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役立たずと言われて冒険者を辞めようとしていた僕を拾ったのは、街で最強のパーティーでした。 13

 ギルド正面入口の右側に、ぽつんと一台の幌馬車が停められていた。栗毛の馬に飼葉をあげながら「ウルエ、どうなるんだろう」と気弱そうな女性が尋ねて「やめようよ、その話は」と気弱そうな青年が答えた。

 幌馬車に背中を預けている髭面の巨漢を見つけて、フリッサは声をかけた。

「お待たせしました、フリッサと申します」

 むくつけき髭面はフリッサのほうへ向き直り、銀髪紅眼の美女にしばらく見惚れた。アイギスで前衛を張るくらいだから、どれほど逞しい女性が現れるかと思えば、すらりとした美人で呆気にとられたのだ。どうしましたか、とフリッサが微笑みながら首を傾げて、むくつけき髭面は我に返り目礼した。

 いくら美人に見えても、腕一本でアイギスにまで上り詰めた凄腕。礼を欠くようなことをしてはいけない。彼女たちが居なければ、ネモフィラも魔獣の脅威にさらされるのだから。

「おれはゴドルフだ」

 照れ臭そうに髭面のゴドルフは名乗り、次いで用件を伝えた。

「幌の中に捕らえているから、ウルエ本人か確かめてほしい」

「はい、承知しました」

 フリッサは幌馬車の後ろへ回り込むと「失礼いたします」と一声かけて、重なるように蓋をしていた布を捲り上げて、幌の上へかぶせた。幌馬車は数日かけて移動するのに使うため、食料や着替えもあり雑然とした生活感が漂う。後口を開け放しても薄暗く、舞い上げられた埃が日射しを受けて煌めいていた。

 幌馬車の中央あたりに件の人はいた。

 口に布を噛まされて、目を布で縛られ、簀巻きにされた黄金髪の少年。芋虫のように転がされていた少年は人の気配に気付いて「はふー」と声を上げた。

「今、目隠しを取りますね」

 一言断りを入れて、手慣れたようすでフリッサは目を塞いでいる布を解き外した。長時間、目を塞がれていたため、薄暗い幌馬車の中でさえ眩しいらしく、少年は青色の目を細めていた。目が慣れて、目の前のフリッサに焦点が合うと、驚いたように碧眼が開かれた。

 少年のなかで、これまでの不可解なことが一本の糸で繋がり、なーんだ、そういうことか、と目を細めた。

「約束通り、見つけましたよ、ウルエ」

 フリッサは紅眼を細めて、待ちわびた逢瀬の人に囁くような甘い声で呼んで、愛おしそうにウルエの頬へ手を伸ばしていく。青色の目も受け入れるように閉じて、

「どうだった」

「どーせ、また偽者でしょう。懲りないんだから」

 幌の後口から賑やかな声が聞こえて、フリッサは頬に触れる寸前で名残惜しそうに手を引いた。

「いいえ、本人です。わたしの探していた人に間違いありません」

 フリッサは振り返り、明るい声で答えた。

 ほらね、と相槌の用意をしていたルーデシアは驚きに目をぱちくりさせて、幌のなかを覗き込んだ。

「ふーん、君が例の作戦を考えた少年ねえ。……にしても、ひどい恰好。あれだけの賞金を懸けられてるから、仕様がないけどさ」

「あはは、賞金首じゃないんだから。賞金じゃなくて、報酬だろう。……どれどれ」

 シャルクスも興味津々に幌のなかを覗いた。

 金髪碧眼の少年は、口に布を噛まされて簀巻きにされたままだ。

「ルーデシア、短剣を貸してください」

「はいよー」

 ローブに手を入れて龍鱗の半透明な短剣を取りだすと、くるりと手元で半回転させて、柄をフリッサに渡した。フリッサは口に噛ませた布より先に、簀巻きの縄に短剣をあてた。口もとに短剣を使うのはウルエを怖がらせるかもしれないという配慮から、先に簀巻きを解いて、口の布は時間を掛けても手で解くつもりだ。

「むふー、むふー」

 ウルエは言葉にならない声で訴えるように叫んでいた。

「すぐに自由にしますから」

 急かされていると勘違いしたフリッサは、手早く縄を切り、簀巻きを開く。

 全裸だった。

 一〇〇年の恋も冷めそうな、両手足を縛られた全裸の少年がそこにいた。フリッサの手が簀を開いたままの状態で固まり、微かに震えだす。

 シャルクスは全裸少年の股間のあたりを見て、ふふ、と小さく鼻で笑う。ルーデシアも全裸少年の股間のあたりを眺めながら「あらら、可愛いことで」と意味深な台詞を口にした。

 耳まで赤くしたフリッサは震える手で簀を少年にかけて、縛られた手足も、股間のあれも見えないようにした。がくがくと音が鳴りそうに振り返り、目もとを涙で潤ませて、引き攣るようなぎこちない笑顔を貼りつけたフリッサは、

「ち、違いました。素敵な趣味をお持ちの、全然、知らない人でした」

「……むふー」

 ウルエの目から生気が抜けた。

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