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重なった舞花

「すごいところに来てしまいましたね」


「うん、九割五分以上緑だな」


 僕と舞花は、バスから降り立ってあたりを見渡していた。


「あー、すごいです。のんのん〜としたびよりですね」


「見てるのか」


「見てますよ。私、前は朝から晩まで家で暇だったんですから。10期くらいまでやってほしいです」


「ずっと続いてほしいのには同意するわ」


 僕たちは歩道なのか草むらなのかよくわからないところを歩き始めた。


 遠くにすごいおしゃれなホテルだけ場違いみたいにある。


 もうバスでだいぶ手前を走っている時から見えてたけど、あれが僕たちが泊まるホテルらしい。


 舞花曰く、「お友達といきたいって言ったらお母さんがさっと予約してくれましたよ。私を排除するのには最善を尽くすタイプの人ですねお母さんは」だそうだ。


 まあお母さんとは仲良くしてほしいけどなあ……。


 僕が簡単に首を突っ込める話ではない。


 それにこんなにおしゃれなホテルを予約してくれる時点で愛されてるのではないかと思ったが、金銭感覚が違うのかな。わからん。


 とにかく僕たちは、ホテルの方角へと歩き始めた。


 まずはホテルには向かわず、そこを通り過ぎて自然文化園と向かう。


 もちろん周りの山々よりは人の手が入った場所だけど、こういうところの方が、遭難しない安心感があるし、何より道や遊歩道があって足元もしっかりしてて、写真が撮りやすい。


「自然文化園まで、どのくらいあるんですか?」


「歩いて……多分五十分」


「ご、ご、ご」


 可愛い舞花から火山の噴火の音がした。


 そういえばこの辺の火山は噴火レベル最低なことは確認してきた。


「いや、ちょっとひきこもり脱却して一ヶ月ちょっとの私には厳しいかもしれませんね」


「そうか、頑張れ。ゆっくりでも大丈夫だから」


「はい……ていうか先輩は逆になんでそんな大丈夫なんですか? 昨日も体育大会だったんですよね? 筋肉痛とかにならないんですか?」


「まあ、少しなってるけど大丈夫。これでも……昔は野球してたからな」


「そうなんですか。私はゲームの野球ならめちゃめちゃ上手いですよ。ルールよくわからずにやってるんですけどね」


「そうか、なんかうまそうだな」


 少し誇らしげになっている元ひきこもり美少女と、広大な自然を舞う蝶のような美少女。


 この場所だとその二つが、綺麗に重なるなあ。


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