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役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 46

 ウルエの名前は、ハルジオンの人達の記憶から消え始めていた。

 パーティーを抜けてから半月、ウルエの名前は過去のものとなり、代わりにアイギスの活躍が世間を賑わせていた。ベヒーモスを一八秒で討伐して、数日前にバジリスクを二八秒で討伐したからだ。

 バジリスクなどの翼魔獣は不利になると空へ飛んで逃げていく。バジリスクのエーテルを追跡していくことも可能だけれど、目視とおなじように遠く離れたら見失い、追跡を一度でも途絶えさせるとおなじく見失う。そのため追跡中の魔導士は不眠不休。魔導士の負担が大きいため、翼魔獣は強さよりも面倒くさい魔獣の代表格だ。バジリスクは翼魔獣のなかでも最上位で、討伐するまでに幾度も攻撃と追跡を繰り返さないといけない。バジリスクを二八秒で討伐したということは、一度も逃がすことなく仕留めたことを意味していた。

 ベヒーモスもバジリスクも、本来なら数日かけて討伐していた上位魔獣。ベヒーモスを瞬殺したのは、まぐれではないと知らしめた。

 もちろんギルド推奨作戦で倒したわけではなく、ウルエの作戦を用いてだ。

「凄いよな、今のアイギスは」

「ベヒーモスを一八秒で仕留めた次は、バジリスクを一度も逃がすことなく仕留めるんだからな」

 ハルジオンの人々はアイギスの活躍を口々に褒め称えた。

 おなじ頃、ハルジオンギルドに詰めかけた冒険者は、アイギスの活躍とは違う話題で盛り上がり、金袋片手にほくほく顔で明るいうちから街へ繰り出した。いつもなら朝に討伐依頼の受注ラッシュがあり、昼は書類整理などの雑務をのんびりこなして、日が傾いてから徐々に討伐報告が増えていく。……というのに、今日は昼にもならないうちから討伐報告が相次いだ。

 ギルド職員は多事多端、昼休憩を返上して仕事をこなしても間に合わず、手透きのギルドマスターまで事務仕事に駆り出されていた。

 討伐報告の順番を待つあいだ、上機嫌なパーティーの声があちらこちらから聞こえた。

「キマイラを一時間で倒すなんて、アイギスでも無理だろうな」

「作戦ひとつで、僕たちに出来たんだから。本当に凄いよ」

「なにを他人事みたいに」

「でも、とても現実とは思えないんだもん」

 興奮未だ冷めやらず。

 報告を終えたパーティーは大半が街へ繰り出したけれど、少数ながら二度目の討伐依頼を受注したパーティーもいた。魔獣との戦いは基本的に消耗戦だ。満身創痍で討伐して、大きな怪我がなくても数日は療養に充てた。一日に二度も討伐依頼を受けたパーティーは、ハルジオンギルドの歴史上はじめてのこと。しかも片手で足りない数のパーティーだ。

 二度目の依頼を受けたパーティーは、今日から試験導入されたハルジオンギルド推奨作戦をギルド職員に読み上げてもらい、疑問点があれば質問して、念入りに確認したのち、凱旋通りを抜けて魔獣討伐へ向かう。

「討伐した魔獣の収受が終わりました。こちら、討伐報酬の金貨三〇枚になります」

 討伐確認を済ませて、報酬の入れられた金袋を差しだす。三人組パーティーの青年戦士がギルド職員の手から奪うように受けとり、上機嫌に口端を上げた。ひとりあたり、金貨一〇枚。堅気なら半年働いた給金とおなじくらいの金額を、半日で手に入れた。しかも五体満足、怪我さえせずに。思わず笑いたくもなるだろう。

「しかしまあ、よくあんな作戦を思いつくな。おかげで、俺たちは楽に倒せたんだけどよ」

「誰の考えた作戦なんだ」

「考えた奴に、果実酒の一杯でも奢らないとな」

 青年戦士の左右から、パーティーメンバーも顔を出して尋ねた。

 ギルド職員は報告種類を整理しながら、三人組パーティーを一瞥して大きく息を吐いた。作戦を考えたのは誰なのか、と報告の度に尋ねられるものだから、考えた人の名前を大きく貼り出しておけばいいのに、とすら思う。

「考えたのは、ウルエ様ですよ。……討伐報告がまだのパーティーは、こちらへどうぞ」

 一度は記憶から消えかけたウルエの名前は、この日から、最熱したように広まり始めた。ウルエとフリッサの出会いが歴史の転換点のひとつなら、歯車は確実に動き始めていた。

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