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3話 「亜実に誘われてようやく……」

 夜になると、亜実がバイトから戻ってきてログイン出来ると連絡が来たので、ひとまずゲームの世界で合流することになった。

 多くのプレイヤーが行き交う村の中央で、掲示板に貼り付けられているチーム勧誘記事などを眺めて時間を潰していると――。


「やっほーー!」


 後ろからいつもの聞き慣れた声が聞こえてきた。

 振り向くと、明らかにそれなりに進めていると分かるような装備をまとった姿の亜実がいた。

 名前は”アミ“と表示されており、ローブを纏った姿である。


【アミ】 【♀】 回復師Lv30


【武器】リーフスタッフ 【盾】ー

【頭】フラワーハット

【体上】フラワーローブ上

【体下】フラワーローブ下

【腕】フラワーグローブ

【足】フラワーブーツ

【アクセサリー1】減毒ミサンガ

【アクセサリー2】エメラルドピアス

【アクセサリー3】装備無し


【スキル】ヒールⅠ・Ⅱ、サンフラッシュ、クレール、癒やしの聖域、パライズ


【HP73/73】 【MP55/55】

【STR 20〈+2〉】

【VIT 35〈+23〉】

【AGI 18】

【DEX 15】

【INT 45】



「なるほど、名前はよく間違えられる名前にしたのね」

「そうそう! 何か名前に特にこだわりないし、それでいいかなって」


 亜実の読みは「つぐみ」なのだが、よくふりがなを振っていないと「あみ」と呼ばれることが多いらしく、そこから取ってきたらしい。


「蘭はリアって名前なんだね。何か決めたきっかけはあるの?」

「え? 一文字ずつ後ろにずらしたらいい感じになった」

「そういう名前の付け方したのね」

「そそ。亜実はヒーラー職にしたんだね」

「うん! どんなときにでも、出番があるからね〜! 蘭は……まだ初期装備のままなの?」

「うん。だってかれこれ10時間くらいはプレイしたけど、まだスライム以外の敵と戦ってないよ」

「嘘でしょ……? それで楽しいの……?」

「何か自分の獲得アイテムが増えていく達成感が心地よいと言いますか……」

「……蘭ってちょっと変なところあるよね」

「そうかなぁ? あ、さっきまで集めたアイテム全部あげるー。フリーマーケットでうまく換金しちゃって」

「本当にいいの? 結構大変だったんじゃないの?」

「慣れてきたから別に特に何も思わないねー。悪いと思うなら、今度ご飯奢ってー」


 そんな話をしながら、お互いのログを開きながらフレンド登録を行い、取引項目を選択する。


「全部選択してっと……!」


 これまで獲得したゼリー片とゼリーブロックを、全てアミに送信。

 リアの持っているアイテム袋から、大量のゼリー片と数個のゼリーブロックがアミのアイテム袋に流れ込む。


「ちょっちょ!!! 何この数!?」

「10時間の努力の結晶〜」

「凄すぎない!? しかも何か見たことない大きいゼリーあるし!」

「あー、何かそれレアドロップらしいよ? 累計50回アイテム盗みを成功させると盗むで獲得出来るものの確率に入ってくるとか何とかログに出てた」

「何それ……。そんな実績解除あるんだ。レアドロップってモンスター倒してて奇跡的にゲットできることがあるくらいのものだと思ってた」


 あとで調べて分かったことだが、通常ドロップもレアドロップも盗まなくても、モンスターを倒した後にゲットできることがたまにあるらしい。

 ただ落とす確率は高くないので、現在のアイテム需要を改善することは全くないというのが現状であるとのこと。


「まー今後も続ける予定だし、それにDEXも結構伸びてるからこれからもぼちぼちなペースで盗めると思うよ〜」

「そ、それはありがたいんだけど……。せっかくだし、私とちょっと進んでみない?」

「亜実がそう言ってくれるなら、ちょっと先に進んでみようかな」

「うんうん。ある程度先に進んで行かないと、次の大きな街とかに行けないからねぇ。ここでもある程度のことが出来るといえば、出来ちゃうんだけども」


 そんなアミの勧めもあって、リアは10時間経ってようやくゲームのストーリーを進めていくことにした。

 村を出て、すでに見慣れたスライムがのんびりしている草原を進んでいく。


「なんだろ、ここを通り過ぎて行くのにすごい違和感が……」

「いやいや、その感覚はおかしいってば……」


 そのまま草原を進んで行くと、湖の畔に辿り着いた。


 先程までいたスライムから、小さな兎や大きいカニのようなモンスターなどが徘徊するようになった。


「……何あれ。人参のモンスター?」


 草原で可愛らしくジャンプしているオレンジ色のモンスター。形といい、明らかに人参から連想されたであろうと考えられる。


「ああ、キャロッタージュね。野菜モチーフのモンスターもいるよ」


 スライムばかり見てきたリアにとって、一気に確認出来るモンスターの種類が増えてきた。


「む、何か湖畔に座り込んでいる人がいるけど、あれNPC?」

「そそ。あの人から話を聞くことでクエストが始まって、クリアすると次の街へ続くエリアに行けるようになるから」

「なるほど! じゃあ、話しかけて早速やってみようかな」


 湖畔に座り込んで項垂れているNPCの青年に声をかける。

 すると、青年が覇気のない顔で力なく話し始める。


「ああ、旅の方ですか。このような態度でお話することをどうかお許しください。私は今、恋人がいます。プロポーズもし、この度結婚することになったのですが……。結婚式を行う場所として、レグルスタードの街で行う予定なのですが、その道中を邪魔するものがいまして……」


 話によると、この青年は恋人がいて結婚を控えているが、その結婚式を行う場所に向かうまでの道中で邪魔がいて困っているらしい。


「この人の話に出てくるレグルスタードの街ってのが、次の大きな街の場所の名前なの?」

「そうそう。そこを最初、この人が言ってるみたいに通さないようにしてるやつがいるから、倒さないと進めないの〜」


 更に話は進んで行く。


「何とかしようと思ったのですが、非力な私の力ではとても敵いませんでした。どうすれば良いのでしょうか……?」


 そんな言葉の後に『メインクエスト:新世界への道』を受注しますか?という選択肢が出てきた。

『はい』を選択すると、青年がパッと顔を上げた。


「代わりに倒してくれるのですか!? 何と親切なお方……! やつは、この湖畔を西に抜けた森の道を塞いでいます。どうかよろしくお願い致します!」


 青年から話を聞き終わると、クエスト詳細をシステム画面からも確認出来るようになった。


「ちなみにボスでしょ? レベル今の時点で8だけど、普通に行けるの?」

「余裕でしょ~。だって基本的にレベル5あれば普通に倒せる相手だし」

「そうなんだ。亜実もついて来るから、盗むしてから倒そーっと」

「そこまでするんかい!」

「ちなみにそいつって、クエストクリア後も再戦出来るの?」

「うん。出来るよ〜」

「よしっ! 余裕が出てきたら、そのボスのやつでアイテム集めしたろ!」

「何でそうなるん……?」


 初期のボス相手に盗みを繰り返してドロップ品を荒稼ぎしようなどと、先にも進みたいし、無駄な時間のように感じて誰もやろうとは思わないだろう。

 ということは、それだけ見返りのあるアイテムを獲得出来るかもしれないし、ボスを討伐しまくることで何か隠し実績もあるかもしれない。

 そういうことを考え始めると、モチベーションがどんどん上がってきた。

 ……ただ、普通のプレイヤーの冒険スタンスとは、かなりズレた方法にではあるが。


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[一言] 友達との会話の中、湖畔とか使うJD強すぎる
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