僕を写真部に引きとめようとする幼馴染、その後出会った水色の蝶
「ねえ、秀映、だから私と部長はね……別に秀映のこと邪魔だなんて思ってないし、写真部に入って欲しいの!」
放課後。写真部の部室で。
写真部に入るのは、やっぱり遠慮しますと伝えに来た僕に、幼馴染の花記は言った。
「でも、付き合ってるんだよな?」
「それはそうだけどね、色々したいことが共通してて。それでね……」
「はいよ、たくさんしてどうぞ。まあ退学にはならないようにな」
「なにそれ。ていうか、一緒に写真部頑張ろうよほんとに」
明らかに幼稚なのは僕の方だった。
だけど、これからずっと、幼馴染と部長のカップル、そして自分という構成の部活で、やっていけるとは思えなかった。
やっぱり、今更だけど、僕は幼馴染に恋していたのかな。
もうこの段階になると自分でもよくわからない。
けど、やっぱり写真部に入るのはやめておきたいという気持ちは、はっきりとしている。
だから僕は宣言した。
「ごめん。やっぱり入らない。そう決めた」
その日の帰り道。
僕はカメラを下げて、下校していた。
カメラがかかってる首の付け根と肩が重い。
いつもよりもとても重く感じることはないけど普通におもたい。
そんなに僕は感情と感覚が連動していない説がある。
むしろ、なるほどたしかに巨乳の人はいつも肩がつらそうだな、その気持ちをわんちゃん一ミリくらい味わえるんじゃないか? とかいう、くだらない男子高校生上位十パーセントに入りそうな思考回路の有り様である。
そんな単純な僕だからか、胸が大きい幼馴染が脳内に登場してしまい、頑張って振り払った。
と、その振り払い終わった直後。
一匹の、水色の蝶が飛んでいるのを見つけた。
なんだあの輝き。
まじでみたことない。
僕は慌ててシャッターを切った。
飛んでいる途中なのであまり綺麗に写っていない。
でも、明らかに珍しい蝶なことはちゃんとわかる写真だった。
「……あげてみるか」
僕はそうつぶやいて、カメラからスマホに写真を転送した。
幼馴染につられて始めた写真。
少し前から、毎日のように撮っている。
その中でもお気に入りの写真をあげているのが、僕のSNSのアカウントだ。
『なんか珍しい蝶がいた。なんだろこれ。(写真添付)』
よし、これでおっけー。
僕は満足した。
それなりに拡散されるのではないか。
今思えば、部活に入らなくても写真は楽しめる。
お、早速コメントが来た。
僕はコメントを表示してみた。
『突然ごめんなさい。この写真を撮った場所に、私を連れて行ってくれませんか?』
え?
予想もしていなかったお願いが、僕のスマホに出ていた。