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マカネ  作者: いずみ
14/22

炎の剣14

ーーー場面は少し前のケイの家までさかのぼる。


「助けにいくって、アイとお兄ちゃんがどこにいるか知ってるの?」


マリがつっこむ。


「あ」


カッコつけたはいいものの、そもそもの部分を忘れていた。


「それなら心配ない」


と、おじさん。


「おそらく王城にいるだろうな」


「なんで?」


「王様は城にいるのが普通だろう?」


そういうことか。

王様のいるところでクーデターが起きたわけだしな。


「それに王城は戦略的に有利な建物でもある。わざわざ他のところに移動するとも考えにくい」


「わたしもそう思うわ」


リンがおじさんの話にうなずく。


「よし、それなら城に向かうか!」


いくなら早い方がいいだろう。


「わたしもいく!」


「だめだ。なにがあるかわからんし、マリはおじさんといっしょにここで休んでてくれ」


「…心配なの」


「大丈夫だよ、危ないことはしないから」


「ケイもだけど、お兄ちゃんも」


…まあそうだよな。


「マリ、今の私達では行っても足手まといになるだけだ。ケイ達にまかせよう」


おじさんがなだめる。


「…でも」


「それにケイだって腕もあがっただろう?前みたいに一方的にやられることもなかろう」


「…わかった。でもケイ、危ないことはしないでね。…お願いよ」


「わかってる」


「アルフレッドも以前とは全く違うぞ。油断だけはするなよ。…頼んだぞ」


「はい!」


おじさんの言葉を重く受け止める。


「…じゃあ、そろそろいきましょうか。城の案内はわたしに任せて」


「じゃ行ってくる!」


「…ほんとに気をつけてね」


マリが今にも泣きだしそうな顔で見ている。

少しかわいそうな気もして、一緒に連れて行ってやろうかと思ったが、やめた。


俺は自分以外を守れるほど強くない。特に今回は、自分の身すらも危ういかも。その辺のチンピラならどうってことないけどな。


まあいいや。


リンと2人で家を出る。


「車に乗れよ。行けるとこまではこれで行こう」


「わかった。…ところでさ」


車に乗り込みながら話す。


「作戦とか勝算とかあるの?」


「いいや、ない」


リンがずっこける。


「頼んでおいてなんだけど、よくそれであれだけカッコつけたわね…」


うっ。痛いところをついてくる。


「話し合いでなんとかならないかな?マカネを渡す代わりにアイと俺たちの安全を保証してもらうとか…」


「あいつの目的はこのマカネよ。手に入った瞬間わたしたちは用済みだわ」


「見逃してくれるかもしれないじゃん」


「今は見逃してもらえるかもしれない。でも、この国でクーデターが起きたことが隣国に知れ渡れば…」


深刻な顔のリン。


「れば?」


「あちこちで戦争が始まるでしょうね。マカネの奪い合いが」


まじかよ。


「今まで保っていたバランスが崩れるわ。それだけマカネが強大な力を持ってるのよ」


どいつもこいつもマカネマカネって…。あの石ころがそんな大切か?


俺にはわからない。他人を傷つけてまで手に入れたいものなのかよ。


それに戦争だって?馬鹿げてる。たかが石ころのためにどれだけの人が苦しむと思ってんだ。


…でも今回のことの発端はアル兄なんだよな。いったいなんで?もう何度そう思ったかわからない。


もしかしたら、俺が昔憧れていたあの人は、どこにもいないのかもしれない。


なんかモヤモヤしてきた。


「…着くまでには何か考えとくよ」


とりあえずそう返しておいた。


「…」


お互い無言の時間が続いた。


ーーー


「…この辺りでいいわ。あとは歩いていきましょ」


王都から少し離れたところで車を止めておりる。この辺りが限界か。見張りとかもいるだろうしな。


「あとはどうするんだ?」


「城から逃げ出した時に通った裏道があるの」


「そうなのか。じゃあ行こう」


今は深夜。暗いからこそこそ移動してれば見つかりにくい。


問題は城についてからだが、そこはリンが詳しいだろう。


ーーー


「…変ね」


リンがつぶやく。


「…見張りとかこんなにいないもんなのか?」


もう目の前に城が見えるっていうのに、ここまですんなりこれてしまった。いや、見つからないにこしたことはないけど。


「わたしももっと、兵士がうろうろしてるものだと思ったわ」


なにか不気味だけど、まあこっちの方が都合がいい。


あと少しで城、というところで、近くの物陰に隠れる。


「…もう城まで近いけど、何か思いついた?」


「うーん…」


考えていたことを話す。


「なあ、リン。アル兄がいそうな場所って見当つくか?」


「そうね、城の…あ、今ちょうど明かりが漏れている、あの大きな窓わかる?」


「ああ」


「あそこが王の間なんだけど、おそらくそこにいると思うわ」


「アイもか?」


「ええ。あと王様もね。片っ端から調べてもいいけど、あそこに誰かいるのはわかってるわけだし、行くならあそこからがいいわ」


「そっか。リン、お前は普通にあそこまで行ってくれ。アル兄達がいたなら、マカネとアイ達を交換しろ。そうだな、マカネをどっかに放り投げて、アル兄が気を取られている間にでも逃げ出してくれ」


「ケイは?」


「俺は窓から侵入する。ロープかなんかで上からぶら下がればなんとか入れるだろ」


「そのあとは?」


「…その場で決めるさ。アル兄には聞きたいこともあるしな」


「…無理だけはしないでね」


「おう」


リンと別れて俺は自分の目的地へとむかう。


ちょうど王の間の窓の上の方にいい感じのところがあった。あそこからロープでぶら下がり、勢いをつけて窓を破って登場すれば、アル兄の意表をつけるだろう。俺に気を取られている間に、リン達は逃げ出せるし、俺も隙を見て逃げるつもりだ。


でもそうする前にアル兄に聞きたいことが山ほどある。


話して全部解決すればいいけどな。もしそうならなかったら、いよいよ覚悟を決めなければ。


と考えを巡らせている間に、目的地までついた。


あとはロープを柱に硬く結んで…と。


よしこれでいいだろう。突入の用意はできた。あとは合図を待つのみだ。


リンとはさっき突入するタイミングの合図として、マカネをこの窓にぶつけるように打ち合わせしてある。


少し緊張してきた。心臓がドクンドクンと早くなる。


すると、コツン!音が聞こえてきた。今だ!


俺はロープを持って窓から勢いよく飛び出した。ロープがピンとまっすぐになる。振り子のようになった俺の体は空中でほんの少し止まったあと、今度は少しずつスピードを増して、空中に円を描くようなラインで窓へと勢いよく向かっていく。


あれ?思ったより勢いがつきすぎてる!やばい!思わず目をつむる。


ガシャーーーーン!!!


足が窓ガラスを突き破った。その後に別の変な感触があったが、床じゃない。なんだろう。


何かと足がぶつかったおかげで、勢いは相殺され、俺は安全に王の間に着地することができた。


部屋の中を見渡すと、リンとアイと見知らぬ男。あれが王様か。みんな無事みたいだ。それにしてもみんな口をあんぐり開けてこっちを見てる。派手に壊しすぎたかな?


それにしても肝心のアル兄が見当たらない。


ん?床に倒れている男がもう1人いた。あ、あれがアル兄か。


え、なんで倒れてるの?…まさか窓を割った後の感触って…


「…よう、久しぶり。アル兄」


とりあえずかっこつけといた。


…ていうか穏便に済ます予定だったのに、期せずして先制攻撃をかましてしまったようだ。どうしよう。


アル兄がゆっくりと起き上がる。


「…まさか奇襲してくるとは。ずいぶんとやることが変わったな、ケイ」

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