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役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 48

「なあなあ、ウルエ。キマイラの討伐で質問があるんだけど。パーティーの構成が剣士三人のみ。魔導士のいないパーティーだと、どういう作戦で戦えばいいんだ」

「ああ、それなら――」

 ウルエは五〇人あまりの冒険者を引き連れて、質問されるたび助言していた。「この作戦で倒せるはずです」と締め括ると「ありがとな。ウルエも困りごとがあれば、遠慮なく相談してくれ。手を貸すから」と手を振りながら去っていく。

 一組パーティーが去れば、順番待ちをしていたパーティーが質問をしていく。

 男女の二人組パーティーがウルエを左右から挟むように移動して「ヘルハウンドを作戦通りに倒したんだけど、数頭しか仕留められなくて。群れているから難しいんだけど、安全に多く倒すには、どうすればいいのかな」と女性は甘えるような声で尋ねて、ウルエの右腕をとり豊満な胸に押しあてるように抱きしめた。反対側でパーティーの相棒が「なんだその声、似合わねえ」とけたけた笑う。

「……ええと、距離が近いです」

 腕を抱きしめられたまま、ウルエは体を仰け反らして距離を取った。

「あ、ごめん」

 色仕掛けに失敗した女性は、パッと抱きしめていた手を離して「だせえ、失敗してやんの」と笑う相棒に、背中から蹴りを浴びせた。ウルエと親しくしておきたい、そういう打算から色仕掛けしたのだろう。

 パーティーの遠慮のないやり取りにウルエは微笑んで、空気を換えるように咳払いした。

「ヘルバウンドを安全に、多く倒す作戦ですね。それなら――」

 役立たずには冷たく、役に立つとわかれば手のひらを反す。命を懸けて魔獣と戦うのに意地や矜持はいらない、邪魔なだけだ。ウルエも過去のことは水に流して、惜しみなく作戦を披露した。

 ウルエたちの集団からパメラは数歩距離をとり、ウルエの作戦に耳を傾けていた。

 床に散乱した書き損じの羊皮紙、アイギス目指して部屋に引きこもると宣言したこと。そういう諸々が一本に繋がり、同時にウルエを遠く感じた。ウルエをパーティーに入れたアイギスは、誰よりも早くウルエの真価に気づいたのだろう。金貨八〇〇〇枚を支払い、探すだけの価値。

「……わたしとは、違うんだ」

 アイギスの見送りのときに、もとの出来が違うとウルエを同列にしていた。仲間を見殺しにした役立たずの魔導士、おなじように役立たずのウルエ。ウルエをよく知らないで役立たずと決めつけて、心の拠りどころにしていた。アイギスが仲間に入れた理由を深く考えようとせずに、目を背けていた。おなじ役立たずでいて欲しいから。

「そういえば――」

 と、ウルエたちの集団から声がした。

「アイギスがベヒーモスを十八秒で仕留めたのも、バジリスクを逃すことなく仕留めたのも、ウルエの作戦のおかげなんだろう」

 確信したように尋ねた声。

 パメラは思わず、お願いだから違うと答えて、と胸中で祈りを捧げていた。

「どちらも作戦は伝えました。……でも、僕の作戦ではベヒーモス討伐に三〇秒は必要で、一八秒で倒したのは、アイギスが優秀だからです」

 ウルエたちの集団が一斉に沸き立ち、口々にウルエを称賛した。

 パメラは踵を返して、ウルエたちの集団から離れていく。

「最低だ、わたし」

 多くの人から必要とされるのはいいことなのに、役立たずのままいてほしい。そんな最低なことを願いながら、ひとり勝手に裏切られたような気持になるなんて。

 三人で暮らす住宅へ戻り、応接ルームを足早に抜けて二番目の部屋に入り、ベッドに座り膝を抱えた。窓掛けのおりた部屋は薄暗く、パメラは抱えた膝に顔を埋めて小さく呟いた。

「……強く、なりたい」

 ――と。

 変われるなら変わりたい。肝心なときに戦えない臆病者より、格上の魔獣にも果敢に立ち向かう、幼馴染の青年とアイギスを目指していた少女のように。かつての仲間、グルズとアキュリスのように――。

「強くなりたいよ」

 声と一緒に、目尻から涙が溢れた。

 パメラは膝に顔を埋めたまま、声のかぎり泣き叫んだ。強くなりたい、強くなりたい、強くなりたい、と胸中で繰り返しながら。

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