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マカネ  作者: いずみ
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炎の剣21

この章から新しい話にする予定でしたが、エピローグを忘れていました…。楽しみにしていただいた方には申し訳ございませんでした。

あれから数日後。俺とアル兄は、俺の家まで戻ってきた。


マリたちには先に連絡しておいた。なんの音沙汰もないと心配するだろうから。


とうとう家が見えてきた。お、玄関の横でマリが立ってる。


「おーい、ただいまー」


遠くから手を振って帰ってきたことをアピールする。マリが顔を上げた。こちらに気づいたようだ。


マリがこちらに向かって走ってくる。その勢いのまま、俺に飛びついてきた。


「ケイ!心配したんだから!」


ちょっと涙ぐんでる。


抱きつかれたりなんかしたら、いつもだったら照れ臭くて引き剥がすところだけど、今回ばかりは甘んじて受け入れよう。


マリの声を聞きつけたのか、おじさんも家の中から出てきた。


「…ただいま戻りました」


アル兄は少し緊張した面持ちだ。


「父さん、この間はーーー」


「…おかえり。いろいろ聞きたいこともあるが、とりあえず休んでからだな」


おじさんが、アル兄の言葉をわざと遮ったように聞こえた。


「いや、もうたくさん休んだから大丈夫。俺たちも話したいことあるし」


マリにしがみつかれたまま、おじさん達の会話に加わる。


「ケイもよくやったな。本当にありがとう」


おじさんが頭を下げる。


「やめてくれよ。ほら、もう家の中入ろうぜ。マリもいい加減離れてくれよ」


4人で家に入って、テーブルにつく。


それから城で起きたことを話した。俺が伝説の“救世のマカネ”の使い手になったこと、アル兄の炎のマカネが失われてしまったこと、謎の襲撃者である少女のこと。


ここまではおじさんもマリも、黙って聞いてくれていた。


だが、一番言いにくいことがまだ残っている。


「…あと、世界を旅してこようと思う」


「なんで!?ぜぇーったい、だめ!」


やっぱりというかなんというか、予想通りのマリの反応。


「これは俺が救世のマカネの持ち主だから、俺にしかできないことなんだ。そう王様にも頼まれたんだ」


納得してもらえないだろうな、と思いつつも一応理由を言う。


「それだけが理由じゃない。ケイは私の処分を軽くするために、王と交渉してくれたんだ。国外追放で済んだのはそのおかげだ」


アル兄がフォローをいれてくれるが、


「そうだとしても!!ケイがそれをする必要あるの?」


マリの勢いは止まらない。


「だから言ったろ、俺がマカネのーーー」


「それは聞いた!ケイが特別な力を持ってるからって以外に、やる理由があるか聞いてるの!」


「なにもケイがやらなくていいじゃん。今回だってかなり危ない目にあったのに。ケイよりふさわしい人なんて何人でもいるよ」


「アル兄のことはどうすんだよ」


「それはーーー」


あんまり否定されるもんだから、つい意地悪なことを聞いてしまった。


「私のことならいい。マカネでおかしくなってたとはいえ、自分のしたことだ。責任は取るつもりだ」


それに、とアル兄が付け加える。


「国外追放より罰が重くなることはないだろう。王の頼みごとをケイが受けようが受けまいが、私の処分は変わらないと思う」


「現に今だってまだこの国にいられる。そもそもこの処分自体が形式的なもので、私が公の場に出ることさえなければ、咎められることもないわけだ」


「なんだ、俺、王様に騙されてたのか?」


あのおっさん。許すまじ。


「優しい方なんだよ、王は」


アル兄がフッと笑う。


「だったら、なおさら行かなくていいじゃん!」


マリの勢いが戻った。


はあ、もうこれは仕方ない。本音で話すしかないか。


「行く理由ならある」


「え?」


「俺さ、アル兄に憧れてたんだよね。王様に頼まれたからとか、マカネの使い手になったからとか、そういうのはきっかけに過ぎないんだよ」


「アル兄みたいに、身も心も強い人になりたい。だからこの旅は俺のために行きたいんだよ。これじゃだめかな」


「…もう知らない!勝手にすれば!」


マリがバン!と机を叩いて立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。


あ〜あ。怒らせてしまったなあ。


「あの子もあの子でかなり心配していたんだ」


おじさんがつぶやく。


「まあ今は一人にしてやれ。気分が落ち着けばまた戻ってくるだろう」


落ち着いたところでマリが納得してくれるかはわからない。


でもこのまま旅に出たって仕方ないし、どうしたもんかなあ…。


「私もケイの旅に同行します。もし、ケイが行かない時は私だけで行きます」


アル兄が話を再開させた。


「なるほど、それで国外追放なのか。王に感謝しなければならないな」


おじさんが納得した顔をする。


「そのことについてはどうこう言うつもりもないが、せっかくの機会だ。自分の未熟な部分を直してこい」


「…はい」


「しかしまさか、こんなに早くお前に負ける日が来るとはな。まだ先になると思ってたよ。強くなったじゃないか」


これはおじさんがアル兄を褒めてる?珍しい。


「いえ、それもマカネの力でした」


「おかげで大怪我だったんだぞ、もう死んだかと思った」


ガハハ、と大笑いするおじさんだが…


「……」


俺たちはなんと言っていいかわからず、2人して黙り込む。


「冗談だ冗談」


わかりにくい…。普段あまりこういうこと言わないから余計反応しにくい。


微妙な空気になったところで、マリが部屋に戻ってきた。なんでか荷物を抱えている。


「わたしもついていく!」


…は?


「いやいや何言ってんの」


「ケイも勝手にするんだったら、わたしも勝手にするから」


なんて強引な。


「ダメだって。危ない目にあったらどうすんだよ」


「危ない目にあうような旅になるの?それならケイに行ってほしくないけどな、わたしは」


…今まで何度かケンカすることはあったけど、今回ばかりはかなり頑固だ。マリが引いてくれそうな気配がない。


こうなれば最終手段。


「おじさんからも何か言ってよ」


おじさんに助けを求める。


「別にいいんじゃないか?」


「…え?」


意外な返事が返ってきた。


「ほら!お父さんもいいって言ってるし」


いやいやいや。


「おじさん本気?」


「アルフレッドもいるし、大丈夫だろう。マリがいることで、お前たちもあまり無理をしようとは思わなくなるだろうしな」


うーむ…


「アル兄はどう思う?」


「そうだな、いくら私たちが守ったところで危険が全くないわけじゃないが…」


「が?」


「父さんの言う通り、マリの存在に助けられることもあるかも知れない」


そしてなにより、とアル兄が付け加える。


「こうなった時のマリはもう無理だ。こちらが譲るしかない」


「ま、そういうことだ」


おじさんも同意する。


「なんかすっきりしないけど…連れてってくれるならなんでもいいわ」


マリが釈然としないような顔をしている。


「…はあ。まあいっか」


俺も渋々納得する。


「やったー!バンザーイ!」


マリが両手をあげて喜んでいる。


こうなった以上、マリが危ない目にあわないよう、頑張らなきゃな。


ーーー


旅の準備が終わった俺たちは、家を出た。おじさんも同じタイミングで自分の家に帰るみたいだ。と言っても大半が焼けてしまったわけだから、別にこのまま俺の家で過ごしてもらってもかまわなかったんだが、まあいろいろやらなきゃいけないこともあるらしい。


移動には俺の車を使うつもりでいる。王都に突入する時に放置していたままのやつを帰ってくる時に回収してきたんだ。これに乗って野菜売りのふりをすれば、怪しまれずに世界を旅できるんじゃなかろうか。


俺たちの旅の目的は、世界中のマカネ使いと会って、平和のためには、マカネはない方がいいのか、それとも今までのようにマカネがあることで平和が保たれてる方がいいのか、それを判断して欲しいってことだったけど。


気になることもある。夢の中に出てきた鎧のことだ。鎧はマカネを集めろと言っていたが、これはなんのことだろう?あとでアル兄に聞いてみよう。マカネにはまだまだわからない部分が多いからな。


俺、アル兄、マリの3人がトラックに乗り込む(運転はもちろん俺)。そしていざ出発、というところで、意外な人物が現れた。


「わたしも行くわ」


リンだ。


「アイのそばにいなくていいのか?」


「お嬢様に暇をもらったのよ。ケイの旅の助けになればと思ってね」


リンはある程度自分の身は自分で守れるだろうし、マリも女1人じゃ心細いだろう。


「助かるよ。後ろの荷台の方に乗ってくれ」


「…わたしの時とはえらい違いね」


助手席に座っているマリから鋭い視線が飛んでくる。怖い。


「やっぱりついてきて正解だったわ」


マリがつぶやく。なんじゃそりゃ。


改めて旅のメンツがそろったところで車のエンジンをかけ出発する。


この旅がどういう結果をもたらすのか、まだ俺たちには知るよしもないが、自分にできることを精一杯やっていけば、きっとーーー。

次の章から新しいお話になります。お楽しみに!

次回「風の弓」

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