シェリルを鑑定
お立ち寄りいただきありがとうございます。
「少しシェリル様の魔法について伺っても?」
「はい、もちろんです。」
「今までどんな魔法を使っていましたか?」
「回復魔法と風魔法くらいです。回復魔法はうちで働いて頂いてる方が風邪引いたりした時に。風魔法は髪を乾かしたり、洗濯物を乾かす時に。そのくらいです。」
「あ・・・もしかして・・・ああでも違うな。」
「え?なんでしょう?」
「いや、最近騎士団に出入りしている洗濯屋が・・・いやでも、シェリル様は伯爵令嬢ですから。」
「あの、たぶんそれ、私です。」
「え!」
「うち、ここ数年干魃で貧乏なんです。それでひとりで洗濯屋をやってます。ナイショですけど風魔法と回復魔法と薬草を使ってるんです。」
「そうですか・・・騎士たちが今の洗濯屋になってから体調がいいって言ってたのは、その回復魔法と薬草のおかげだったんですね。・・・でも、おかしいなあ、洗濯屋は子供だそうだが。」
「あら、私、子供だと思われてるんですね。あははは、そうですか。」
「す、すみません。失礼なことを。」
「いいえ、いつもは変装してますけど、きょうは素ですから。」
「どうして変装を?もしかして騎士はガラが悪いとかですか?」
「いいえ、そんな失礼なこと。あの、オマリー様はこれから私の個人的な先生になっていただけるんですよね?」
「そのつもりですが。」
「では、信じていいですか?」
「はい。どんなことでも決して口外しません。」
「鑑定はおできになりますか?」
「はい。」
「それでは私を鑑定してみてください。変装の理由がおわかりになると思います。」
オマリーはシェリルを鑑定して驚いた。
「これは・・・」
「はい。父が、このことを知られると、聖女だとかなんとか言われて城に召し出されたり、いろいろ利用しようとする悪い人が攫おうとしたりするから、人に知られないようにしろと、ひとりで出かける時は変装しろと言いまして、それで変装してます。」
「そうですか。なるほど、それで転移魔法を覚えていざという時逃げようと。」
「まあ、それには気づきませんでした。私は洗濯屋をやって出た利益で材料を買って刺繍をして、それを売って少しずつお金を貯めてきました。それで領地に薬草畑を作ってポーションと薬を作りたいんです。その薬とポーションに回復魔法を付与したら、質の良いものができるでしょうから、売れるのではないかと思います。王都で薬草畑など高すぎてできませんので、最初のうちは領地で作り、持てるだけ持って転移魔法で王都に売りに来てまた帰るということを繰り返そうと思って、それで転移魔法を使えるようになりたいのです。」
「貴女はすごいなあ。貴女くらいの年頃の貴族令嬢は、パーティーとドレスと、金と地位のある男を探すことに必死なものだが、貴女は自分の足で立って、そればかりか領地の将来を考えている。」
「お師匠様、そんなに褒めないでください。」
「お、お師匠様ですか?もしかして、私のことですか?」
「はい。私に魔法を教えてくださるのですもの、お師匠様ですわ。」
「いや、それはちょっと。」
「あら、すみません、お気に触りました?」
「いえ、そういうわけでは。私は師団長に命じられただけですので。どうぞオマリーとお呼びください。」
「はい、それではそう致します。」
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