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役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 35
フリッサはローブで変装してから、ウルエの賃貸宿の扉をノックした。
ドレスから着替えたのは、泣いて腫れた目を見られたくないからだ。コンコンと二度、しばらくして二度、ゴンゴンゴンと三度、ドンドンドンと三度。合計一〇度ノックしたところで「……はーい、起きました。今起きましたからー」と眠そうな声で返事があり、二〇秒ほどして扉が内側へ小さくひらく。その僅かな時間さえ待てないというように、フリッサは扉に体当たりして体ごと滑り込ませるとウルエの胸に飛び込んだ。
ギルドマスターとの交渉をいい形で終えて、一睡もしていない疲れから、ウルエは今まで寝ていた。突然のフリッサの来訪と行動に眠気は一気に吹き飛んで、ウルエはフリッサの肩に手を置くと引き離す。
「……あ」
「ねえ、どうしたの、フリッサ」
フリッサの寂しそうな声は、ウルエの声に掻き消された。
「なにか、あったんだよね」
フリッサはなにも答えない。無言のまま肩に置かれたウルエの手首を掴んで、外へ連れだす。尋常ではないフリッサの雰囲気に、ウルエは大人しくされるがまま従い、なにも尋ねずに凱旋通りを歩いていく。街中を歩くだけで敵意や嫌悪の眼差しにさらされて、気が休まらない。もちろんフリッサの手を振りほどくなど出来やしない。




