役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 17
「つまり、仲間に入りたいのよね」
ルーデシアは一言で纏めると、途端にウルエは赤面して違うとばかり首を振り、
「そうじゃなくて、ルーデシアと一緒に戦いたいんです。魔獣討伐の依頼を受けて、戦いたいという意味なんです。仲間に入りたいんです。仲間に入りたいという意味じゃないんです」
「なんなの」
誤解されないように必死で説明するけれど、ルーデシアは首を捻るばかり。仲間に入りたい、の意味を勘違いした原因のシャルクスは、ひとり腹を抱えて噴飯していた。
「一緒に戦いたい。そういうことよね」
「はい、そうです」
こくこく、と首を痛めないか心配になるほどウルエは激しく頷く。
ルーデシアは黙り込んで、ローブから左手を出すと軽くにぎり顎に添えて、考えるような仕草をした。駄目ですか、と心配そうにウルエの目が頼りなく揺れていた。
「うーん、そうねえ」
ルーデシアが返事を渋るのは、すでに仲間のつもりでいたのに、ウルエは違うということ。認識の齟齬に多少イラついたのもあるけれど、一番の理由はすぐに了承しても楽しくないからだ。
「これからウルエの腕試しも兼ねて狩りにいくわよ。もちろん、シャルクスも」
ウルエは元気に「はい!」と返事をして、シャルクスは気怠そうに「へいへい」と返した。
「生半可な気持ちでは、合格は出さないわ」
「頑張ります!」
元気な返事に気をよくしたルーデシアは、うんうん、と満足そうに頷いてから、クローゼットをあさり始めた。ごそごそと三〇秒ほどかけて探し出したのは、絹のように美しい白地のローブ。
「わたしの古着だけど、あげるわ。魔獣素材……ええと、一角獣のたてがみで織られたローブだから、魔導攻撃にも耐性があるの。そのうえ、軽くて丈夫で汚れも落ちやすくて、風通しも保温性も抜群。わたしたちと一緒に戦うなら、これくらいの装備はないと話にならないわ」
ルーデシアは得意気に説明して、ローブをウルエに投げて寄越した。
不自然に風が吹いて、ウルエの手もとにローブを運んでいく。風魔導だ、とウルエはすぐに気付いた。魔導耐性のあるローブを風魔導で運べるのは、天才魔導士のルーデシアだからこそ。
ウルエは袖を通して感触を確かめた。着ているのを忘れそうになるくらい軽くて動きやすく、まるで空気のベールに包まれているような着心地。
「凄いですね、これ」
ルーデシアは満足そうに口端を上げると、今度はクローゼットの端に置かれていた木箱をあさり始めた。
「あとは、オリハルコンとミスリルの短剣があるけど、好きなほうを選んで」
オリハルコンは最も硬く、最も耐久性に優れて、ついでに最も高価な魔導合金。短剣とはいえ金貨二〇〇枚くらいの価値はあるだろう。ドワーフの腹鼓で休みなく一〇年働いて、ようやく買えるかどうかだ。
ミスリルは最軽量の金属でありながら鋼の数倍強度があり、美しい光沢が特徴だ。軽くて丈夫で美しいため、武具だけでなく様々な用途で使われていた。オリハルコンほど高価ではないけれど、短剣でも金貨一〇〇枚はくだらない。
一握りの冒険者しか持てないような、憧れの武器。
「そんな高価なものを借りてもいいの」
「貸すんじゃなくて、あげるの。いくら後衛でも、短剣くらいは必要になるから。……あと、ローブのほうが高いわよ」
「うえ!」
奇声をあげてローブを脱ごうとしたウルエを、シャルクスが肩に手を置いて止めた。
「高いけど、金貨七〇〇枚くらい。ウルエの捜索にかけた報酬からすれば、微々たるものだから、遠慮せずに受け取りなよ。ルーデシアも後衛仲間ができて嬉しいみたいだからさ」
シャルクスは耳打ちしてから、ルーデシアへ向けて声を張りあげた。
「けちなこと言わないで、どちらもあげたらどうなんだ」
「……ま、予備も必要か。使うこともないから、ええ、そうするわ」
シャルクスに乗せられて、ルーデシアは魔獣革のナイフシースに収めた短剣を二本、ウルエに渡した。ナイフシースだけでも金貨三〇枚ほど。金貨一〇〇〇枚の装備を身につけて、ウルエは嫌な汗を掻いていた。転んだりしたら、汚れたら、もしも壊れたら。そんなことを考えると落ち着かない。




