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予想外の寄り道



 あれから3度、私はレオンハルト様とお会いしている。その度に、彼の性格やお好きなものがわかるの。それが、とても嬉しい。

 お屋敷を内緒で出ているけど、今のところ見つかっていないし順調順調! ちゃんと、お仕事もしてるわ!


 今日は、彼が好きだと言った青色の髪ゴムで髪を結いでみた。三つ編みは、得意なの。以前はよく、ソフィーの髪をいじってあげたな。懐かしい。

 それを見たレオンハルト様は、「可愛いですね」とおっしゃり頬を染められた。本当に、青がお好きみたい。今着ている普段着に使える蒼いドレスも、先日彼に買っていただいたものだし。

 彼ったら、会う度に何かお洋服をプレゼントしてくださるの。多分、私が外行きの服をあまり持ってないから……。でも、前回「もういただいても受け取りません」とはっきり言えたわ。だから、今日は馴染みになってしまったハンナ様とアンナ様の洋服店には行っていない。


「こちらで少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」

「はい、わかりました」

「すみません、規則で入れないんです……。すぐ戻りますから! 本当に、すぐ!」

「ふふ、大丈夫ですよ。小さな子どもではないので、迷子になることはありません」

「でも、誘拐されでもしたら……やっぱり、ご一緒に!」

「いいえ、王宮内は安全です。私はここで読書をしていますので、ごゆっくり」

「……ごめんなさい」


 その代わり、今日はレオンハルト様のご用事で王宮へ来ていた。

 王都の城下町を歩いていると、騎士団の制服を着た方が敬礼して寄ってこられてね。どうやら、何か緊急事態でも起きたらしい。私は帰ると言ったのだけど、「すぐ終わりますから、帰らないで」と言われこうやって王宮の庭園まで来たの。

 ここで、彼は私を見たのよね。そこに2人一緒にいるのが、なんだかくすぐったい。


 建物内へ入るには、許可が必要なの。だから、用事のない私は入れない。

 先ほど購入した本を片手に、寂しそうな顔をするレオンハルト様に手を振った。「副団長、行きますよ!」と声をかけられているあたり、みんなに親しまれているのね。それが、自分のことのように嬉しい。


「よし、読み終えるかな」


 私は、レオンハルト様の背中を見つつ、購入した本をカバンから取り出した。

 購入したのは、隣国の最新情報が記載されている雑誌と、貿易に関する法律の本! 本当は、隣国の童話も購入したかったけど、お金がないから止めたの。レオンハルト様は「買うよ」と言ってくださったわ。でも、自分で買える範囲の買い物をしたいから断った。


 法律は覚えたいから、本当は机が欲しい。でも、それはお屋敷に帰ってからでもできるものね。だから、先に雑誌を手に取る。

 空気が美味しい。やっぱり、童話を買えば良かったかも。



***




 どのくらいの時間が経ったかしら?

 それは、隣国の料理を紹介するページをめくっている時に起こった。


「!? こっこんにちは、アレクサンドラ第3王子」

「立たなくて良いよー」

「で、でも……」

「ずっとここに居たのに、気づかないんだもん。すごい集中力だねー、面白くて隣座っちゃった」

「ご、ごめんなさい! 集中すると、周りが見えなくなるんです……すみません」

「へー、すごい。特技じゃん。謝ることないよ」

「……ありがとうございます」

「それより、なんの雑誌?」


 急に地面から湧き出たように、隣にアレクサンドラ第3王子が座っていたの。しかも、ニコニコした顔して私の顔を覗いている。

 立ち上がろうとしたのに、彼の手が私の肩を押し戻してきたし……。これじゃあ、立ち上がれない。


 彼は、以前お会いした時と同じ親しみやすい態度で私に話しかけてくれる。ちょっと緊張してしまうけど……これってどうすれば良いの?

 とりあえず、会話をしましょう。ページを見せながら。


「隣国の最新情報が載っている雑誌です」

「ふんふん、好きなの?」

「ええ、新しいものを取り入れるのが好きなんです。知っていれば、お仕事の役に立つので」

「仕事? なんの?」

「爵位維持のためのお仕事です。私、ソフィー……えっと、妹と違って異術持ちじゃないので、別のことでお屋敷を支えたくて」


 アレクサンドラ第3王子も、こういう雑誌読むのかしら? 王族って、雑誌読むイメージないな。ちゃんとした本とかのイメージが強い。


 私に質問をしながらも、彼の視線は雑誌に向いている。……ページをめくった方が良いのかな。それとも、このままに? ん、ん……どうしよう。


「どのくらいの仕事量してんの?」

「ここ1年は、ほとんど私です。あの、父と母は妹が病弱なのでそちらの看病で手一杯で……」

「えー、たしかベルナールって伯爵だよね? 1人でこなせるの?」

「はい、スケジュール立ててやってるので」

「ん、ん、ん〜。よく見ると、ファンデでクマ隠ししてるね。眠れてるの?」

「……大丈夫です」

「今って、レーヴェ待ちだよね。まだかかるから、ちょっと寝ても良いよ!」

「へっ!?」


 ページをめくるかどうか迷っていると、急にアレクサンドラ第3王子が私の身体を抱き寄せてきた。

 抱き寄せてきたというか、次の瞬間、私の身体は彼の膝に頭を乗せて無理矢理横になっていた。雑誌は……アレクサンドラ第3王子の手中に収められている。


 いやいや、こんなの不敬でしょ!

 え、王子の膝!? というか、ベンチの上! 薔薇園の隣! そして、on 大地!?!?!?


「ふはっ。やっぱ、君は表情がコロコロ変わって面白いなあ。ほらほら、寝ちゃって良いよ」

「だっ、ダメです! ダメ、で……」


 自分でも、パニックを起こしているのがわかる。そのくらい、脳内がすごい。もう、なんというか何も考えられないくらい。


 しかも、彼ったら私の頭を撫で上げながら背中をさすってくれるの。これはダメ。本当に寝ちゃう!


「これ、よく母様がしてくださったんだあ」

「お、王妃さ、ま……」

「うんー。気持ち良いでしょう?」

「で、も……ふけい、なの、で……」

「ふふ、可愛い。寝ちゃった。相当疲れてるんだろうなあ」


 私は、1分も経たない内に堕ちたみたい。

 ふわふわしてるなって思ったか思ってないかの境目で、何もわからなくなった。


 ベンチで初めて寝たけど、結構心地良いわ。でも、サラシがちょっとキツいかも。


「うーん。未成年が伯爵の仕事を請け負ってる、ねえ……」


 でも、良いや。おひさまに当たって、ポカポカして……たまには外で寝るのも良いわね。



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