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休憩の続き・マイペース


 おやつの時間を終えた羽菜と僕はエスカレーターのわきにある、ぎり二人で座れるソファに座って休憩の続き。


「こういう所にあるソファ、割と好きなんだよね」


 僕は、白地でそこそこなすわり心地のソファを、手で触る。


「まあわかる。けどちょっと寂しかった思い出もあるかな~」


「寂しい思い出か。あ、あれか、なんかお母さんとはぐれて一人で座ってた的な」


「あっ、それもあったかもしれない。けど、思い出してたのは、お姉ちゃんと二人で遊びに来たときとか」


「なんとなくわかった。菜々さんのファンが寄ってきて、菜々さんがいろいろサインとかしてあげたり話したりしている間、一人で待ってたりしたんだ」


「そう。ま、今は寂しくないし、忘れよ。ごめんね。ネガティブな話して」


「ううん。何でも話したいまま話してくれるのが一番いい」


「うん。ありがと」


 舞花はそう言ってエスカレーターを見上げた。


 ちょうど、誰も乗っていなくて、ただ、ぐるぐる回る階段だけがある。


「今日やっぱり思ったよ。一見真面目ルートなデートでも楽しい。やっぱり秀映、大好きだなあって。秀映はロリな女の子キャラが好きかもしれないけど」


「だから最後にそれくわえなくていいじゃんかよ。僕舞花大好きだから」


「うんうんありがと、でも、その青い袋にロリタオルまで入ってるけどね」


「ロリタオルはまとめすぎだよ。可愛くピースしててそれを定期的に眺められるすごいアイテムって扱いでよろしく」


「すごいアイテムね、そうですねはい、そんな気もするね」


 舞花のあおりが呆れに変わっていく。写真とアニメは共通の趣味だと思ってたんだけどなあ。いやまあその通りなんだけどね。


「このあととどこか行きたいところある?」


 僕は訊いた。


「うーん。なんかあるかなあ。あ、そういえば、この辺りにネットで見つけた写真スポットが」


「まじ? じゃあ行こう」


「うん。ちょっと待って。ネットで場所確認して思い出す」


 写真のこと気にせず出かけるって言ったって、舞花と僕は、写真を一緒に撮りに行くうちに、惹かれていったんだから。


 やっぱり、二人きりで写真を撮りに、行きたいよね。



 やってきた場所は、屋根付きの歩道橋の上。


 何がきれいって、下を通っている大きな道路が、すごくまっすぐに続いているのだ。


 だから街並みがとにかくきれいだし、遠近感が少しだけ頼りなくなりそうな光景である。


 観光ガイドか何かに書いてあるのかわからないけど、僕たち以外にも写真を撮っている人がいて、その半分くらいが海外から来たっぽい人たちだった。


「こういう系の写真はあんまり撮ったことなかったな」


「そうだね。難しい。多分望遠で撮るのがいいとは思うんだけど」


「ま、気楽に撮ろう。今日は活動でもないし」


「だね」


 下を車が、渋滞しない程度に、どんどんと通過していく。


 世の中いろんな車があるなあ。


 と眺めていたら、ちょうど、楽しそうなカップルが並んで車に乗っているのが窓から見えた。


 車の運転ができるようになったら、舞花とドライブとか楽しそうだなあ、と想像が始まる。


 ドライブ行くとしたらどこかなあ。うん、海沿いとか楽しそう。そしたら、その辺りで車を停めて浜辺におりて、楽しく泳いだり……。


 あ。そういや、今年、舞花の水着見てない……。


 そう思いつつカメラを構えている舞花を見ると、意識が胸に行ってしまっていた。


 舞花がカメラごとこちらに顔を向ける。


「あっ、今胸見てたねっ」


「あ、うんそうでしたごめんなさい」


「いやべつにいいよ。どうした? 水着見たいなあとか思ってた?」


「その通りすぎる」


「なんだ。なら次はプールか海行こうね」


「ああ。行きたいな」


「私も行きたいもん」


 そう言って笑う舞花の横を、一匹の蝶が。


 こんな人ばかりのところを舞う蝶は、場違いだけど。でも美しかったから。


「あ、蝶、写真……」


「え、どこ? あ、あっち飛んでる」


 僕と舞花は蝶を追いかけた。


 気持ちの向くままに走る、小さな追いかけっこ。


 だけど、進む方向が舞花と同じだから、なんだか、楽しくなってきて。


 だから舞花と僕は、大きな通りを見渡せる大きな歩道橋の上を、マイペースに駆けていた。


夏休み編までお読みいただきありがとうございます。

本当に色々書きたいことを書けてうれしくて、ですがよっぽどまた描きたいことが出てこない限り、本作は番外編含め、この話で完結としたいと思います。


本当にありがとうございました!

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