5話 「効率性向上のためにスキル振り」
ボスを倒すことに成功したので、一先ず青年のいるところへと戻った。
湖畔に戻ってきて、相変わらず座り込んだままの青年に話しかける。
すると、先程反応が違ってぱっと顔が明るくなった。
「本当に倒してくださったのですか!? ありがとうございます! これでやっと街に彼女と行けます!」
「な、何にも言ってないけど!?」
「そこ突っ込んじゃ駄目なとこだってば……」
青年が笑顔でお礼を述べてくる。
その後、彼がポケットから布袋を取り出した。
「大したお礼は出来ませんが、受け取ってください」
もらった布袋からは500ゴールドが出てきた。
「え、普通に結構くれるじゃん」
先程のよくわからんボスの約25倍。
こんな自分と同じくらいの年で、これから家庭を持つような男の人からそれなりにお金をもらうのって、ゲームの世界だといえ、ちょっと気が引ける。
「まぁ、オンラインだからフリーマーケットでぼちぼちの装備買うなら全然足りないけどね〜」
「だろうね」
最新装備なら、何百万ゴールドとかそのうち出てくることになるんだろうし。
アミがそのうちステータス理論値とか言い出さないと良いんだけれども。
「さっきの話からして、リアはまたアイテム厳選するの?」
「そうだね。とりまあのよくわからん変身やろーのレアドロップを確認して、飽きるまでは集めてから先に進むわぁ」
「そっかー。じゃあ私は街に戻ってまた先に進んで行こうかな。また先に進みたくなったら、付き合うからいつでも言ってね〜」
「うん」
そこで一旦、二人は解散。
再び一人になったリアは、ひとまず最初の村に戻ってきた。
「ボスから取れるアイテムをゲットするために動くってのはいいんだけど、アミがいない状態で安定して戦えるようにしないといけないなぁ」
先程の地味な戦闘では、後ろでずっとアミが補助と頃合いを見て回復を挟んでくれていたので、楽だった。
ただ、一人になると回復も自分でしないといけない。
いくら一人で倒せるレベルと言っても、回復アイテム無しでやるには現ステータスが弱すぎる。
「ひとまずスキル振りについて、ちょいと調べるかぁ……」
一旦ログアウトして、スキルについて調べた後、再ログインしてスキル振りを行ってから本格的に動くことにした。
「どれどれ、盗賊のスキル事情はっと……」
調べてみると、確かにアミのヒーラーや戦士特に壁役をやるタイプに関しては、装備スキルに振るのか職業独自のスキルに振るのか熱い議論がネット上で繰り返されている。
しかし、その一方で……。
「盗賊は何に振っても、問題ない……?」
書き方が非常に冷めきった感じであることは間違いなかった。
書いていることについては、アイテム集めが出来るが効率性がゴミ。
大した攻撃力無し。防御も火力も出せる戦士や火力に全振りでいいとのこと。
結論。何使っても、中途半端だから何でもおk。
そんな感じだった。
「ど、どんだけ雑魚職扱いなのよ……」
割とプレイしてみて楽しい職だと思ったのに、周りでの評価は最悪らしい。
何をするにおいても手間がかかるこのゲームに置いて、盗賊などに時間を割いている余裕無しということらしい。
「うーん……。どうしよっかな〜」
予想外な流れで、良いと思える方向性が見つけられなかった。
「まぁ、見る感じあのボスにも今のDEXで簡単に盗み成功したから、早く倒せるように武器スキルに振ろうかな〜」
早速ログインして、システムログを展開してスキル一覧を確認する。
武器なら、短剣・ムチ・ブーメランがある。
「短剣が一番盗賊って感じでしっくり来るから、これに今までのポイント全振りでいいや」
それくらいのノリで、短剣スキルに所持スキルポイントをすべて振った。
振り分けると、新しい技を覚えたとの旨をログが通知してくる。
「どんな技が使えるのかな〜」
覚えた技は2つ。そして、短剣装備時のステータス上昇効果を1つ。
ライトエレキスロー……電気属性の投げナイフ技。通常攻撃の1.2倍強のダメージ。弱点なら、1.5倍のダメージ+麻痺させることがある。
ハイパースティンガー……毒状態に落とす斬撃技。通常攻撃の1.1倍のダメージ。繰り返すごとに毒状態にさせる確率が一定ずつ落ちる。
短剣装備時のSTR+10
「よしよし。このレベルでこれだけの特技とSTRがあれば、そこそこ効率良くなるでしょ!……今思ったけど、そこそこな短剣買う分くらいのアイテムは取っておけばよかった」
何も考えずにアミに全て渡してしまったので、手持ちのアイテム袋はすっからかん。
「少し集めたら、自分用に少しだけ換金しようかな」
そんなことを考えながら、再び草原を通り過ぎて湖畔を通り、森へと向かう。
あの派手ーな変身をするボスなのだ。きっと良いアイテムを落とすに決まってる。
それにネットの反応から、盗賊は軽視されてまともにアイテムを集める人は少ないはず。
激アツ条件が揃っている。
「よーし! 待ってろよー、あのヘンテコ変形モンスター!」
そんな声を出しながら、森に入ったのだが……。
「あ! そう言えば、あの犬みたいなのも気になる! まずはあいつからアイテム調査しよっと!」
先程、ドロップアイテムが気になっていた犬のモンスターが近くを徘徊しているのを見て、一瞬でそちらに気を取られてしまった。
リアがこの森から離れるのは、いつになるのか。
クエストをクリアして通り抜けるだけのプレイヤーが大半のエリアで、ひたすら戦いを行っているリアを、多くのプレイヤーが不思議そうに見つめながら通って行く。