炎の剣3
ぱちっと目が覚める。体の下には柔らかい感触。ソファーの上で横になっているようだ。体の上には毛布がかけられている。あれ、俺、寝てたっけ?
ぼんやりしていた頭が徐々にはっきりしてきた。
見慣れた部屋の景色。机に向かって、椅子に座っている、マリと2人の女の子。なにやら楽しそうに話している。
ゆっくり体を起こした俺に、マリが気づいて近づいてくる。
「あ、ケイ。大丈夫だった?」
あ、そうだ。だんだん思い出してきた。風呂に入ろうとして、そしたらなぜか先客がいて。女の子が2人で。裸で。殴られて。
「っていうかお前ら、どこのどいつだ!!」
俺は大声をあげる。女の子達がビクッとしたのを見て、ちょっと申し訳ない気持ちにもなったが、よくよく考えたら、被害者はこっちである。
不法侵入に暴行、いくら向こうが女の子でこっちが男でも、立派に犯罪である。
「こら」
とマリに軽く注意された。
「人の話も聞かないで怒鳴るのはやめてよね」
え、なんで俺が怒られてるの?殴られてるんですけど。困惑していると女の子たちが椅子から立ち上がって、こっちに近づいてくる。
今は服をちゃんと着ている(当たり前だが)。1人は髪が長くて、なんか上品な感じの可愛い女の子。
もう1人も美人なことは美人だけど、髪型もショートカットというのもあって、少し鋭いオーラを纏わせている。
「ごめんなさい!勝手にお風呂を借りた上に怪我までさせてしまって」
ガバッ。勢いよく頭を下げる。ちなみにこいつは俺を殴ってない方。なぜこいつが謝る。
「おい、なんで殴ってないやつが謝るんだ」
俺がチクッと嫌味を込めていうと、
「ふん、あれぐらいで気絶するようなやつが悪いんだろ」
とトゲトゲした言い方をするのは殴った方。なんだこいつ。
「わたしはともかく、アイさま…アイの裸までしっかり見たくせに」
しっかりは見てない。というか見る余裕がなかった。
「こら、リン!このことは完全にわたしたちが悪いのよ?あなたも謝って。ね?」
おとなしそうな割にはアイと呼ばれた少女の方が立場?が上のようだ。
「…申し訳ありませんでした」
リンと呼ばれた方の女の子は、しぶしぶと言った感じで頭を下げる。
「…まあもういいけどさ」
結局こいつらなんだったんだよ、と思わなくもなかったけど腹も減ったしとりあえず何か食べたい。
「仲直りしたところで、2人の話聞きながらご飯食べよ。アイとリンも、一緒にね!」
いいところでマリが提案をしてくれる。こいつのこういうところが助かるんだよなあ。
俺がソファーから机にむかおうと、立ち上がる。
「きゃあああああ!!」
とアイの叫び声。顔を手で塞いでる。まるで見たくないものを見えなくするように。
なんで?と思った瞬間。あ、俺、風呂入る時に服脱いだまま着てないじゃん!さっきまで毛布で隠れててすっかり忘れてた!
ゲッと思って、リンの方を見ると、顔をそらしていた。
マリははあ、とため息をついている。
「すまんちょっと服を着てくる」
そそくさと風呂場に着替えを取りに行く。
さすがにリンに殴られることはなくてほっとした。