役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 25
「明日、暇ですよね」
水浴びを終えたフリッサは、髪から水を滴らせながらウルエへ駆け寄ると開口一番に尋ねた。笑顔のはずなのに、予定があります、と答えた瞬間に恐ろしい出来事が起こりそうな、溢れんばかりの威圧感を立ち上らせながら「明日、暇ですよね」と繰り返した。
尻餅をついたウルエは威圧から逃れるように顔をそらして、素振りの最中のシャルクスに、助けて、と心のなかで訴えるも届かない。
「明日は露店市の日です。ウルエは街にも詳しくないですよね、いろいろなところを案内しますよ。希望があれば、どこへでも。朝から夜まで、ええ、それはもう一日中でも構いません。……明日、暇ですよね」
ウルエは明日の予定を思い出すより先に、こくこく、と頷いていた。
「暇、暇です、予定なんてありません」
「よかったあ」
ウルエが答えた瞬間に威圧感は消えて、フリッサは花が咲くように微笑んだ。
ウルエの横に腰をおろして、飛びつくように腕を組んで、
「あのあの、もしよろしければ、一緒に露店市をまわりませんか。美味しい食事処にも案内しますよ。他にも可愛い小物店なんかも。ウルエは貸本屋のほうがいいですか。食べられないものとか、苦手なものはありませんか。あと、ええと――」
早口のフリッサに、ウルエは思わず小さく笑う。
フリッサは我に返ると、ウルエの腕から手を離して恥ずかしそうに俯いた。予定はないと言われて、驚くほどに舞い上がってしまった。
「待ち合わせは、どこにしますか」
ウルエの声に導かれて、フリッサは顔をあげた。
ウルエは顔を赤らめて「明日、一緒に露店市をまわるんですよね」と言う。フリッサは大きく頷いた。
「はい、いつものところに、九時に集まりましょう」
約束を取りつけるとフリッサは立ち上がり「また、明日」と一礼して、街のほうへ駆け出した。凱旋通りに着く頃には髪も乾くだろう。




