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剣技の実力

クラス全員が集まってのかなりの広さを誇る訓練所、そこで生徒達は各々各自ストレッチや精神統一等自分のポテンシャルを発揮できる様にしていた。


「では、これから1対1の模擬戦を行う。それぞれ模擬戦用の武器を選びたまえ。後、この模擬戦では魔法の使用を認める。先ずはそれぞれの力量を知るんだ。」


名無しは訓練用の長剣を選び感触を確かめてみた。訓練用な事もあり少し違和感はあったが何とかなるだろうと思い何度か素振りして調整していた。


「では、次にゴルと名無し!前に出なさい。」


名前が呼ばれて出ていくと対戦相手は先程教室で挑発していた男子生徒だった。

ゴルと呼ばれた生徒は相手が名無しであると分かってからニヤニヤとした顔で立っていた。


「俺の相手が名無しか・・・まあ、名無しは部をわきまえてるから分かってくれるよな?」


明らかに自分が負けるはずが無いのを確信しているのか勝たせてくれるだろうと思っているのか獲物の槍を構えるが真剣さはあまり見受けられない。


「では、始め!!!」


開始の合図でゴルは一気に踏み込み間合いを詰めようとした。しかし、開始の合図と同時に自分の首筋に当たっている冷たい感触を感じて目の前の状況を理解できてなかった。何故なら目の前に名無しがいるのだ。始まってから数秒も経ってないのに目の前名無しがおり自分の首筋には名無しの剣が触れたいのだ。


「へ?」

「しょ、勝者!名無し!」


審判役でもある教師は一瞬遅れたが名無しの勝利宣言を行い名無しは剣を納め離れて行った。その間、ゴルの思考は停止したままであった。

試合が終わり名無しは一礼をしてからフリットの近くまで歩いて行った。その間殆どの生徒から信じられない顔で見られていたが特に気にする事では無かった。


「スゲェな。一瞬で終わらせるか。」

「まあ、相手が油断してくれてたお陰でね。フリットは見えてたんだろ?」


同然の様に聞いた名無しであったがフリットは特に驚く事なく頷いた。名無しは合図と同時に爆発的な踏み込みで相手の懐に入り一気に勝負を決めていたのだ。


「アレは・・・身体強化か?でも、あそこまで一点突破の強化は見た事ないわ。大体体全体に行う強化のイメージがあったし一部だけってなるとマナコントロールも必要になるぞ?」

「正解。まあ、俺の場合無系統の魔法との相性が良いってのもあるんだろうけど訓練してたから。それに、フリットだけじゃ無くて何人かにはあんな感じで終わる人はいないよ。ただ近くに寄って寸止めしただけだし。」


確かに言ってる事は間違ってないが入学したばかりであの領域の人間となると限られてくる。実際に数人は興味がありそうな感じで見てはいたが別段驚かれる事は無かった。


「確かに一撃で終わる事はないけどさ。あの魔法の後を見てたから余計にビックリしたぜ。まあ、このクラスになるだけの事はあるって再認識はしたけどな。」


その後フリットや他の生徒達も模擬戦を行い実力のある者は特にその実力を見せつけその日の授業を終えた。




サウルは帰宅後直ぐ家に備えられている訓練場へ向かい模擬剣を振るっていた。しかし、その太刀筋は感情に任せて振るってる様に見えてあまり良くない様に見える。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・くそぅ!」


サウルは今日の模擬戦を思い出していた。相手はミィナ・レイウォールであり手も足も出ず負けしてまった。サウルは騎士団長の息子と言うこともあり自分の腕に自信があった。実際に成績もそこまで悪くない。しかし、それは普通の分類から見ると上の方ではあるが本当の強者との立ち合いを殆どしてこなかったが故の自信と過信であった。そして、彼の心を乱す者がもう1人いた。


「(何故だ!何故名無しの構えが父上と被るんだ!!!)」


そう。名無しが模擬戦で見せた構えは少し違えど騎士団が使用する型でありその中でも第一部隊の構えに酷似していた。そして、何故か名無しの背後に父であるガレスの姿がダブってしまった。それがサウルの心を掻き乱しめちゃくちゃな振り方をしていた。


「サウル。その様な感情に任せては剣が鈍り余計な体力を使ってしまうぞ。」


そんな中、サウルに声を掛けた男性がいた。

鍛え抜かれた体つきでどこと無くサウルに似た男性は先程からサウルの太刀筋を見てその感想を述べた。


「父上。今日は帰ってらしたんですね。」

「ああ。お前が珍しく鍛錬場に足を運んだと聞いてな。見にきたのだが・・・何やら荒れてるではないか。」


サウルは否定しようとしたが父の目を見て誤魔化す事はできぬと悟り渋々語った。しかし、語った部分の殆どは名無しに対しての不満と差別的な言葉ばかりであった。名無しのくせにシルヴィルに入学したばかりか自分と同じAクラス。そして、属性魔法は碌に使えないのに身体強化は使え剣の方が騎士団に酷似してる。サウルにとって名無しは自分の信念から逸脱している存在であると疑ってなかった。奴は何か違法をしてる。名無しだから何をしてもなんとも思ってない。そんな考えを信じているのだ。


「・・・成る程、お前の考えはよく分かった。」

「やはり、父上もそう思いますか!やはり、この事は陛下にもお耳を入れた方が良いのではないですか?ロイヤルナイツの1人が・・・」

「この大馬鹿者が!!!!」


サウルが続きの言葉を言う前にガレスの怒鳴り声が遮る。サウルは何故父がその様な顔をしながら自分を見てるのがさっぱり理解できなかった。何故、父は怒りと悲しさを含んだ様な表情をしてるのかが分からなかった。


「貴様は前々から物事を表面でしか見ることができてなかったのは知っていた。だが、貴様なら理解してくれるだろうと思い何も言わなかった。彼が同じ学園のクラスになっている事は知っていた。だが、交流を深めればきっとお前も考えを改めるだろうと思っていた。しかし、お前は何も変わる事なくただ否定するだけ。お前は何を見た!彼の剣をその行動を!!!」

「・・・何を言ってるんですか?まるで、あの名無しの事を知ってるかの様な言い方・・・まさか・・・父上は知ってたんですか?」

「・・・ああ。彼は昔とある事情で名無しとなった。その時、彼を保護してたのが我々騎士団だ。」


ガレスはあの頃を思い出す様に語った。名無しは当時死んだ様な目をして生きる事を諦め掛けていた。しかし、事情を知っていた当時の騎士団のメンバーが彼を放っておく事ができず必死の介護を行なって漸く今の様な感じまで元気になったのだと。確かに名無しと言う処置は重罪人に行われる事が多い。しかし、その中でも異例的な事例はある。彼はそう言った事情で名無しとなってしまったのだと。


「彼は本来名無しと呼ばれる程の重罪を行ったわけでもない。しかし、そうなってしまった過去はある。だが、彼の根は真っ直ぐで真の通った人間だ。だから、私含め彼に剣を教えたのだ。我々が彼に送れる物はそれくらいだったから。」

「・・・」


サウルはガレスの言葉を聞いたまま黙っていた。顔を下に向け拳を握っていた。


「サウルよ。もう一度彼をよく見るのだ。彼はお前が持っていない物を持っている。それに気付ければお前は更に上へと上り詰めれる。」


そう言って、ガレスはその場から去っていった。残されたサウルはブツブツと何かを囁きながら立っていた。そして、次第に声が大きくなり顔を上げる。その顔は怒りに染まっており目には狂気に溢れていた。


「ふざけるな・・・事情がある?なら何故名無しとなった!そうなる事をしたから重罪人の烙印を押されたのだろう!父上!貴方は老いた!そんな腐った考えをする様になったとは!!!俺は否定する!その考えを!!!その考えに至った名無しと言う存在を!!!」


サウルは狂気に進んでいく。ガレスの言葉は伝わらず、己が考えが間違ってないと信じてしまい自分以外の考えを否定してしまった。そして、彼は怒りという感情に身を魂を少しずつ侵食されていっていた。

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