オマリー副団長
お立ち寄りいただきありがとうございます。
ドアがノックされた。
「オマリーです。」
「入れ。」
「シェリー、うちの副団長のオマリーだ。」
「よろしくおねがいします。シェリル・ブレイディと申します。」
「ライアン・オマリーです。」
「シェリーはブレイディ殿の娘さんだ。転移魔法を覚えたいということなのだが、教えてやってくれるか?」
「はっ、喜んで。ただ、魔力量が。」
「それに関しては全く問題ない。」
「それではいつからでも。」
「シェリー、魔法の付加の仕方は知ってるか?」
「ええと、洗濯物に魔法をかけるくらいはできますけど、ポーションにとなるとどうするのかわかりません。」
「そうか。では、転移魔法が終わったら、魔法付与も教えてやってくれ。」
「はっ、承知しました。」
「シェリー、他にもなにか教えてほしいことが出てきたら、遠慮なくオマリーに言うと良い。」
「ありがとうございます。」
「おい、リック、これで良いかな?」
「ああ、ありがとう。ところでオマリー君は結婚してるのか?」
「いいえ」
「婚約者は?」
「おりません。」
「そうか。シェリー、気をつけろよ。」
「なっ・・・」オマリーが赤くなった。
シェリルは
「もうー、お父様ったらいつもこうなんだから。」と笑っている。
「心配いらぬ。シェリーに不埒なまねをすれば、儂が成敗するからな。」
「おじさまも。まったく、お父様もおじさまも、似た者同士で仲が良いのね。」
「ではオマリー、練習場をシェリーに見せてやれ。ああそうだ、シェリーというのは儂のような特別な者だけに許された呼び名だからな。お前はシェリルと呼べ。」
「やだわ、おじさまったら面白すぎます。」
シェリルはオマリーに連れられて練習場に来た。
何人かの魔導師が練習している。
あちこちでドーンという音がしたり、ピカッと光ったりしている。
ちょっと・・・怖い・・・かも。
シェリルは内心びびっているのを隠していたのだが、いきなりすぐそばでどーんと音がした。
「ひゃぁっ!」
本当に驚いて怖かった時は人間素になる。
シェリルはみっともない声をあげ、しかも腰を抜かしてしまった。
「大丈夫ですか?」
焦ったオマリーがシェリルを助け起こした。
魔法を発動した魔導師が慌てて駆け寄ってくる。
「すみません、大丈夫ですか?」
シェリルは焦った。
「ごめんなさい。私が悪いんです。ごめんなさい。お邪魔してしまって。」
「いえ、いきなりここに連れてきた私が浅慮でした。ちょっと外に出ましょう。」
「あの・・・すみません・・・脚に力が入らなくなっちゃって。」
驚いた顔をしたオマリーにシェリルは
「わわわ、笑わないでー。我ながらみっともないと思ってるんです。」
オマリーはくすっと笑って、
「ではとりあえず控室まで行きましょう。」
オマリーがそう言って、シェリルをひょいと抱えて控え室に案内した。
シェリルが
「あのう、私、さっきの魔道士様の邪魔をしてしまいました。ごめんなさい。どうしたらいいでしょう。」
と、言うと、
「気にしなくてもいいですよ。彼に貴女が見えていなかったのは修行不足です。怖かったですか?」
「はい、初めてこういう練習場に来たもので、音とか光とか、なんだか戦場に来ちゃったみたいで怖かったです。ごめんなさい。」
お読みいただきありがとうございます。
ご感想、評価、いいね、などいただけますと幸いです。