魔法とマナ
この世界にはマナと呼ばれるものが存在する。それは世界が創造された頃には既にあったと言われており一部の学者は世界そのものはマナが構築した世界ではないかと言われてる。そして、そのマナは人々の生活に欠かせない物でありマナと言うのは日常になくてはならない一部であった。
「この世界にはマナと呼ばれる物質が存在する。このマナはありとあらゆる物に必要不可欠な物で世界はマナによって構築されたと言っても過言ではない。勿論、我々が使用する魔法にもマナが使用されている。では、魔法の定義を・・・レティシア君。」
「は、はい!私達が使う魔法はマナを体に取り込み頭で構築された魔法陣にマナを送り込みその後発動します。その際、送り込むマナが少ないと威力が半減又は発動しない。多すぎると暴走する可能性があります。」
「その通りだ。」
魔法の担任から当てられたレティシアの答えを聞いてから教師は自分の右手を握った後手を開くとそこから小さな火が何もないところから現れた。そして、その日を大きくしたり小さくしたり自由自在に変化させていた。
「この様にマナを自在に使いこなせれば簡単に出来る。更にこんなことも出来る。」
すると、赤く燃えていた火が今度は蒼く燃え始めた。それを見た生徒達は目を奪われていた。
「発動中の魔法を少し組み替えることで更に高熱の火とする事もできる。そして・・・」
すると今度は別の魔法が発動し火の周りを覆う様に氷が出現し完全に火を覆ってしまった。それなのに、氷は溶ける様子はなく火も消えることなく燃え続けていた。
その光景を見た生徒達は先程とは比にならないくらい驚きと期待の目となっていた。
「この様に別の魔法を発動させ、前の魔法と相互関係を作り別々の魔法を維持し続ける。魔法に適性が高い者であれば使用可能である技術ではある。しかし、こう言った技術は失敗する可能性も高いからな。よく鍛錬を行う様に。」
次にそれぞれが魔法の実践を行う事になり課題は先程教師が行った赤い火を蒼く切り替える事であった。
一人一人実践していくが中々上手くいかないようで蒼く出来ずにただ火が大きくなってしまう者が大半であった。しかし、何人かは時間はかかったが蒼く出来た者もおる。
「流石はミィナ様です。最も簡単に魔法の切り替えが出来るなんて。」
「やっぱり、将来のロイヤルナイツ候補ですわ。」
その中でミィナは最も簡単に赤い火を蒼い火に切り替えていた。
「では、次は名無し。やってみなさい。」
名無しが呼ばれて魔法の発動の為に集中する。
大気にあるマナを感じ体内に取り込む。そして、魔法を発動する為にマナを送り込もうとする。しかし、送り込むマナの調整が上手くいかず多く送り込んでしまい一気に燃え上がる炎として発動してしまった。それでも名無しは炎の勢いを弱めようとするが中々上手くいかずに炎は燃え上がっていた。そうしていると教師からの水魔法を発動し名無しの頭の上から大量の水を叩きつけられてずぶ濡れになってしまう。
「・・・そこまで。もうやめて良いぞ。先ずはキチンと魔法を発動できる様に鍛錬を行いなさい。」
そう言って教師は教鞭を続ける。座る名無しに対して周りの殆どが馬鹿にする様ヒソヒソと笑い合っていた。『やっぱり、名無しだからね。』『なんで俺達と同じAクラスなんだ?』『やっぱり、何かしらの卑怯な手を使ったのよ。』
そんな声が聞こえたが名無しは気にしていなかった。寧ろ、魔法発動が上手くいかなかったことに対しては気にしてはいたがこれから鍛錬していけば良いと思っていた。
「では、各魔法属性について・・・ノート君、答えなさい。」
「はい。各魔法にはそれぞれ、火、水、風、地の4属性。特殊な属性として、光、闇。そして、属性を持たない無と言うものがあります。属性には相性があり火は水に弱く風は地に弱く風は火に弱く水は地に弱いです。光と闇はそれぞれに強く弱い。無のみ相性の強みと弱みがないです。」
「確かにその通りだ。しかし、無には他の属性より特出した物がある。それが強化魔法だ。無属性には主に身体強化の魔法が使用される。それは無のみ有するものである。風にも身体強化に似た風を使い速さを上げる魔法はあるがあれは風をコントロールする必要がある為多少のラグが起こる。しかし、身体強化ならば自身の体を使ってるのでそのラグが非常に少ない。故に無の魔法を使用する者は多くいる。そして・・・」
その後も授業は続き終了の鐘が鳴ると生徒達は集まって話したり自習したりと様々であった。
名無しは特に話したりせずに窓の外を眺めているとフリットがやって来て肩を叩きながら笑顔で話しかけて来た。
「残念だったな。まあ、誰にでも苦手なことはあるよな。俺も魔法の実技が苦手でさ。剣術ならそれなりに自信はあるんだが・・・。」
実際にフリットは魔法の発動自体は問題なさそうであるが切り替える等の細かい技術に関しては苦手であり火を蒼く出来ずにただ大きくしただけであった。
「いやはや、平民出身さんと名無しは仲良しだな。流石は下層出身と言ったところか。」
「・・・なんだと?」
すると、近くにいた貴族出身の生徒が取り巻きを連れながらニヤニヤとしながら近付いてきた。その顔を見るに仲良くする気はないのは明白であった。
「だってそうだろ?実力も伴ってないのにこのクラスにいること自体おかしいんだよ。どれだけ金を積んだのかは分からないけどまあ、僕らにとっては難しくない額ではあるとは思うが・・・」
「テメェ!」
思わず殴り掛かってしまったフリットの拳を名無しは相手の顔面に瞬間に掴み取り防いだ。
殴られそうになった生徒は殴られるのを想像してなかったのか反応が遅れてしまい驚きながら目の前にある拳から目を離せなかった。
「止めておけ。そんな事位で怒ってたら拉致があかんぞ。」
「お、おう・・・」
「ふ、ふん!名無しは立場が分かってる様だな。流石は名無しだ。そこの男とは違って少しだけ利口だな。」
冷や汗が止まらなかったのか汗を拭きながら取り巻きと一緒にその場を去っていった。フリットは頭に上がっていた血が引いていき少し冷静になれた。
「すまない。」
「気にしないでくれ。あのまま事がなってたら余計に拗れそうになったから止めただけさ。次は剣技の実習だろ?行こうぜ。」
そう言って名無しは教室を出て行った。フリットはその場から動かずに名無しに握られた腕を見つめた。そこには握られた跡がハッキリと残っておりまだその感触が残っていた。それに、
「(アイツは瞬間まで座ってたはずだ。それなのに殴り付ける直前に間に合った?嘘だろ?おい。)」
去って行った生徒とは違う冷や汗を感じながらフリットは名無しを追いかける様教室を出て行った。
「ふ〜ん。」
「す、凄い。」
殆どの生徒が見えてなかった中であのやり取りを見えていた人物達は名無しに興味と驚きが入り混じった感情を抱きながら移動して行った。