテは恥ずかしそうに頬を火照らせて、従者のようにウルエを席まで案内していく。

 イスを引いて座らせると、倒したイスを直して、ウルエのすぐ近くに配置して座り、ナッツやベリーを食べさせようとしていた。今のショルテは妖艶な女魔導士というより、世話焼きな親戚のお姉さんだ。

 ショルテのようにパーティーの指示役は魔導士が兼任することが多く、指示専門のメンバーをパーティーに入れることはない。ウルエ並みの知識と判断、臨機応変に指示が出せるならともかく、知識の武器が浸透してまだ一年。現状はまだ、ウルエの知識と作戦に頼りきりだ。

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