最終話
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神殿が騒がしいという噂は王城にすぐに伝わった。
王子が「何事だ?」と言うと、
「魔導師が結婚したそうです。」
「なんだそれは。魔導師が結婚するのはそんなに騒ぎになるのか?」
「いえ、なんでもオマリー副団長だそうで、マーフィー団長も共に神殿に行ったので、それに魔導師達が付いていったそうで、大人数になったものと思われます。」
「それにしても、こんな平日の午後にとは、おかしな話だな。」
「殿下!」
「なんだ?」
「ブレイディ伯爵家の令嬢ですが、さきほど結婚されたそうです。」
「なに?シェリル嬢のほうか?」
「はい、洗濯屋のシェリル嬢です。」
「なんと!」
「ふはっ、はははははっ。」
「殿下、いかがなされましたか?」
「やられたな。そうか、それで神殿が騒がしかったのだな。」
王子はここでシェリルが聖女だということを確信し、同時に淡い恋心を抱いていた希望が消えたことも自覚した。
「それでは結婚祝いを贈るとするか。」
王子は忍を呼んだ。
数日後、1人の男が捕らえられた。
食い詰めてこそ泥をしたのが見つかったのだ。
男はブレイディ伯爵夫人に会わせろと訴えた。
ブレイディ伯爵夫人の娘の拾の父は自分である、夫人が娼婦をしていた時に自分との間に出来た娘だ、夫人に言えば金を払うはずだということであった。
当局が調べ、それが事実であることがわかった。
ブレイディ伯爵の家に警吏が訪れたのは、それから数日後であった。
警吏が伯爵に事の次第を報告し、夫人は虚偽の申立をして8年もの間婚姻関係を結んでいた事が発覚し、婚姻は無効、夫人と娘は伯爵の情けにより罪に問うことなく放逐のみとなった。
「殿下はお人が良すぎますな。」王子の側仕えが言った。
「洗濯屋に刺繍屋に魔導師との結婚とは、まったく面白い聖女様だ。我が国の宝に多少の祝いを送ってもよかろうよ。」
王子はそう言って、ははははと笑った。
後日、王城からシェリルとライアンに招待状が届いた。
ブレイディ伯爵とマーフィー師団長も一緒に招待されていた。
国王陛下と王子から、聖女に対して国の平穏と豊穣を祈ってくれるよう『お願い」され、報酬として、今後聖女夫妻の行動の自由の約束と、希望があればいつでも謁見を賜ることができるという約束があった。
「陛下、殿下、ありがとうございます。聖女として領地に、そしてこの国に対して私のできることを精一杯やっていきます。」
王子が
「洗濯屋と刺繍屋はもう廃業か?」と訊いた。
「いいえ、洗濯屋はライア、コホン、オマリーが魔道具を作ったのでそれを使って孤児たちに引き継いでやってもらうことにしました。刺繍屋は続けます。これは孤児たちと未亡人に刺繍を教えて将来引き継いでもらうことにしようと思っています。」
「おお、それは良いな。必要があれば助けを出すので言ってくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
「幸せか?」
「はい、とっても。」
「よかったな。」
シェリルはにっこりと笑って「はい」と答えた。
謁見後、王子がひとりつぶやいた。
「釣り逃した魚は大きいというのは本当だな。」
10年後、ブレイディ伯爵家の屋敷は賑やかだ。
「リックおじいさま、こんな大きいお芋が掘れました。」
「おお、すごいな。ベンがひとりで掘ったのか?」
「はい、ベンは力持ちになりました。」
「そうか、頼もしいな。おお、鼻に泥が付いておるぞ。どれ、ふいてやろう。」
「ネイトおじいしゃま、ご本を読んでくだしゃいましぇ。」
「おお、おお、リリーは賢いな。もうこのような本を読みたいのか。」
「はい。おかあしゃまが、おんなもがくもんをしなければしあわせになれないとおっしゃいますので、リリーはがんばりましゅ。」
「良い子だ良い子だ。」
「リリーはおじいしゃまのお膝に座りましゅ。」
「父上、きょうもありがとうございました。」
「おお、セバスチャン、なかなか魔力が上がってきたようだな。」
「父上、僕も氷魔法が使えるようになりました。」
「そうか、クリス、よくがんばったな。」
「おかあさま、この刺繍、いかがでしょう?」
「きれいねえ。この辺に蕾をひとつ加えたらどうかしら?」
「そうですね。それじゃ、ピンクの蕾にします。」
「アリスはセンスがいいわねえ。」
「シェリー、ただいま。きょうも賑やかだな。ああ、腹が減った。」
「おかえりなさい。きょうはライアンの好物のローストビーフですよ。」
「そうか、それは楽しみだ。」
「ねえライアン、私、いますっごく幸せです。ありがとう。」
「俺もだよ。大家族っていいなあ。シェリーのおかげだ、ありがとう。」
了
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もう一度申し上げます。お読みいただき、本当にありがとうございました。
尚、新しく
家では虐待され、王子には婚約破棄もされたけど、大好きな人に告白して幸せになりました。
の連載をはじめました。
私はどうもハッピーエンドが好きで、これもハッピーエンドです。基本的に、一生懸命生きていれば幸せになれると信じていますので、そういうお話になります。
とうぞよろしくおねがいします。




