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ふぅん、なるほどね

 炎が収まると、植物は元の緑色の姿に戻っていた。

 リアナの火炎魔法で灰になってしまうかと思ったけど、さすがは魔法で生み出した植物。よっぽど頑丈らしい。これでまた振り出しに戻った訳だ。

 ルイスは顎に手を当てた。

「攻撃態勢になった植物を落ち着かせるためには高出力の魔法が必要。それなら……」

「ねえエマ! 俺の魔法も見たら褒めてくれる?」

 そう言ってレイが近寄ってきた。

「え? えっと……」

「俺の魔法だってすごいパワーが出せるんだから! よく見てて!」

 レイは植物に向かって杖を構える。せっかく元に戻ったのに強い魔法なんて当てたら、また攻撃的になっちゃうんじゃ……

「待ってレイ……」

「ちょっと!」

 珍しくルイスが大きな声を上げた。レイはルイスの方を振り向く。

「近づきすぎです! エマから離れてください……じゃなくて、協力しないとできない課題なんですから、勝手な行動はやめてください!」

「……ふぅん、なるほどね」

 そう言うとレイは杖を下ろして私から離れた。

「それでは気を取り直して役割分担をしましょう。植物の成長には光、土、水が重要という理解でいいですか?」

 私達は頷いた。

「現状は水が足りていませんが、ただ雨を降らせるだけでは先ほどのように蒸発してしまうでしょう。そこでレイ君には土魔法で日差し除けの壁を作ってもらいます。その上でジキウス君の光魔法で光量を調整。そしてエマの水魔法で多くの雨を降らせるために僕の風魔法でサポートします」

「ルイス、私は?」

 リアナは自分を指さした。

「もしもの時に丸焼きにする役でお願いします」


 水量や光量を間違えて2回ほどリアナのお世話になったけど、ルイスの作戦が成功して大きな花を咲かせることが出来た。

 この課題をクリアしたら、今日は宿に行っていいということだ。

 改めて咲かせた花を見上げる。ピンク色の大きな花は苦労させられたことを忘れるくらい綺麗だった。

「リアナ、一緒に部屋へ……あれ?」

 隣を見るとさっきまでいたはずのリアナがいなくなっていた。疲れたから先に部屋へ向かったのかな?

「エマ、お疲れ様」

 声をかけてきたのはルイスだった。

「ル、ルイスも、お疲れ様……」

 二人になるのを避けてたから、緊張して変な感じになってしまった。そのくせ、声をかけてくれたことが嬉しくて顔が熱くなる。

「エマ、なんだか顔が赤いよ? 可愛いね」

 ルイスは余裕そうに微笑んだ。また可愛いとか言って……!

「そうだ、エマ」

「な、なに?」

 ルイスは私の耳元に顔を寄せた。

「今日の夜9時に宿の玄関まで来てくれない? エマと話したいんだ」

 耳元で響く声がこの前の告白を思い出させて、また体の熱が上がった。

「じゃあ、また後でね」

 そう言い残してルイスは歩いて行ってしまった。


 私とリアナが泊まる部屋に入ると中には誰もいなかった。窓からはもう夕焼けが差し込んでいる。心配になって探しに行こうとしたとき、部屋の扉が開いた。

「よかった……どこ行ってたの?」

「テムルに連れていかれてた」

「え!?」

 テムルの奴……私が目を離した一瞬の隙にやられた。

「大丈夫!? 何された!?」

「火属性から水属性に転換してみせますってすごい勢いで言うから、属性転換なんてしないほうがいいって言っておいた」

「ああ……」

 リアナと同じ火属性だから同じ班になれなかったのが相当悔しいんだろうな。そして、私のポジションを奪おうとしてるんだな。

「リアナはこれだけテムルにアピールされてるけど、実際どう思ってるの? 今もしもべ?」

 リアナは口元に手を当てて考える仕草をした。

「嫌なことはされてないし、エマを助けるのにも協力してくれたし、悪い人ではないと思う。だから顔見知り?……友達、なのかな?」

「あれ、好きって言われた訳じゃないんだ?」

「うん、テムルには」

 ん?

「『には』っていうのは……?」

「ジキウスに言われたことがある」

「それいつの話!?」

 思わずリアナの肩を掴んだ。

「前に私とエマが中庭のベンチで話してた時にジキウスが割り込んできた時があったでしょ。その次の日くらいだったかな」

 私が予定外にアドバイスしてしまってからすぐか。行動力だけはあるな。

「エマと私の関係を邪魔して悪かったって先に謝ってたから、そこは許すことにしたの。私はジキウスのこと好きじゃないって言ったら、嫌いじゃないなら友達から始めてほしいって言われた」

 ジキウス、結構な鋼メンタルだな。

「それで、今はどう思ってるの?」

「うん……前みたいにエマとの時間を邪魔してきたり、長話に付き合わされたりはしなくなったから、嫌いじゃない。エマのことも助けてくれたし、そこは見直した。でも、ジキウスの言う『好き』っていうのはちょっとよく分からない。私がエマやルイスに思ってる『好き』とはきっと違うんでしょ?」

「うん、そうだね」

「エマは今、誰かのことが好き?」

 リアナは真っ直ぐな瞳で私を見つめてくる。こんな瞳で見られたら隠し事なんてできない。

「……私は好きっていう気持ちにちょっと迷ってる。一緒にいると嬉しいし、その人の言葉や仕草でドキドキするんだけど、それまで抱いていた憧れとか住む世界が違うところとか、色々考え始めるとうまく頭がまとまらないんだよね。私なんかで本当にいいのかなって思うから……」

 前世の頃から私にとってルイスは特別な存在だった。転生したこの世界でルイスと再び出会って、触れた手の温かさを知った。同じ世界線で一緒の時間を過ごして、生身の人間としてのルイスに心が惹かれていった。奇跡的にもルイスが私に好きって言ってくれて、すごくすごく嬉しかった。

 でも、今まで画面越しで憧れて応援してきたルイスのヒロインが、私で本当にいいの?

「エマ!」

 俯いた顔を持ち上げられて、私は目を丸くした。

「私なんかなんて言わないで。私はエマのことが好き。守ってくれる優しいところも、一緒にいて楽しいところも好き。もっと自分に自信をもって」

 真剣な表情で真っ直ぐな言葉をくれる。愛おしくて私はリアナを抱きしめた。

「ありがとうリアナ……私、頑張ってみるね」

「うん、応援してる」

 ルイスに私の思っていることを全部言おう。ルイスもリアナもこんなに気持ちを伝えてくれるんだから、私もそれに応えるべきだ。

「もしリアナが誰かを好きになったら、今度は私が全力で応援するからね」

「……そんな日が来るかな」

「来るよ。きっとね」

 体を離すとリアナと目が合う。微笑むリアナは茜色の夕焼けに照らされてとても綺麗だった。

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