表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/80

1歩進んで、1歩下がって。そして、貴方と2歩進む。①

お読みくださりありがとうございます。

評価ポイント2000、ブクマ1000を超えたので、番外編を作成しました。

お楽しみいただけますと幸いです。



 レーヴェ様との婚約を公表して2週間後のこと。

 私は、王妃様にお呼ばれして宮殿に来ていた。1人で来てねって言われたから、こうして手土産のクッキーとバラの花束を持ってきたのだけど……玄関ってどちらだったかしら。


 あのね、宮殿って防犯対策で入り口がわかりにくくなってるのよ。「3日もあれば覚えます」ってフィン様に言われたのは覚えているわ。でも、入り口が……というか、どの建物なのかがどうしても思い出せない。

 正門でリリー様が待っててくださるお話をしていたのに、居なかったし。どうしましょう……。


 目の前には、建物がある。でも、宮殿じゃない。多分、隣の建物もその奥にある建物も違うと思う……自信はないけど。

 中で生活していた時は、ほとんど部屋の外に出ることはなかったのよ。出ても、レーヴェ様やメイドさんたちがついてきてくださったし。

 あー、「ここが宮殿です」「右に32歩で宮殿」とか看板ないかな。それか、宮殿に近づくとその場所が光ってくれるとか! ……防犯対策のカケラもないわね。


「お困りですか、レディ」

「ヒッ!?」


 レンガ調の建物の前でウロウロしていると、白いスーツを着た男性が声をかけてきた。

 宮殿探しに必死になっていた私は、その声に驚き奇声を発してしまう。でも、バラもクッキーも落とさなかったのは偉いと思う。異力が少々漏れてしまった気がするけど、ご愛嬌ってことで。


 その男性を見た私の脳内は、すぐにパニックに陥っていく。

 不審者だと思われたらどうしよう、暗殺者だと思われたら、強盗だと、殺人、恐喝、放火、異物混入だと!? 違うんです、別に怪しい者じゃなくて、違……って、まずは声を出さないと。


「あ、あの、お、お元気ですか?」

「……はい?」

「あ、ち、違うんです! 怪しい者では、あるんですけど、その、怪しくなくってえっと」

「……はい」


 言葉のチョイスって知ってる、私!?


 口を開けば開くほど、よくわからない単語を羅列して墓穴を掘りまくっているのはわかっている。でも、止められない。

 脳内が真っ白になってしまい、自分でも何を口走ってるのかわかっていない状態になってしまったわ。挨拶をするにしても、もう少し、いえ、だいぶ何か言いようがあると思うの。


 しかも、目の前の男性は、キョトンとした表情を通り越して、なんだか「こいつ人間か?」みたいな疑いの目でこっちを見てる気がする。

 確かに、そこに生えてる芝生が何かの手違いでしゃべれるようになったら、私よりも上手にコミュニケーションを取ってくれると思う。ごめんなさい、私はそれ以下だわ。


「もしかして、貴女がレーヴェの?」

「……はひ、ごめんなさい」

「そっか、そっか。はは、君がね」

「!?」


 罪悪感により青々と生い茂った芝生に視線を向けていると、突然男性が私の後ろから抱きしめてきた。いつの間にそっちに回ったの? というか、これは何!?


 今の今まで感じていた顔の熱が、全身に回っていく。このまま破裂してしまうのではないかと思うほど、私の体温は上昇している気がした。


「すごい異力だね。パニックになると出てくるのかな」

「あ、あの、こ、これ……」

「可愛い。レーヴェたちが夢中になる理由がわかったよ」

「ぐぴゃぁ!?」

「このくらいなら、レーヴェ怒らないよね?」

「あ、あぅ、ぅ……」


 しかも、あろうことかその男性は私の胸の下に手を添えてもにもにとゆっくり指先を動かしてくる。

 レーヴェ様がどうとかじゃなくて、そうやって触られたことがないからどうしたら良いのかわからない。……いえ、確か昔。


 昔、お父様にこうやって後ろから抱きつかれたことがあったな。あの時はぎゅーってされるのが嬉しくて仕方なかったけど、今思うと指の動きまでそっくり。

 それを思い出したからか、身体が恐怖に支配されていく。……いえ、お父様はそういう気持ちでしてたわけない。お父様は、お父様は……。


「異力が強くなってきたね。気持ち良くなるのと痛めつけられるの、どっちが君の身体は喜ぶのかな?」

「あ、あの、やめ……」

「レーヴェとまだこういうことしてないの?」

「いっ、嫌です。嫌……。やめて、くださひ」

「レーヴェは良いねぇ、こんなオモチャを手に入れて」

「え、おも……」


 その言葉で、今まで必死になって掴んでいたバラの花束を落としてしまう。パサッと音を立てて地面に転がったそれを、私はすぐに拾えなかった。


 王妃様にお渡しするために持ってきたのに……。

 これじゃあ、差し出せないわね。


 それに、私はレーヴェ様にオモチャと思われてるの?

 飽きたら捨てられるってこと? いえ、でもレーヴェ様はオモチャを大切にしてくださると思う。大丈夫、大丈夫。

 それだけじゃないわ。よくよく考えたら、人のことを「オモチャ」だなんて言わない。レーヴェ様は、絶対に言わない。


「レーヴェ様は、オモチャも大切にしてくださいます。それに、あの方は人をオモチャ扱いしないです」


 そうよ、彼は絶対にそんなことは言わないわ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ