練習は楽しい
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9時ちょうどにシェリルはオマリーの部屋のドアをノックした。
「入れ」
「おはようございます。早すぎましたか?」
「いや、時間ぴったりだな。」
「えへへへ、時間に正確なのはビジネスの基本でございます。」シェリルはそう言ってにっこり。
「では、きょうはまずここで練習しよう。」
「え、ここで?大丈夫なんですか?」
「問題ない。まず説明から始めるから、場所はどこでもいいんだ。・・・シェリル嬢は風魔法を使うそうだが、どうやって発動してる?」
「あのう」
「ん?」
「シェリル嬢、っていうのはちょっと。シェリルかシェリーでお願いできますか?」
「そ、そうか、しかし、団長のご友人のお嬢様に失礼ではないか?」
「やだー。お嬢様って顔してないでしょう?よく見てくださいよ。」シェリルはそう言ってケラケラ笑っている。
「そういえばきょうは昨日と随分違うな。」
「もうね、最近はこうやって変装してるほうがほんとみたいな気がしてます。」
「ははは、君は面白いな。でも、きのうみたいにしているほうが男ウケはよくないか?」
「受けてどうします?ひとりに受ければそれでよくないですか?受けて嬉しいのは洒落を言った時だけってね。」
「あっははは、ほんと、面白いなあ。こんな令嬢もいるんだな。」
「あ、あんまりいないと思います。どこで間違っちゃったのかしら。たぶん義母と義姉がいて、いろいろ言ってくるのに対して心のなかでしょっちゅうツッコんでるから、それが当たり前になったんじゃないかと。」
「へえ、義母さんと義姉さんがいるのか。ツッコミたくなるようなことを言ってくる?」
「そうなんです。それで密かにツッコんでるのでばかなことばかり言うようになっちゃって。」
「そういうものかな。辛くはないかな?」
「辛くないです。愛がありますから。父は本当に私のことをすごく愛してくれてるんです。ですから、どんなに言われても、愛される者の余裕でかわしちゃいます。」
「なるほどな。まあでも、そんなこと言っていても、いずれは貴族と結婚して名を継いでいかなければならないのだろう?」
「そこなんですよね。今は領地は税も無いし、干魃で苦しいとはいっても、まあ飢えることなく済んでますけど、義姉が継いだら重税決定でしょうから、そうはさせられないので、やっぱり私が継ぐしかないのかと思います。でもねえ、パーティー出ない、釣書出さない、父は友達少ない、と三拍子揃ってますから、なかなか難しいでしょうねえ。」
「ははは、なんだか他人事みたいだな。・・・騎士や魔導師には貴族の次男三男がいるぞ。」
「うーん、いたからって、私に選ぶ権利があるなら、相手にも選ぶ権利がありますのでねえ。」
「シェリルなら素顔を見せれば文句なく気に入られるだろう。」
「たしかに、異国の言葉で『美人は三日で飽きるがブスは三日で慣れる』っていうのがあるんですけど、私の場合は三日で慣れていただけますので、そこは優良物件かもしれません。」
「あっははは、なんだそりゃあ。シェリルはきれいじゃないか。それに性格もいいぞ。」
「この性格がですか?それはオマリー様が本当の私をご存知ないからそういう勇気ある発言がおできになるんです。本当の私はイカスミパスタを毎日食べてるのかってくらいに腹黒くて意地悪でしかも下品で、およそ貴族向けじゃありません。」
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