炎の剣2
「ふぅ、今日はこの辺で引き上げるか。マリ、そっち片づけて。帰るぞ〜」
「はーい。ね、ケイ、売り上げはどうだった??」
マリが目をキラキラさせながら聞いてくる。
そう言われて、箱の中のお金を数えてみる。…うーん、特別多くもなく、少なくもなく。ぼちぼちといったところかな。
「いつもと同じくらいかな」
俺が返すと、
「え〜、せっかく可愛い看板娘がいるのに、いつもと同じなの〜?愛想良くして損した」
と、ふて腐れた顔のマリ。自分で可愛いとか言うか普通。まあ実際、俺だけが野菜を売りに来てる時と比べると、マリを連れてきた時の男の客の数はかなり多い。というかマリがいないと話にならないレベルなので、できる限りは連れてくるのだが。
「ほら、無駄口叩いてないで片付けろよ、置いて帰るぞ」
可愛いとかいうセリフはスルーする。
「ひど〜い、待ってよケイ〜」
2人で、荷物を車の荷台につんでいく。
「なあ、今日はどっか寄って行くところなかったか?」
「ん〜特にないね。買い物とかは昨日済ませたし。…よし、と。こっちはこれで終わり!しゅ〜りょ〜」
「じゃあ真っ直ぐうちに帰るか!」
「うん!」
2人で車に乗り込む。俺が運転手で隣にマリ。
「荷台の方が陰で涼しいぞ、俺のことは気にしないで後ろに行けよ」
「わかってるけど、ここでいいの〜。ここはここで風があるから」
と俺に微笑むマリ。う、たしかに可愛いは可愛いんだよなコイツ。ドキッとさせられたのが悔しかったので仕返しする。
「ふーん、あっそ。じゃあ運転たのむわ」
そっけなく返して荷台の方へ行こうとする。と、マリに首をガシッと掴まれる。ぐえ。
「はあー!?か弱い女の子に運転させて、自分は陰で涼もうっての!?信じらんない!」
「冗談だよ冗談、悪かったから、手を離してくれよ」
マリが掴んでいた首から手を離す。なにがか弱い女の子だよ。
「そんなことばっか言ってるとモテませんよ〜」
マリがあっかんべー。子供っぽいなーコイツ。まあそんなのと張り合ってる俺も俺だけど。
2人でわいわい話しながら王都の門まで行く。
王都にはもちろん許可された人しか入れない。俺たちは野菜売りとして週に何回か王都を訪れるのだ。はじめの方こそちゃんと許可証を見せたりしていたものの、今では顔パス。すんなり通してくれる。
俺たちが野菜売りっていうのもあるだろうけどな。武器になりそうなものも持ってないし。
門の兵に軽く頭を下げながら、門の外に出る。
昼過ぎまでには家に帰り着くだろう。
ーーー
「はあ〜、やっと着いた!もう慣れたけど、やっぱり王都までは時間がかかるねえ」
車から降り、ぐ〜っと、マリが伸びをする。
「まあな。野菜を歩いて売ってたときよりはだいぶ楽になったけどな」
「あ〜そんなこともあったね〜」
と苦い顔をするマリ。俺もあの頃を思い出してなんとも言えない気持ちになる。
おっと、また明日の準備をしなきゃいけないんだ。
こんなところでダラダラとしていられない。
「とりあえず、お昼ご飯たべない?わたしが作るから!なに食べたい?」
「なんでもいいよ」
「それがいちばん困るんだよね〜」
「ほんとになんでもいいんだよ、マリの作る料理ならなんでも美味いからな」
「え、なに、急に。わたしをドキッとさせても、ごちそうなんかでないけど」
「なんだでないのかよ、言って損した」
「ひどい!?」
バカなことを言い合いながら、家の中に入る。
日の出から働いて汗と汚れがすごい。ご飯の前にシャワーでも浴びるか。
「シャワー浴びてくる」
「はーい」
マリにひとこと伝えてから浴室に向かう。脱衣所で服を脱ぎ、いざ風呂に入るかと、ドアに手をかけたそのとき。
ガチャっと、扉が勝手に開く。
え?と思考が一時停止。思わず視線が扉の奥へと向かう。なんで?と考える間もなく俺の目にとびこんできたのは。
女の子の裸。それも2人の。
「きゃああああああ!!!」
「えええええええ!?!?」
体の前面を隠すようにしゃがみ込む女の子が1人。
とりあえず大事なところを隠す男が1人。これは俺か。
そしてもう1人の女の子は自分の体を隠そうともせず、この状況の中、いちばん罪が重いであろう俺に(後から考えれば、俺は自分の家でシャワーを浴びようとしただけである。なにも悪くないのだが、この時はこう考えた)なんと、殴りかかってきた。
(あ、ヤバいーーー)
意外に鋭い一撃に、俺の体が無意識に反応したその時。
「あんたはなにやってんのよッ!」
大声と共に後ろからマリの鋭いチョップが俺の頭に炸裂する。と同時に女の子の拳が顔面にきれいに入る。
それからのことはあまり覚えていない。