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役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 36

「……あ、あいつは」

 魔導士に手を引かれていくウルエを見つけて、パメラは忌々しそうに呟いて舌打ちした。パメラと並んで歩いていた女性も眉間にしわを寄せて「ああ、役立たずのウルエ様か」と軽蔑するように吐き捨てた。

「ウルエ様? あいつの名前?」

「知らないの。街一番の有名人なのに」

 首を傾げたパメラに、女性は驚いたように言う。

「有名人……?」

 首を反対に傾け直しながら尋ねたパメラを、女性は哀れむように見据えた。

「友達いないから知らないのよ。ハルジオンの街は今、彼の噂でもちきりなんだから」

「……い、いるわよ、友達くらい」

 詰まりながら答えたパメラに、女性は意地悪く微笑みながら尋ねた。

「いるんだ。……へえ、誰かな、パメラの友達になるような奇特なヤツは」

「あんたでしょう、ルーデシア姉さまでしょう。……他にも、たくさん」

 嘘は吐いていない。たくさん、で一括りにした友達は、毎朝尋ねてきては餌をよこせと鳴く三羽の友鳥。餌を食べたら、どこかへ飛んでいくけれど友達だ。ピヨ、ピヨピヨ、ピーヨと名前までつけた。小鳥言でピヨピヨ話していたら、賃貸宿の主人に見られていて「違うの、これは……。名前、そういう名前なの」と誤魔化すために名前をつけた。小鳥言で心置きなく話せるので、いい名前だと思う。

「ルーデシア様を図々しくも友達と呼べるの、凄いわ。でも、他の人より可愛がられて。……うーん、煙たがられているのは確かよね」

「でしょう」

 胸を張り自慢気な顔をしたパメラに「どうして嬉しそうなのよ」と女性は呆れ顔をした。その呆れ顔をふいに曇らせて女性は言う。

「……ルーデシア様も長くないかもね」

 長くないとはつまり、魔獣討伐に失敗して未帰還者入りすること。

 アイギスは街で最強のパーティー。ただ、五体満足でアイギスを引退するのは、一割にも満たない。アイギスに任命されて一年で半数が未帰還者入り、あるいは手足を失う。そのためアイギスに任命された日に、次代のアイギスの任命も併せておこなう。

 アイギスが魔獣討伐に失敗したときは、次代のアイギスに討伐命令を出すのではなく、他の街からアイギスを集めて依頼するという仕組みだ。

 パメラは女性に詰め寄り「どういうことよ!」と唾を飛ばしながら叫んだ。

「汚いなあ、もう……。アイギスがパーティーに入れたのよ、あの、ウルエとかいう役立たずを」

「……なによ、それ」

 パメラは呟いて、昨日のことを思い出していた。メンブチハラハでのことだ。ルーデシアの香りの染みついたローブをウルエは着ていた。仲間から頂いたもの、とウルエは答えた。仲間とはルーデシアのことだ。

 パメラは踵を返す。

 人ごみに消えたウルエの背中を睨みつけながら、早足で追いかけていく。

「どうしたのよ」

 女性は追いすがり、パメラの肩に手を置いた。

「アイギスの仲間なら、わたしくらい片手で捻れるわよね。本当に役立たずなのか、確かめてやるわ。役立たずなら、追い出してやるんだから」

「やめときなよ。ルーデシア様に嫌われるよ」

「やめない、絶対に。パーティーに役立たずがいたら、みんなに迷惑が掛かるから。役立たずのせいで、みんな死ぬから。お姉さまが死ぬよりも嫌われたほうが、一〇〇億倍ましだから」

 パメラは女性の手を払いのけて、走り出した。

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