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カフェで四人

 池のほとりに建つカフェに四人が集まっていた。


「なんだよ、秀映やな感じ! 写真部に入らないって言ったくせに、こんな可愛い子と写真を撮りにきてるなんて」


「いや、まあお互いにいい事情があったりして」


「へー、仲良しさんなんだね」


 幼馴染は、ちゅー、とストローに口を当てた。


「最近は、秀映君はどんな写真を撮っているのかな?」


 部長が写真の話題を振ってきた。


「最近はほとんど蝶の写真ですね」


「ということは……まさか、夕暮れのそらさん?」


「え、知ってるんですか?」


「知ってるよ。ほらだって僕たちの高校の周辺で蝶の写真ばかりあげてるアカウントって、これしかないもんな」


「なるほど……結構バレちゃうもんなんですね」


「そう、ネットの世界は結構狭いんだと思うよ。それにしてもいい写真が多いね」


 部長は少しわざとらしくそう言った。


 そして、僕のアカウントのページをスクロールしていき、あるところで止めて、僕に画面を見せてきた。


「これは、上手く撮れてるわけではないけど、見たことがない蝶だね」


「そうなんです。でも勢いよく飛んでいってしまって」


「なるほど」


 僕はうなずく部長を見て思った。


 この人と花記も、舞花の事情を話せば、協力してくれたりするのだろうか。


 いや、でもな、それはやめておこう。


 舞花が、自分から話さない限りは。


 花記はすごい首を突っ込みたがるタイプだ。


 部長とせっかくいい感じになっているのに、蝶のことに二人が惑わされるのはよくないと思う。


 舞花を見ると、なんだか少し微妙な顔をしていた。


 そういえば、チケット売り場とか、突然おばあちゃんに話しかけられた時とかもそうだったけど、あんまり人と話すのが好きではないのかも。


 僕と話すのは、慣れたって言ってくれたけど。


「あ、そういえば! 私たち、この後予約したレストランに向かわなきゃいけないから」


「あ、そうだった」


 花記と部長は立ち上がった。


「じゃあ、これで失礼。あ、お金は僕が払うから。蝶の写真、応援してるね」


 部長はそう言うと、少し急ぎ目でカフェのレジへと向かった。


 それに花記も続いて。


 僕と舞花は、四人用の席に、二人きりになった。

 

「先輩、この後はどうしますか?」


「そうだなあ、ぶらぶら散歩してから、帰るか」


「はいそうしましょう」


 舞花は大きくうなずいてから、自然に笑った。


お読みいただきありがとうございます。


次話で一章はおしまいです。

幼馴染の花記視点です。

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