今後の計画
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帰り道、シェリルはこれからのことを考えていた。
洗濯の仕事の売上げは家に入れている。毎回決まった額にしていて、それ以上もらった時は自分のものにして、そこから刺繍糸等を買っている。
刺繍のほうの売上は全部自分で貯めている。
さてそこからだ。
ある程度まとまった額になったら、それで家を出るか、またはそれを元手にさらに稼いでから家を出るか。
本当はすぐに家を出ず、もっと稼ぎたいのだが、貯めていることがばれれば取り上げられてしまう可能性が大きい。新しく事業を始めると、家にいてはバレてしまって利益が出ても義母と義姉に取られてしまう。借金の返済にするなら良いが、義母と義姉の無駄遣いに消えるのは絶対に避けたい。
やはり、家を出る。そしてそこで稼いで事業資金を作るというのが一番良さそうだ。
新事業には土地がいる。
それには王都では高すぎて無理。
となると、王都に近いところを考えたほうが良いのだろう。
または、訓練して転移魔法が使えるようにするか。
訓練ってどうやって?誰かに教わるの?教わってできるようになるの?
うーむ、まずはそこから答えを見つけなければならないわ。
もし転移魔法が使えるようになるなら、領地に帰って、そこで栽培し、製品を転移魔法で王都に運んで売る?
そうか!お父様に転移魔法を教えられる人を知っているか訊いてみるというのはどうかしら。
お父様に訊けば知り合いがいるかもしれない。
そうよね、こんどパーティーの日、あの2人が出かけてる隙きにお父様に訊いてみよう。
シェリルは考えが少しまとまったので、気分良く家に帰った。
家ではお腹が空いて機嫌の悪い義母と義姉が待っていた。
「ちょっと、いままでどこフラフラしてたのよっ。夕飯はまだなの?」
「はーい、ただいまー。」
「まったくあんたって全然悪いと思ってないでしょ。可愛げがないったらありゃしない。」
「えへへへー、すみませーん。」
「ああ、だからそれがムカつくのよっ。きいいいっ」
はい、そんなに怒ったらぶすになりますよ。
あ、元々ぶすか。じゃいっか。
鶏肉の料理をちゃちゃっと作って出せば、文句を言いながらも完食するのがあの2人だ。
お父様は例によって自分の執務室で召し上がる。
私は賄いをみんなで一緒に楽しく食べる。
食後のお茶を出す時に、次のパーティーはいつか訊いてみる。
「今週末にあるわよ。でも、あんたは行かないでしょ。」
「そうですか。あ、もちろん行きません。食材を買うのをどうするか考えるために訊いただけでーす。」
「そうよね、あんたなんかが行ったって、誰からも誘われないし、黙って立ってるだけだもんね。」
「ですよねー。へっへっへ」
ばーか。行けないんじゃなくて、行かないのよ。あなた達ほど暇じゃないんです、私は。
と、心のなかで悪態をついて、片付けも終え、湯浴みをして、寝間着に着替えて刺繍をする。
これって趣味だわね、と思う。
趣味で楽しんでお金もらって、なんだか申し訳ないみたい。
でもまあ、喜んでもらえてるならいっか。
将来、刺繍を孤児とか貧しい子どもたちに教えたいなあ。
その技術があれば、なんとか食べていけるでしょう。
その時のためにも、細く長く売ってもらえるお店を大事にしないとな。
そんなことを考えながら、刺繍の切の良いところまでやって、シェリルは眠る。
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