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2話 「盗みがパワーアップ!」

 春休みに突入した朝。

 亜実から電話がかかってきた着信音で、目を覚ました。


「どう!? ゲームやってみた??」

「……うん。やってみたよ」

「どうよ!?」

「第一感想は、アイテムドロップが渋い」

「でしょー……。その割に結構使用用途が多いんだよねぇ。ゴールドも今後装備とか買いだしたら使うでしょ。それなのに全く貯まる様子すらないもん」


 眠い目をこすりながら話していると、スマホから朝から元気な亜実の声を聞こえてくる。

 ゲームのことになると、朝からテンションが高い。


「まぁ、普通にやってみたら楽しかったからちょっとこのまま続けてみる〜」

「お、きたぁ! やったぜ!」

「ちなみに、あの渋さだからRMTとか出来るの?」

「あー、いけるんじゃないかなぁ? ただ、あんな感じだから増えそうな感じだけど、そういうことをすると垢BANは容赦なくするって、すでに公言してるよ」

「買う方にはリスクがあるのかー……。売る側は捨て垢いくらでも作って売りそうだねぇ」

「そうだねぇ。そこら辺は従来のオンラインゲームと変わりないかも。でも、買う方もどうせすぐにBANされにくい取引のやり方とか出来てくるだろうしねー」

「まぁ、要はお金と時間のある人が強くなれるってことね」

「そうなんだよねぇ……。私もお金がもっとあればなぁ〜」

「止めなって。垢BANされてもいけないし、お金はもっと別のことに使いな〜。私が微力だけど、手伝うから」

「いやぁー、ありがたい!」

「ってことで、亜実の電話で目が覚めたから今からゲームするわぁ」

「いいなぁ〜。私、これからバイトなんだけどー!」

「頑張れ〜」


 そんな話をした後、再びVR機器を装着してゲームを起動させる。

 ログインすると、平日の午前中ということもあって、周りにいるプレイヤーの数はかなり少なめ。


「さて、昨日と同じことを続けますか〜」


 村から出て、そのままフィールドでスライム狩りを始めた。


※※※


 狩りを始めて4時間後。


「ふぅ……。これでゼリー片35個かぁ……」


 ふぅっと息を吐きながら、自分のアイテム袋を開ける。

 中にはゼリーの欠片がひしめいている。

 黙々とスライムから盗みを行って、ドロップ品を確保してから倒す。

 ずっと同じことの繰り返し。

 スライムはこのゲームで一番弱いモンスターで、経験値も低いが、これだけ倒すとレベルもそれなりに上がった。


 【リア】 【♀】 盗賊Lv6


【武器】木のナイフ 【盾】装備無し

【頭】布のターバン

【体上】布の服

【体下】布のパンツ

【腕】皮の手袋

【足】皮のブーツ

【アクセサリー1】装備無し

【アクセサリー2】装備無し

【アクセサリー3】装備無し


【スキル】盗む、初級落とし穴、煙幕


【HP29/29】 【MP6/6】

【STR 10〈+4〉】

【VIT 5〈+8〉】

【AGI 16】

【DEX 18】

【INT 3】



 DEXが上がってきて、盗みの成功率もかなり上がってきている。一度か二度の挑戦で、かなりの確率で成功するようになって効率性が上がっている。

 なお、これだけやってきて初級落とし穴と新たに覚えた煙幕は一度も使っていない。

 もれなく、レベルアップで得たスキルポイントにも手を付けずに放置中。


「お昼ご飯食べたら、また続きしよーっと」


 リアはこういった淡々とした作業をずっと行うことを、あまり苦にしない、むしろ熱中してしまう性格である。

 勉強なども気が進まないが、やらないといけない時は黙々とやるし、掃除やバイトも単純な作業の繰り返しなら、他の人に休憩を勧められるまでずっと止まらずにやっている。

 その性格が、このゲームをプレイする中でも絶賛発揮中である。

 昼食を取って軽く休憩した後、再びスライム狩りを継続。

 すでにフィールド奥に進んで別のモンスターと余裕で戦えるようになっているのだが、スライム狙いを変えることはない。

 DEXも向上しているが、他のモンスターに対象を変えると、DEXがより高い相手になって、盗みの効率が落ちることを考えると、とてもほかのモンスターに切り替える気にならない。

 そんな考えもあって、何時間もスライムと対峙し続ける異様な“少女”の姿を、周りのプレイヤーも不思議そうに見ていく。


「ん?」


 再開後、しばらくスライムを倒していると、お知らせログが出現した。


 称号:一人前の盗人……アイテムを50回盗むことに成功したため、【盗む】が強化されました。【盗む】による獲得出来るドロップ品にレアドロップが追加されました。【盗む】による50回目のドロップ品がレアドロップ確定。


「今まで集めてたゼリー片は、ノーマルドロップってことだったのね〜。ってレアドロップ確定!? 何が入ってるんだろ……?」


 そんなお知らせログを確認した後、今回盗んだアイテム袋の中を覗いた。


「おっ! 何だこれは!?」


 袋の中から取り出したのは、大きな正方形のゼリーが出てきた。

 取り出すと、初獲得のアイテムに関してはアイテム説明が表示される。


 ゼリーブロック……スライム族が隠し持つというゼリーの塊。ゼリーらしい弾力性とらしからぬ耐久性を持つ。ゼリー片を集めて固めれば出来そうなものだが、現在の技術では精製不可能であり、価値の高い一品。


「ほほ~。ってか、レアドロップもゼリーなのね……」


 何かもっと目新しいものであったり、きらびやかなものを期待したが、少しだけリアにするとがっかり。

 あまり大きいとは言えないリアの手では、両手で持たないといけないくらいの大きさはある。


「ま、まぁ見た目は残念だけど、50回アイテムを盗まないといけないってことを考えれば、なかなかのレア品のような気がする……!」


 あくまでも、これから出会うモンスターで通常ドロップでこのゼリーブロックを落とさないものがいないことが前提ではあるが。


「とりま、通常ドロップ・レアドロップ合わせて100回盗むことが出来たら、今日は終わるかぁ……」


 レアドロップを獲得出来る可能性と、実際に獲得出来た喜びと束の間、再びスライムを追い回すことを再開した。

 結局、100回という目安を立てたにも関わらず、昨日と今日合わせて約10時間弱ほど村の入口付近で、ひたすらスライムに盗みを働いた。


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