役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 24
訓練を終えて、フリッサとルーデシアは近くの河水で汗を流していた。
いつも水浴びに使うところで、堰堤を設置しているため幅広の滝のように水が流れて、滝壺にあたるところは抉られたように深く流れも穏やかだ。フリッサは一度深くまで潜り、ひと泳ぎして息が苦しくなると足を着く。水深は肩くらいまであり、ひたいに張りついた銀髪を掻き上げた。
「久々の訓練なのに、元気ね」
声を掛けたのはルーデシア。彼女は浅瀬に座り、手のひらで水をすくい体に当てながら汗と汚れを落としていた。ルーデシアの近くにメアリもいて、ひとりだけ服を着ているため水には入らず、岩のうえに腰掛けて足だけを浸して水を蹴り上げていた。
「そうでもないですよ」
フリッサは答えながら、仰向けに浮いてちからを抜いた。日は傾き始めているけれど、まだまだ空は青く、小鳥の囀りも川瀬のせせらぎも心地よい。
「ウルエを探していたときも、余暇に稽古はしていましたから。でも、長時間の訓練は久々で、このまま眠りたいくらいです」
訓練で火照った体に河水の冷たさは程よく、フリッサは大きく欠伸した。
「あ、そういえば、ウルエのことなんだけど」
なにかを思い出したようなルーデシアに「なんですかー」と、のんびりした声でフリッサは返した。
「もしかして、魔導士の恋人でもいるの」
世間話のようにルーデシアが訊ねると、メアリはむせて、フリッサは水飛沫を上げて溺れているように足掻く。
「なにしてんのよ」
ルーデシアは嘆息して指を鳴らした。
フリッサの足もとの土が盛り上がり、水中から救いだす。土魔導に助けられたフリッサは全裸のままルーデシアに駆け寄ろうとして、土塊から落ちるとまたしても水飛沫を上げた。今度は溺れることなく足を着いて、水中を歩きながらルーデシアに近づく。
ルーデシアの眼前に仁王立ちした全裸のフリッサは腕まで組んで、怒気をはなちながら「どういうことなんですか」と問い詰めた。フリッサの覇気に気圧されて、ルーデシアは思わず仰向けに倒れると、フリッサは馬乗りになり「どういうことなんですか、ルーデシア」と大声で繰り返した。
「ど、どういうこと……?」
「誤魔化さないで! ウルエに、魔導士の恋人がいるという話です」
「ええ、と……。恋人なのかは、わかんないんだけど。仲良さそうに手を繋いでるところを見たのよ。相手の顔はフードで見えなくて、ああ、ありふれたローブを着ていたわ。歓迎会のあとなんだけど、凱旋通りから外に出ていくところみたいで。だから、魔導士の恋人がいるのかなーなんて」
仲良さそうに手を繋いでいるところを見た――と、ここでフリッサの思考は完全に停止した。ありふれたローブを着ていたことも、凱旋通りから外に出ていくところも、耳の右から左へ抜けていく。
「あ、あのう、どいてくれると嬉しいんだけど」
全裸でルーデシアを押し倒していたフリッサは立ち上がり「わたしも、手ぐらい繋いだことあるもん」と謎の対抗意識を燃やして、足音を響かせるようにウルエとシャルクスのいる訓練広場へ歩き出した。
「な、なんなのよ、もう……」
「好きなんですよ、ウルエ様のことが。嫉妬なんて可愛らしいですよね」
「ああ、そういうこと」
ルーデシアが納得したところで「あれ、なにか忘れているような」とメアリは振り返り、フリッサの後姿を見て悲鳴をあげた。
「わわわ、フリッサ様、全裸だから。服、服着るの忘れていますよ!」




