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行動の意味



 お夕飯を食べ終わった後、私は急に高熱を出して倒れてしまった。なんの前触れもなく熱が上がるって、そんなことある?

 意識はあるけど、動けない。これから、レオンハルト様がいらしてくださるのに。


 ルワール様によると、さっきの異力が暴走したのと関係あるかもってことだった。ゆっくり休んでいれば、熱は下がるでしょうって言われたけど……。

 今までこんな頻繁に熱を出したことがないから、情けなくて仕方ない。ここに来て、誰かの役に立てたことなんてないし、せっかく役に立てると思ったお裁縫関連は中途半端になってるし。

 ベッドに入って天井を向いていると、色々考えてしまうわ。涙が止まらない。目が疲れるからって、部屋を暗くして外の景色が見られるようにしてくれたのに。月明かりさえ、涙で霞んで見えやしない。腕も重いし、もう何もかもが嫌になりそう。


「ステラ嬢」

「……レオンハルト様」


 そんな時、レオンハルト様がメイリン様と一緒にお部屋へ入ってきた。


 私は、重たい腕を精一杯動かして涙を拭い、毛布で顔を半分隠す。幸い、部屋は暗いから気づかれていないと思う。レオンハルト様は、コツコツと規律の良い足音を響かせてこちらにやってきた。それと同時に、入り口の扉が閉まる音も聞こえる。


「ステラ嬢、ご体調が悪いと聞きました。でも、一眼でもお会いできればと思って来てしまいました。お許しください」

「い、いえ……。こちらこそ、体調を崩してしまいまして申し訳ございません。お散歩の約束が果たせず……」

「……園庭は逃げませんから。それより、顔色は良さそうなので熱が下がれば大丈夫そうですね」

「はい、熱でめまいがひどいこと以外は、症状がないんです。ルワール様によると、異力の暴走とのことでした」

「なるほど。これは、早急にコントロール方法を教えた方が良さそうですね」

「でも、お仕事が……。そういえば、第三王子は大丈夫でしたか?」


 ……しまった。私ったら。

 ただでさえ周りが暗いから、話題を変えようと思ったのに失敗したかも。慣れないことはやるもんじゃないわ。


 レオンハルト様は、私の質問を聞いたと同時に、神殿で見たときのような怖い笑顔になった。


「ふふ、大丈夫です。生きています」

「い、生き……!? お仕事は進んだのでしょうか?」

「異術で脱走していたので、ちょっと灸を据えてきました。これから進むでしょうね」

「……灸」

「それより、ステラ嬢はゆっくりおやすみください。先程、預かり証の延長が承認されましたので、もう少しだけここにいられそうとの話も聞いていますし」

「あ、ありがとうございます。あの、レオンハルト様」

「なんでしょうか」


 立ちっぱなしもなんですので、椅子に座られては? と言おうと思った。いつも、ルワール様が診察してくださる時に使う椅子が、確かベッドの傍に……ないわ。

 あ、そうだ。さっき、足がガタガタしてるとかで修理出したんだった。今の今まで、すっかり忘れていたわ。


 それなら……。


「良かったら、ベッドにお座りください」

「え、でも、外に居た服なので」

「私は気にしません。もし、そういうマナーなどがありましたら、それに従いますが」

「……近くに行ってもよろしいですか?」

「はい。今日は、お返事を伝えないと眠れそうにないので」

「では、お言葉に甘えまして失礼します」


 私は、少しだけ身体をずらしてレオンハルト様が座れるだけのスペースを確保した。……ずらさなくても、十分あるのだけどね。


 すると、月の逆光によって表情は見えないけど、そこまで迷惑そうな感じではない声が聞こえてくる。

 良かった。お仕事で疲れてるのに、立たせっぱなしは嫌だもの。


「……ステラ嬢は、誰にでもこうやって座らせるのですか?」

「え?」

「私以外の男が来ても、ベッドに腰掛けて良いと言うのですか?」

「……? お仕事で疲れていれば、そうですね。先ほどまでそこに椅子があったのですが、脚が壊れたようで修理に出してるんです。こうやって私を心配して来てくださったのに、立たせっぱなしは失礼ですし」

「……少々、乱暴にしてもよろしいでしょうか」

「はい……? わっ!?」


 レオンハルト様は、小さな声でそう言うとすぐに、顔までかけていた毛布を取り去り私の身体を固定するかのように組み敷いてきた。両手首を掴まれ、思うように動けない。


 突然の行動に、全思考が止まる。


「鍛えている男に、か弱い女性は勝てません。こうして襲われたら、どうするのですか?」

「え、あ……」

「怖いでしょう? 何をされるのかわからず、動けず。私は今、上半身の力しか使っていません。全身を使えば、ステラ嬢は絶対に逃げられませんよ」

「逃げ……?」

「貴女は、他人を信用しすぎです。両親のことと言い、妹のことと言い。なぜ、男性を部屋へ入れたのに、メイドをドア前に待機させておかないのですか?」

「……そ、そういうマナーがあったのですね。不快にさせてしまいまして、申し訳ございま「そういうことじゃありません!」」


 怒られている意味がわからなかったのだけど、これって私のマナーが悪いからよね。

 ちょっとドキッとしてしまっただけで、別に怖いとかそういう感情はない。掴まれているところは痛くないし、体重をかけられてるわけでもないから苦しくもないし。

 だから、彼が言っていることが、うまく理解できないわ。「そういうことじゃない」ってどういう意味なの?


 お優しいレオンハルト様が声を荒げるほどだからきっと、相当初歩的なマナーなのでしょうね。

 嫌われたらどうしよう。せっかくお返事しようと思っていたのに、言わないほうが良いのかな? これ以上誰かに拒絶されたら、キャパオーバーになってしまうもの。



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