良い父
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「そうか。リックの娘さんならそうかもしれんな。あいつもずっと平民になりたいと言っていたからなあ。」
「そうなんですか!」
「ああ、シェリーのお母上が亡くなってから、特にそう言ってたなあ。ところがリックの兄上が亡くなってバーバラ殿が娘さんを連れて来た時に、兄上の遺志で結婚しないといけないということになったのだ。その時はあいつは荒れた。儂はリックと一緒に飲んだが、男泣きに泣いていたよ。」
「お父様・・・」
「きのう訊いたら、いまだに白い結婚のままだそうだな。そしてバーバラ殿と娘さんはシェリーに辛くあたり、それをとても心配していたぞ。」
「ああ、それはぜんぜん大丈夫なんです。私いつも無視してるか茶化してるかだし、使用人と一緒に楽しくやってるし、お父様は私をすごく愛してくれてるし、それで、洗濯屋と刺繍屋ですこしずつ元手を稼いで領地に行こうって思ってたんですけどね、でもそうすると、お父様とも使用人のみなさんとも離れなきゃいけないから、転移魔法がいいなあなんて思ったんです。」
「そうか、リックはやっぱり良い父親なのだな。」
「はい。でもね、きのうオマリー様が私が質問して私の魔力を見てくださった時に、聖女と知って、それなら土地に祝福すれば干魃も克服できるし、さらに土地が肥えて収穫量が増え、領民の暮らしが良くなるということがわかって、祝福をしたいと思うようになりました。オマリー様って、正直な方で、祝福の仕方を教えて下さいって言ったら、『わからん』っておっしゃってね、ああ良い人だなって思いました。あははは。」
「そうか。ああ、オマリーは真っ直ぐな良い奴だ。」
「祝福のしかたは調べてくださるってことになってるんですけど、新しく問題がでてきてしまって。」
「それが王子のことか。」
「はい。もう、これは私、すごくショックで。いつもこうやって変装してたし、サニーって名前を名乗ってたし、まさか王子様が見かけて興味をもたれるなんてこと、考えもしませんでした。」
「いや、シェリーは変装しても十分可愛らしいからなあ。」
「それはおじさまがお年のせいで目が悪くなってらっしゃるんですわ。あははは。」
「そんなことはないぞ。これでもまだまだ。」
「あははは、そうそう、私ね、オマリー様に言ったんですよ。おじさまってすごく素敵だから、私がもっとずっと年上だったらおじさまの奥様にしていただきたかったなあって。」
「な、なんと。それは光栄だな。ありがとう。」
「えへへへ。それでね、その王子様のことで、さっきオマリー様と話していて、結構急な対応が必要だと思って、いろいろ話した末、オマリー様に私と結婚していただくのはどうかと思って。」
「ちょ、ちょっと待て。それはリックは知っているのか?」
「いいえ、まだなにも話していません。話したいけど、私まだ家まで転移できないし。父はたぶん家にいると思うんですけど。」
「わかった、至急呼び出すから、ちょっと待て。」
「おい、誰かおるか?」
「はっ。何でしょうか。」
「ブレイディ家まで行って至急ブレイディ卿をお連れしろ。これを持っていけばわかる。」
そう言ってネイトは走り書きのメモを渡した。
「はっ、すぐに行ってまいります。」魔導師様が急いで出ていった。
「それからオマリーはいまどこだ?連れてまいれ。」
「はっ。」別の魔導師様がオマリー様を探しに行った。
「シェリー、君はとても良い子だ。なんとしてでも幸せになってほしい。リックはリサ殿が亡くなってそれはもう悲しんでな。一緒に後を追う勢いだったのだ。でも、リサ殿が今際の際に、私のかわりにシェリーを幸せに育ててくれと言ってなあ。それで思いとどまったのだよ。」
「そうですか・・・」
「リサ殿は笑うとひまわりのように明るい、お茶目な人だった。リックとリサ殿はそれはもう愛し合ってなあ、シェリーを授かった時はリックは大泣きをしたよ。この子は絶対世界一幸せにするんだと言ってなあ。シェリーが生まれてから、リックは自分は死ぬわけにはいかんと言って、戦に出るのもやめた。リサ殿はそれを喜んでいたのだが、まさかリサ殿が病に斃れるとは誰も思わなかったよ。リックの嘆きはそれはもう、大変なものだった。」
「お父様・・・」
「だからな、この話も奴にしないで勝手に進めると儂は殺されるから、まずは奴を呼び寄せよう。」
「あははは、おじさま、ありがとうございます。おじさまはお父様にとって、まさに親友なんですね。私にとっては第2のお父様みたいだわ。」
「おおそうか。それは嬉しいぞ。ありがとう、シェリー。」
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