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世界を脅かす毒になりました  作者: 悪戯小鬼
6/8

今日の肴は

美味しそうに焼けた肉の串焼きを頬張り片手に持った酒を喉を鳴らしてこれまた美味しそうに飲むと男は同じテーブルに着いている2人の男に対して今朝起きた珍事の顛末をようやく話した。


「朝起きたら装備一式どころか着てる服まで取られて逃げられたらしいぜ。

お持ち帰りしたのは泥棒猫だったのさ」


「それで教会に裸で来て騒いでたってのかよ。

なっさけねぇな」


男の話を面白そうに聞いていた別の男は礼の代わりに空になったコップに酒を継ぎ足した。


「いっひひ、一晩の対価にしちゃ高く付いたな。

確か迷宮産で造った剣と盾を祝福で強化したって自慢してたろ」


自慢のタネを羨ましく思ってたのかもう1人の男は暗い笑みを浮かべていた。

迷宮産とは迷宮内で採れる植物や鉱物などの総称である。

迷宮内でしか採れない物は数多く有り、総じて祝福と相性が良く高品質の道具作りには欠かせない代物である。

迷宮に入り怪物という脅威を無視すれば容易く手に入り外に持ち出せれば高い値で取引される。


迷宮産の鉱物で造られた剣と盾ならば、それだけで何かしらの特殊な力が備わっていただろう。

その上、祝福で強化されていた事を考えると外に出回れば国宝級の取り扱いをされてもおかしくない価値が付く。

もちろん迷宮都市の外に持ち出せる物は制限されている為、国家間の兵力を覆すような物を個人が持ち出せば迷宮の奥地でも追いかけてくる恐ろしい集団に追い回される事になる。


そんな討伐者の憧れの代物の所有していれば周囲から妬まれてもおかしくない話である。


1つだけ迷宮産の欠点を挙げるとすれば加工する者も相応の祝福を受けてなければ扱えない事だ。

もちろん加工せずとも特殊な力が宿らないだけで外の物と比べて高品質なのは変わらない。

迷宮内で使わないのであればそれで十分なのだ。

限られた名工にしか手を出せない代物である為、手に入れるには名工とのコネや莫大な資金が必要だ。


それを盗まれたとあっては当事者も悲惨である。


「おいおい、それより聞いたか?

また出たんだってよ」


「また出たのか?」


「今回はどんなだったんた?」


1人の男がニヤニヤと先程とは種類の違う笑みを浮かべながら話し出した。

何が出たのかはっきりと言わないが2人にはきちんと何を表しているか分かったようで面白そうに先を促す。


「聞いて驚くな?

今回は頭の後ろに大きな口があったらしい。

それ以外はこれまた滅多に見ない程の美人だって話だ」


「はぁ…俺も見つけてぇな。

女の怪物をよ」


女の怪物。

それはここ最近になって現れ始めた、ある特徴を持った怪物のことである。

討伐者の、特に男性の間で噂になっている存在。

それらは人の女性に近い異形で人の言葉を操り、総じて男を積極的に誘う。

個体によって姿は多種多様の一言に尽きる。


翼を持つ個体、尾の生えた個体、異様に太い腕を持つ個体。

美しい異形の姿は妖しくもあり男を惹きつけて止まない。


怪物は本来、人間を喰う為に外を目指す。

しかし、女の怪物は男を喰う為に動く。

もちろん、被害は日に日に増えている為、教会は討伐者に警告しているが、噂話が独り歩きしているのが現状である。


曰く、女の怪物は弱い。

曰く、女の怪物は男に逆らえない。

曰く、女の怪物と交わると祝福とは別の力を得る。

曰く………


男の討伐者に有利な噂がこの迷宮都市に広まっているのだ。

それが誰が流しているかも知らずに。


それから男達は自分達が見てみたい姿を興奮した様子で話し合っていた。

下卑な話題に移った為か男達は酒場を後にして娼館に向かった。

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